27話
休息日三日目の昼頃、コテツとコハクに訓練をつけるアラクネとスライムを見学しているとナビから連絡が入る。
『貴方、円盤からレーダーに未確認物体が引っかかったと連絡が入りました。』
俺は了承の返事をして、すぐに司令室へと向かい、状況の詳細をナビに尋ねた。ナビの報告によれば現在地から南南東、それはエルフの里方面からこちらに向かって来ていることが判明した。現在確認出来る数は3。そのうち1人はとても強い魔力を有しているらしい。
「エルフ関係かな?」
『いえそれは違いますね。前回取ったエルフのデータから解析しますと他2人の魔力値が低過ぎます。それにこのペースは探りつつ近付いて来ている速度だと思われます。』
「なるほど。なら何か近いデータは何かある?ゴブリンと人くらいしかデータ無いと思うけど。」
『恐らくは…人だと思われますね。』
そうなると可能性としては奴隷商の回し者か、盗賊の生き残りがいて復讐って感じになるんだろうか。それにしてもよくこの場所がわかったな。ゴブリンの時と違って木は薙ぎ倒して無いはずなんだけど。ん?待てよ?
俺は操作盤を操作し、モニターにキャタピラ付近を映し、拡大していく。
「チッ。キャタピラ跡が草を押し潰して残ってたか。」
そうなるとハウゲンの魔法で作った道は木々は避けたが、地面に生える草はそのままだった気がする。だからキャタピラ跡を追って、エルフの里近くからこちらへと追跡してきているんだろう。ここにいるのは不味いと判断した俺は取り急ぎ自宅艦を発進させた。そして兵器達には警戒態勢で待機を命じる。
作戦としては開けた場所、ゴブリン里まで進み中央付近にて反転し自宅を停止。追跡してきている3人を目視次第フルブーストで必殺体当たりを行う予定だ。カスタマイズにより自宅艦の速度は上がり、追跡者3人を引き離しゴブリンの里へ到着し、反転し追跡者を待ち構える。
操作盤を操縦桿に換装し、可動式自動小銃を庭前面に展開した。
「ナビ、レーダーに捕捉できたか?」
『いえ、まだですね』
レーダーの性能を上げとけば良かったと若干後悔した。まだまだ警戒心が足りないな。精進せねば。
『…!?新たなる未確認物体捕捉。数、5、10、15…まだ増えてます。』
「え!?3人じゃなかったのかよ!?」
『違います。先程のとは違います。後方、北より接近。その数80…いえ、まだまだ増えてます。』
「完全に新手かよ!?データあるか!?」
『照合しました。大多数はゴブリンと同程度かと思います。でもそれ以上の魔力値が複数確認されています。更に前方、南より先程の3人が接近してきています。』
「マジかよ!?」
どうする?前方から来る奴らはアラクネとスライムで対処してもらうか?それで自宅艦は後方のゴブリンの群れに突っ込むか?いや、それだと万が一ゴブリンの群れが自宅に取り付いて庭に侵入してきたら対処しきれないんじゃないか?そうなるとアラクネとスライムはこのまま待機してもらったほうが良いのか?どうする?何をすれば最適なんだ?
『自宅のレーダーでも敵影捕捉。』
距離300メートルを切ったか。こうなったら数が少ない追跡者3人は放置だ。数が多いゴブリンを先に潰す。
「自宅艦、180度回頭させる!ゴブリンを先に圧し潰すぞ!数の確認は取れてるか!?」
『はい。総数は130。内、強者と思われるのは30です。』
「一番密集地点を割り出してくれ!そこに全速力で体当たりをかまして、その後回頭、再度体当たりを仕掛ける!」
俺は操縦桿を操作し、自宅を回頭させ、前進を開始する。
『東に5度旋回。そのまま直進で予測60が圧し潰せます。』
「了解!補助ブーストエネルギー充填開始!」
『補助ブーストエネルギー充填開始します!完了まで後45秒。』
俺はこの時焦っていた。そして知らないということに恐怖していた。だからこそ俺は決断の誤りに気付くことなく、進行してしまった。もっと冷静に判断できていれば結果はまた違ったのかもしれない。
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ゴルダンはゴブリンの軍勢を率いて森を進行していた。あと、数百メートルで里へ到着する。その心は複雑で、壊滅した里を見たくない気持ちと、里の現状が気になる気持ち、そしてそんなことを仕出かした化け物に対する警戒心が入り混じっていたからだ。
ゴゴゴゴ
キュルキュル
バキバキバキ
前方、里の方角から聞いた事もない異音と木を薙ぎ倒す音が聞こえてくる。すると里が壊滅した日の生き残りの戦士が声を上げた。「あの夜聞こえた化け物の鳴き声だ」と。
そしてゴルダンは報告を思い出し、兵達を1箇所にまとめないように散開の指示を出した。
ゴブリン兵達は隊長格のボブゴブリンの指示に従い、開口一番の被害を最小限に止める為に里を囲うように左右に広がっていく。
「化け物退治と洒落込もうじゃねぇかよ!」
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『敵、左右に広がるように散開を始めました。』
「マジか!?」
俺はナビからもたらされた報告に驚いた。こちらの意思に気付いたかのように敵ゴブリン達が散開し始めたからだ。何故?疑問が頭を占めたが、その原因に気付いた。
周囲には音が響いている。そう、俺は焦りから防音結界を発動することなく進行を開始していた。それは動力音やキャタピラ、そして木々を薙ぎ倒す音、全てが周囲に自宅艦の存在をアピールしていたのだ。
「くそ!早まった!…だったらプレッシャーガンガンかけて追い込んでやるよ!ナビ、時計回りでプレッシャーをかけて中央に集まるように仕掛ける!左の散開した先頭から潰す!」
『かしこまりました。左旋回45度。』
自宅艦は巨大な質量に、強化カスタマイズで増した速度は40キロに迫る。そんな異端の存在をゴブリン如きが捌ききれるとは思えない。これでいつも通り壊滅させて終わりだ。




