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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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208/284

208:代行者たち-1

「全員、生きているかしら?」

 爆煙が立ち込めて視界が奪われた中、私は一応周りへと声をかける。

 うん、一応だ。

 ヤルダバオトの代行者としての能力によって、全員の生存は確認しているからだ。

 どちらかと言えば怪我の有無を確認する意味合いのが大きい。


「げほっ、ごほっ、問題は無い」

「生きているのニャー」

「ビックリしたわね……」

 さて、何が起きたのか。

 私たちは式典の場から控室に向けて固まって歩いていた。

 すると、周囲の通路や部屋から四人のルナリド信者が何かを叫びながら出て来て、懐に仕込んだ魔法を利用した爆弾を作用させようとした。


「な、何とか生きてます……」

「ギリギリだけど間に合ったわ」

 当然私は何かを仕掛けてくるのは察していたので、飛び出してきたタイミングで拘束すると共に、伸ばした茨でもって爆弾を弾き、即座に封印した。

 が、そのタイミングで私たちの足元に仕掛けられた魔法式の地雷が作動。

 ルナリド神殿全体を揺るがすような爆発が起きたのだった。


「た、助かりました。カミア・ルナ巡礼枢機卿」

「恩に着ます……サロメ神官」

「あ、ありがとうございます。ノワルニャン殿……」

 とりあえず全員無事、と。

 メイグイとシュピーは自分の身を守るので精一杯だったようだが、ルナ、サロメ、ノワルニャンに至っては私たちの案内役や、偶々近くに居ただけの神官たちを助ける動きも出来たようだ。

 この辺りは……慣れとレベル差か。


「煙を払うのに風を起こすわよ。『バンデス・ヒト・ラウド・ブロウ・フュンフ』」

 サロメの魔法によって煙が晴れて、視界が開ける。

 そうして見えてきたルナリド神殿の通路の状況は……悲惨な物だ。

 床のタイルは弾け飛び、壁紙と天井は焼け焦げ、偶々圧力がかかった場所に至っては吹き飛んでいる。

 基礎部分に魔法による強化が施してあるから、建物そのものへのダメージはだいぶ抑えられていそうだが、それでも大惨事と言う他ない。


「エオナ、最初の四人は?」

「この爆発の中に置いておいて、生きていると思う?」

「それもそうか。何か知っているかもしれなかったのだがな」

 ルナの質問に私は自分の胸の辺りを叩きながら返事をする。

 それだけでルナは四人が『エオナガルド』に居ると察してくれたのだろう。

 何食わぬ顔で首を横に振る。


「探知完了。多数の人がこっちに向かってきているけど、次の攻撃はなさそうなのニャ」

「分かったわ」

 ノワルニャンによる探知によって次の攻撃がない保証もされた、と。

 メイグイとシュピーも自分に出来る範囲で探知をやってくれているようだし、これで一先ずの心配はいらないとみてよさそうだ。


「さて、問題は誰の攻撃だが……」

「仮に黒幕が単体なら、私がある程度ヤルダバオトのメダルで弱ったところに連続爆破、それから事態収拾のために周りが動き出したタイミングでモンスターの召喚、と言うところでしょうね。総合的に見て、かなりの殺意よ」

「無理があるな。複数人の意図が重なったと見た方が良さそうだ」

「どちらにしても殺意が高いのは変わらないけどね」

 さて、一先ずの心配する必要が無くなったところで、ルナの言うとおりに誰が仕掛けてきたのかを知るべきなのだが……私には皆目見当がつかない。

 狙われる理由については式典の最中に感じた視線から察しがつくが、そこまでだ。

 そして、その視線の内容からして私は相手が手練れかつ大本については単独だと判断しているのだが……やはりそこまでだ。

 それ以上の情報は現状ない。


「カミア・ルナ巡礼枢機卿たちが居るぞ!」

「爆心地はこっちだ!だが警戒を怠るな!」

「怪我人の有無をまずは確認しろ!!」

 と、ここで警備の神官たちがやってきて、己の職務を始める。

 しかし、一部の神官からは式典の時にも感じた蔑みの視線や、生き残ったことを残念がるような気配が伝わってくる。

 そして、その手の視線がルナには向けられていない事も確認。

 うん、やはり私の考えに間違えはなさそうだ。


「心配しなくてもいい。私たちは全員無事だ」

 とりあえず彼らへの対応はルナに任せるとしよう。

 それよりも、もう一つ気になる集団が……私に対して大きな叛意を抱いている人物が先頭に立っている四人組がこちらに近づいてきている。

 私はそちらへの対処をした方が良さそうだ。


「何がありましたか」

 やがて現れた四人組の一人は白い髪に赤い目をした女性。

 衣服は動きやすさを重視したもので、頭の上には兎の耳が生えている。

 パレードの時にテラスに居るのを私が見かけた女性だ。


「簡単に言ってしまえば自爆テロです」

「自爆テロ!?」

「物騒だねー」

 二人目はパジャマ姿の少女であり、とても眠そうにしている。


「お怪我の方はありませんか?」

「ご安心を。これくらいならば対処は問題ありません」

 三人目は赤い右目に黒い左目を持った人物。

 瞳孔が爬虫類のように縦長で、身に着けているのが所謂ゴスロリ服だと言うのも気にはなるが……まあ、それ以上に気になる点については、今は聞くべきではないだろう。

 それよりもだ。


「無事で何よりだ。ゲーム時代からの友人と死体で会うなど、拙僧は御免被るからな」

「それは私も同感ね」

 今は集団の四人目として現れた人物。

 綺麗に剃られた頭と、全体的に丸っぽい体が特徴的な男性。


「久しぶりね。タイホーさん」

「はっはっは、久しぶりだな。エオナ、ルナ、サロメにノワルニャン」

 私も信仰している円と維持の神サクルメンテ様の代行者にして、『Full Faith ONLine』にて支援系最高峰のプレイヤーの一人として数えられた人物、そして私の師の一人にして友人でもあるタイホーさんに注意を向けるべきだろう。

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