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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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211/284

211:代行者たち-4

「教えを……」

「捻じ曲げてるー?」

 私の言葉に何人かが首を傾げる。

 ただ、ルナ、ノワルニャン、タイホーさんの三人にはまるで動じた様子が見えない辺り、ルナたちは私の言いたい事を既に察しているようだ。

 だがそれでもきちんと明言はした方がいいだろう。


「出来るだけ分かり易いように、順序だてて説明しましょうか。タイホーさん」

「なんだ?エオナ」

 私はまずタイホーさんに質問をする。


「クレセート住民がタイホーさんに向ける視線や挙動って、他の街や村に比べて厳しめじゃないかしら?」

「厳しいか。拙僧が知る限りでは店で品物を売買するのに渋られたり、不親切な真似をされたりした覚えはないな。直接的な暴行の類なども当然ない。だが……」

「だが?」

「空気は良くないな。ほんの僅かに、気にしなければ分からない程度に、不親切な真似はされないが、親切な振る舞いもされない。そう言う微妙な空気の悪さがある」

 タイホーさんの言葉にイナバノカグヤさんたちが微妙な顔をしている。

 思い返してみれば、と言う心当たりがあるのだろう。


「えと、それって問題……ではありますけど、そこまで気にする問題なんですか?エオナ様」

「かなりの問題よ」

「そうだな。拙僧が知る限りと言う話だが、大規模な排斥の最初はこの手のちょっとした空気の悪さや不親切から始まる事が多々ある。ほんの少しの不和から大規模な不和へ。お互いがお互いに攻撃し合う対立へ。決して埋める事が出来ない溝へと広まっていくのだ。そして最後には血を血で争うような全員が敗者の争いになっていくのだ」

 タイホーさんはまるで現実に知っているかのように話をする。

 元の世界の現実で何かがあったのかもしれないが……まあ、私が気にする事ではないか。


「机上の空論よ。そんな簡単に大規模な争い……いえ、あからさまな不和なんて巻き起こせるわけないわ」

「そうね。そう簡単ではない。けれど不可能ではないわ。現に私やタイホーさんは複数のルナリド神官から、不穏な視線を向けられている。私はその手の視線は幾ら向けられようがどうでもいいけれど、全員が全員、耐えられるわけでもない。何時何処で次の段階に移ってもおかしくは無いわ」

「……」

 それよりも今は敵が仕掛けている策について話すべきだろう。


「でもー、そんな事をしてー何になるのー?」

「そうね。相手の策が全て上手くいったのであれば……クレセートはルナリド神官だけの街となり、クレセート以外はルナリド神官お断りの街になるでしょうね。つまりクレセートは一神教の街になるわ。そして、クレセート対その他全てとなって……ルナリド様は七大神の座から追われることになるでしょう」

「なるほど。だから、ルナリド信仰への攻撃、と言う訳ですか」

 相手の策が上手く回った時、クレセートに居るルナリド神官たちは自分たちの信仰がより純粋で確かな物になったと勘違いする事だろう。

 だが、そうなった時にルナリド信仰が生き残る道はない。

 『フィーデイ』と言う世界は、『Full Faith ONLine』と言うVRMMORPGを基にして作られた世界はそんなに甘い世界ではないからだ。


「ルナリド側が勝つ可能性は無いの?」

「無い。ルナリド様だけで回せるような世界ではないもの。ルナリド様の側が一人勝ちしたら、その時点で世界終了よ」

 ちなみにルナリド信仰が勝つ可能性はない。

 単純な人数以前の問題として、ルナリド様だけになったら『フィーデイ』は破滅するようになっている。

 何故ならば。


「そもそもとして『Full Faith ONLine』と言うゲームの世界は多人数参加型のゲームとしてデザインされていて、複数の神が居ることも前提としているの。つまり、一神教と言うのが成立しない世界なのよ」

「あー……」

「ついでに言えばルナリド様は陰と黄泉の神。陰は陽と対を為し、互いに存在するからこそ成立する要素であり、黄泉と言うのも常世があるからこその概念。他のものを司る神が居なければならないのが、ルナリド様の在り方なのよ」

 ルナリド様は単独で世界を運営できるような神ではないと、自分に制限をかけているからだ。

 そして、この制限は恐らく他の七大神にもかけられているだろう、万が一の抜け駆けを防止するために。

 何となくだが、そんな感じのニュアンスを漂わせる話し方をしている。


「となると、相手の唆し方は……」

「まあ、他の神によってルナリド信仰が脅かされているとか、穢されているとか、そんな感じのものでしょうね。上手く言いくるめているのは確かよ」

 何にせよ、誰かがルナリド神官たちを唆し、他の神に仕える神官への嫌がらせを積極的に行うように進めているのは確かだ。

 でなければ、ルナリド信仰としては割と基本的な部分であるはずの教えが蔑ろにされるはずがない。


「ところでエオナ?解釈違いなどによる不幸な事故が元と言う可能性は?」

「無いとは言わないけど、その場合でも正しいのは確実にこっちよ」

「理由は?」

 なお、解釈違いについては心配しなくてもいい。


「だって、ルナリド様が現在進行形で教示してくださっているし」

「「「……は?」」」

 ルナリド様当人が『エオナガルド』に居る私に教えて下さっているからだ。

10/19誤字訂正

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