214:巻物中のモンスター-2
「バフの方は大丈夫だな」
「回復アイテムよし、ステータスも問題なし」
「攻撃停止の合図は分かってるな。迂闊に攻めるなよ」
面会区に残った面々はパーティを組んでレイドを編成すると、効果時間が長めのバフを重ねていく。
レイドのメイン盾は……やはりゴトスか。
まあ、私を除いたらこの場で一番実力があるのがゴトスなので、当然とも言えるが。
「私の方も問題は無いわね」
私も戦闘の準備は進めてある。
『スィルローゼ・プラト・ラウド・スィル=ベノム=ソンカペト・アハト』によって、面会区の壁際に茨の領域を敷き詰め、『スィルローゼ・サンダ・ソン・コントロ・フュンフ』で自身の一部として定義。
『スィルローゼ・プラト・ミ・スメル=サニティ・アハト』によって精神系状態異常を回復する領域もセット。
勿論、『スィルローゼ・ウド・ミ・ブスタ・ツェーン』によるスィルローゼ様の魔法の強化、『スィルローゼ・プラト・クラフト・ソンタワ・アハト』と『サクルメンテ・ウォタ・サクル・エクステ・フュンフ』による領域の強化なども忘れない。
これで相手がゴトスたちに任せられないようなものであっても、大丈夫だろう。
「では、スクロールを開けます」
「「「おうっ!」」」
準備は整った。
そう判断した私は、モンスター召喚のスクロールを封を切りながら投擲、ゴトスたちから少し離れ場所で発動。
スクロールから陽属性を示す紫色の光が大量に放出されつつ、モンスターが現れる。
「グ……」
そうして現れたモンスターは?
全身に銀色の毛を生やした獅子であり、顔や胴体には陽属性を保有していることを示す紫色の文様が淡い光を放ちつつ縦横無尽に走っている。
爪と牙は陰属性を示す蘇芳色。
立派な鬣は何千と言う毛が集まって出来たものではなく、毛が固まって16枚の鏡のような銀色の板になっている。
「げっ……」
「っつ!?」
そんな相手の姿を認識した段階で、この相手と戦ったことがある私とゴトスはきっと同じ認識を持ったことだろう。
想像以上に面倒くさい相手が……マミラセンシシが来てしまった、と。
「『バンデス……』」
「『ルナリド……』」
「『シビメタ……』」
「ル……」
そして、マミラセンシシと言うモンスターの厄介さを知らない他の面々は直ぐに先制攻撃を仕掛けるための詠唱を始めてしまう。
マミラセンシシも開戦の合図だと言わんばかりに全身に刻まれた文様に力を集め始める。
このままではまずい。
「スタアアアァァァプ!」
「「「!?」」」
私が発した攻撃停止の合図にゴトス以外のこちら側全員が驚いて、詠唱を中断する。
「うおおおぉぉぉ!」
同時にゴトスがヘイト上昇魔法ではなく、鬨の声を上げ、盾を構えたままマミラセンシシに向かって突撃していく。
「アアアァァァァ!!」
「「「っつ!?」」」
直後、マミラセンシシの全身から閃光が放たれ、私を含めた全員の視界が白一色に塗りつぶされ、白が止んだ後は黒から戻らなくなる。
暗闇の状態異常だ。
「ぐっ……全員に通達!攻撃魔法の使用を禁止!!それとヘイト低下魔法を保有している人間は自分または周囲にかけなさい!!回復魔法はその後!」
私は視界が戻らないまま、この場に居る全員に指示を放つ。
すると直ぐに詠唱が始まる。
そんな中でサンライ様のパッシブによって暗闇の状態異常を防いでいたであろうゴトスとマミラセンシシが戦っている音も響き始める。
「『スィルローゼ・プラト・ワン・キュア・アハト』」
私も自分に状態異常回復魔法を使って、暗闇の状態異常を回復。
戦況を再確認する。
「ちっ、やっぱり面倒くさいなコイツ!」
「グルアッ!ガウアッ!!」
やはりゴトスとマミラセンシシは戦っていた。
だが、状況と相手に合わせてだろう、ゴトスはだいぶ守りに寄った戦い方をしていて、攻撃を防ぐことに専念している。
「全員、ゴトスのHPとバフ、それから自分たちの低ヘイト状態を維持する事に専念!ただし、相手には一切の魔法を使わないように!!」
「「「りょ、了解!!」」」
そして、他の面々に指示を出す余裕も無さそうである。
なので私がゴトスの代わりに指示を出して、戦線を維持できるようにする。
「エオナ様!相手はどんなモンスターですか!?」
と、ここでシュピーが情報を求めてくる。
戦線は……問題なし。
今ならば説明できるだろう。
「相手の名前はマミラセンシシ、ポエナ山地の浅層と中層の間ぐらいに出てくる獅子型モンスターで、推奨レベル70のPT向けよ」
「だったら……」
「ただし魔法反射能力持ち!一部例外を除いて直接ダメージやデバフを与える魔法は撃っても適当な方向に反射されて飛んでいくだけ!バフ系の魔法を重ねて、地道に殴るしかないわ!」
「「「っつ!?」」」
「その地道に殴るのだって、与ダメージの一部が反射されて返ってくるせいでかなり面倒くさいけどな!!って、いってぇ!?」
「ミ……『ミラビリス・スチル・ワン・ヒル・フュンフ』!」
私とゴトスの説明に動揺が走る。
当然だ。
マミラセンシシの魔法反射能力と言えば、魔法を使って戦う事が当たり前である『フィーデイ』においては、反則と言ってもいい能力。
ポエナ山地で不意に遭遇して、先手必勝と言わんばかりに放った高威力魔法が反射されてPTごと壊滅するのが初見のお約束となっているモンスターである。
そして私とゴトスも予想していなかった。
魔法を反射するマミラセンシシを封印して、召喚のスクロールに収めておく事が出来るとは思っていなかったからだ。
「とにかく!ゴトスのHPとバフの維持に専念!!地道に削り倒すわよ!」
「「「りょ、了解!!」」」
なんにせよ、相手がマミラセンシシである以上、地道に殴って叩き潰すしかない。
魔法を反射されないように気を付けつつ、私たちは戦いを進めるしかなかった。
10/18誤字訂正




