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28話

ボブゴブリンのゴルダンは音を聞き、薙ぎ倒されていく木々を観察しながら思考する。

どうやら化け物もアホじゃねぇらしい。俺らの作戦を理解して右側に回り込もうとしてやがる。この異端な鳴き声と木々を薙ぎ倒す音聞いてりゃ並大抵の奴ならビビっちまうだろうが、統合軍との戦争を経験した俺らにとっちゃ大したプレッシャーにもなりゃしねぇよ。


「左翼反転!右翼に続け!一番隊!二番隊!俺に続け!化け物の顔を拝むのと、一番槍は俺らがもらう!」


「「「はっ!」」」


俺が率いるボブゴブリン隊と一番、二番隊を合わせた15名で化け物の鳴き声が響く右側に移動し、残りの隊は化け物の尻をブッ刺す為に左回りに移動を開始させた。

報告じゃ騎馬並みの速さだって聞いてたが、これじゃ、馬車とかわんねぇな。逃げ切るのは難しいが、速攻される速さでもねぇな。間に合う。

木々を避けながら化け物の鳴き声がする方向へと走り続けると木々の隙間から、化け物を目視出来た。

ありゃ化け物じゃねぇな。足は見たことねぇが芋虫みたいに地を這うタイプの機動要塞じゃねぇかよ。サイズは小せぇし、地を這うタイプならいくらでも対策のしようはあるってもんだ。


「おい、槍よこせ!」


並走している兵士の1人から槍を受け取り、全力で投槍をすると、カンッという金属に弾かれる特徴の音を立て、槍は物の見事に弾かれた。

どうやらあのデカ物は鋼鉄で覆われてるって訳か。そりゃ質量も硬さもハンパねぇな。あんなのにぶつかりゃ俺ですらプチッと潰れちまうな。だがよぉ、その長所は簡単に短所にひっくり返せるんだぜ?知ってたか?芋虫野郎の錬金術士さんよぉ!


「伝令!全隊を1箇所に集結!そん中で土魔法と水魔法使える奴を集めて罠を設置させろ!俺らであの芋虫を誘い込むぞ!」


「はっ!」


足の速いゴブリンと、追随していた魔法が使えるボブゴブリン3名が俺から離れ作戦を実行に移す為に移動を開始する。何度も共に死地を潜り抜けてきた猛者だ。この少ない言葉で理解して準備を進めてくれることだろう。


「さて、テメーは俺らの顔に泥塗ってくれやがったんだ!次はテメーが泥啜る番だぜ!」


残りの11名で機動要塞、名称芋虫の前に躍り出る。近付くと無属性の魔法弾を放ち、鋼鉄の塊が馬車並みの速さで迫ってくる、そのプレッシャーは口で言う程軽くはなかった。だが、その相手をしている者が、初めて本気で向き合って戦う相手が歴戦の勇士ゴルダンだったのが志藤誠の不運とも言えたであろう。

弱小種族と言われるゴブリン族が極地とは言え、最高司令官まで上り詰めたのは伊達や酔狂ではないのだから。


「ガハハハっ!!楽しく踊ろうぜ!芋虫!!」




***************




『前方の敵、反転。逃走を開始した模様です。』


俺は自分の読み通り、ゴブリンがプレッシャーに負けて逃げ出したことに内心喜んだ。しかし矢継ぎ早にナビから右側面より15体のゴブリンが接近している報告を受け、意識を切り替えるが、進行方向を予想するに殿を務める為に自宅艦の前に移動して来ているようだ。そして投槍で攻撃を仕掛けてきたが自宅艦の鋼鉄の装甲と質量の前に簡単に弾かれていく。


「その程度の攻撃!無駄無駄!」


俺は敵の攻撃など意に変えさせず、アクセルを踏み込みプレッシャーを増加させる。ゴブリンが接近しようと近付いてくるが、迎撃用の固定式魔道自動小銃の弾丸により阻まれる。しかし当たらないという事はそれなりに訓練をしているんだろう。


『敵影、1箇所に集い始めました。』


「よし!!」


俺は予定通りに事が進んでいる為に思わず喜びの声を上げる。これでチェックメイトだ。結局は先の戦と何も変わらない。俺の自宅艦の必殺体当たりアタックで全てが決するんだよ。

モニター越しに映る他とは明らかに違いを見せるデカイゴブリンが何かを騒いでいるが、外敵の音声を聞き取るシステムは存在しない。だから例え助命を請われようとも俺にはわからない。だからこそ俺は俺の目的の為に躊躇なく敵を葬る事ができる。

小さい醜悪なゴブリンだろうと、デカく進化系のゴブリンだろうが関係ない。圧し潰して終わりだ。

攻撃を仕掛けながら逃げていたゴブリン達が一斉に背を見せ走り始めた。どうやら抵抗が無駄だと判断して逃げに徹し始めたようだ。


『敵、集結をした模様です。右旋回12度です。…ん?どうやら交戦していた敵がとっている進路上と一致しているみたいですが…何か引っ掛かりますね。』


「ここまできたら小細工なんて無駄だ!このまま突貫する!!」


ナビが感じた疑問を気にも止めず俺はアクセルとレバーを押し込む。補助ブーストのエネルギー充填も完了している。あとは敵の塊に突貫すれば終わる。その次は追跡して来た3人を迎え撃つ。

モニター越しにゴブリン達が集結しているのが確認できた。約130体ともなればその姿は壮観だ。だがそんなこと自宅艦には関係ない。


「これでチェックメイトだ!」


ブーストを発動させたことにより爆発音が響きわたり、俺の体は加速Gにより、座席に押し付けられそうになるがそれを払いのけるように操縦桿を強く握る。カスタマイズにより最高速度も加速速度も大幅にアップしている。景色は一瞬で流れ、触れる木を弾き飛ばす。そして目の前にゴブリン達が迫った、その瞬間。


モニターは暗転し、経験した事のない衝撃が自宅艦を襲う。


「ガハッ!ご、ごふっ…な、何が起きた?」


『……落とし穴にハマったようです。どうやらこちらは罠に嵌められたみたいですね。』


単純だからこそ効果的な罠だった。いや、俺が少しでも配慮すれば避けられたはずだった。仕切り直しするしかない状況まで追い込まれた。俺は痛む身体に鞭打って自宅艦を後退させるべく操縦する。


キュルキュルルルル


キュルキュルルルル


キャタピラが滑り自宅艦が全く落とし穴から抜け出す事が出来ない。


「何が起きてる!?キャタピラの故障か!?」


『違います。キャタピラは正常に動いています。これは…泥です。落とし穴の下は泥沼になっているために、キャタピラが滑って動けなくなっています。』


「くそっ!二重の罠かよ!!」


俺は悪態をついた後に状況を把握すべく、モニターを切り替えて周囲を映し出した。そして俺はその光景に思考が止まる。

気付いた時、俺たちの自宅はゴブリン達に囲まれていた。俺は慌てて受話器をその手に取る。


しかし無情にもゴブリン達は自宅目掛けて一斉に突撃を開始した。


「迎撃急げ!!!」

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