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転生しても貴族医師としてここを守る  作者: マーたん


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9/19

帰れない国グラ=ネヴァと封印の魔王

『転生しても貴族医師としてここを守る』


第九話時点 登場人物



黒鯛くろだい 拓真たくま


異世界名:タクト・フォン・レーヴェン


* 本作の主人公

* 前世は日本の外科医

* 十歳

* レーヴェン侯爵家次男

* レーヴェン診療所院長

* フィリアの夫

* リリアの師匠

* 王家直属医師見習い

* 「全ての命を守る」が信念

* リリアを本当の家族として育てている



フィリア・フォン・レーヴェン


元フェルディア王国第一王女


* 十五歳

* タクトの妻

* 明るく優しい性格

* リリアを妹のように愛している

* 診療所の手伝いをしている

* 「白き王女」と呼ばれている

* タクトと共に各国を巡る



リリア・ノエル


* 十二歳

* タクトの一番弟子

* 教会孤児院出身

* 心優しい少女

* 両親に売られた過去を持つ

* タクトとフィリアを本当の家族として慕う

* 医師を目指して勉強中

* 両親からの最後の手紙を燃やし、過去と決別する

* 「最悪な親」と一言だけ告げる



セレスティア・ルミナ


聖光教会聖女候補


* 白銀の髪と黄金の瞳を持つ少女

* 人々を救うことを願う心優しい女性

* タクトたちと行動を共にする

* 教会改革を望んでいる



アルベルト・フォン・レーヴェン


レーヴェン侯爵家当主


* タクトの父

* 王国最高峰の医師

* 「聖医」の異名を持つ

* 息子の成長を温かく見守る



エリシア・フォン・レーヴェン


レーヴェン侯爵夫人


* タクトの母

* 穏やかで優しい女性

* フィリアとリリアを家族として受け入れている



レオンハルト・フェルディア


フェルディア王国国王


* フィリアの父

* 民を愛する名君

* タクトを信頼している

* 教会との均衡を保つ王



セレーネ・フェルディア


フェルディア王妃


* フィリアの母

* 慈愛に満ちた女性

* タクトとフィリアを祝福している



バルディウス


聖光教会大司教


* 六十歳

* 聖光教会最高幹部

* タクトとの対立を経て自らを見つめ直している

* 教会改革を考え始めている



アリアンシア・エル=アルヴヘイム


エルフ女王


* 六大王の一人

* 数百年を生きるエルフ族の支配者

* 教会を超える影響力を持つ

* タクトの才能に注目している



魔王ヴァルゼノス


封印の魔王


* 終焉の地グラ=ネヴァの支配者

* 数千年を生きる古き魔王

* 冷静沈着な性格

* 人間を嫌っているが理不尽を嫌う

* リリアの境遇を知り興味を抱く

* 「親として何を与えた」とリリアの両親を叱責する

* 世界の秘密を知る存在



リリアの実父


* 酒と煙草に溺れた男

* 娘を金のために孤児院へ売る

* 村の崩壊の原因を作る

* グラ=ネヴァへ追放される

* 最後まで娘を「使えない娘」と呼んだ



リリアの実母


* 娘を見捨てた女性

* 浮気と放蕩生活を繰り返した

* 実父と共にグラ=ネヴァへ送られる

* 最後まで自分のことしか考えなかった



聖光教会


* 大陸最大の宗教組織

* 王家以上の権威を持つ

* 内部では改革派と保守派に分かれ始めている



レーヴェン診療所


* タクトたちの拠点

* 貧富や身分を問わず患者を受け入れる

* 世界各国を巡る医療活動の中心



終焉の地グラ=ネヴァ


* 「帰れない国」と呼ばれる謎の土地

* 一度入れば出られない

* 王も法も存在しない

* 魔王ヴァルゼノスが眠っていた場所

* 世界最大の秘密を隠している



主人公たち


タクト・フォン・レーヴェン


「血の繋がりよりも、共に支え合う心こそ家族だ。」


フィリア・フォン・レーヴェン


「リリアは大切な妹よ。」


リリア・ノエル


「先生とお姉様が、私の本当の家族です。」


魔王ヴァルゼノス


「家族とは、生んだ者ではない。守り続けた者だ。」

第九話 帰れない国グラ=ネヴァと封印の魔王


終焉の地グラ=ネヴァ。


そこは地図に存在しない。


国と呼ばれている。


だが、王もいない。


法もない。


ただ、黒い霧に包まれた大地が広がるのみ。


一度入れば、誰も帰ることはできない。


そんな場所へ、リリアの両親は送られていた。


「出してくれ!」


「俺たちは悪くない!」


「こんなところ嫌だ!」


叫び続ける二人。


しかし。


黒い玉座の間。


巨大な角を持つ男が静かに目を開いた。


封印されていた魔王。


魔王ヴァルゼノス。


数千年を生きる古き魔族の王。


「騒がしい」


「人間よ」


「貴様ら、何をした?」


二人は震えながら答える。


「娘を売っただけだ!」


「金が欲しかっただけだ!」


「使えない娘だった!」


その瞬間。


魔王の目が冷たく光る。


「ほう?」


「娘を売った?」


「その娘は、今どうしている?」


「知らねえよ!」


「使えない娘なんだ!」


魔王は静かに立ち上がる。


「帰れない国?」


「愚かな人間よ」


「貴様らこそ、何をしてきたのだ」


「その娘に」


「親として何を与えた?」


「愛か?」


「食事か?」


「言葉か?」


「何一つ与えず、娘を道具として捨てたか」


二人は言葉を失った。


「貴様らのような者が、帰る場所を望むな」


◇◇◇


その頃。


王都のレーヴェン診療所。


「先生、手紙です」


リリアが持ってきた手紙には、追放された両親からのものと書かれていた。


「リリア!」


「助けてくれ!」


「親だろ!」


「迎えに来てくれ!」


「最後に話をしたい!」


だが。


リリアは静かに手紙を畳んだ。


そして。


何も言わずに暖炉へ入れた。


「リリア……」


フィリアが心配そうに見る。


「お姉様」


「もういいんです」


「私には家族がいますから」


「……」


タクトは何も言わず、優しく頭を撫でた。


「リリア」


「君は僕たちの家族だ」


「これからも一緒に生きていこう」


「貴族医師として」


「立派な医師に育てる」


リリアは涙を流した。


「はい、先生」


◇◇◇


グラ=ネヴァ。


再び魔王の前。


「助けてくれ!」


「娘を呼べ!」


すると、黒い炎の中に映像が現れた。


笑顔で患者を診るリリア。


隣にはタクト。


そしてフィリア。


幸せそうな三人。


二人は叫ぶ。


「リリア!」


「お前は使えない娘だ!」


「親を助けろ!」


その時。


魔法越しに映像を見ていたリリアが、一言だけ呟いた。


「最悪な親」


それだけだった。


怒りもない。


憎しみもない。


ただ、事実を告げるように。


魔王ヴァルゼノスは静かに笑った。


「そうか」


「貴様らは、娘にすら見捨てられたか」


「当然だ」


「今やあの娘には、本当の家族がいる」


「貴様らの居場所はない」


そして魔王は、初めて優しく微笑んだ。


「リリア・ノエルか……」


「面白い娘だ」


「人間も捨てたものではない」


誰も知らない。


帰れない国グラ=ネヴァ。


そこに封じられた魔王ヴァルゼノスが、


遠く離れた一人の少女の優しさに興味を持ち始めていたことを。


そして、その出会いが、


世界を揺るがす新たな運命へと繋がっていくことを――。


第十話「魔王からの招待状と黒き大地の真実」へ続く――。

魔王ヴァルゼノス


第九話をお読みいただき、ありがとうございます。


今回、新たに姿を現したのが、終焉の地グラ=ネヴァを治める封印の魔王ヴァルゼノスです。


「魔王」と聞けば、多くの人は世界を滅ぼす存在を想像するでしょう。


しかし、ヴァルゼノスは少し違います。


数千年を生き、多くの人間を見てきた彼は、人間の愚かさも優しさも知っています。


だからこそ、リリアの両親の言葉を聞いた時、怒ったのは娘ではなく親の方でした。


「使えない娘」


その言葉に、ヴァルゼノスは失望しました。


生まれた子を愛さず。


守ることもせず。


ただ利用し、捨てる。


そんな者たちに、親を名乗る資格はない。


彼にとって、家族とは血の繋がりではありません。


共に笑い。


共に泣き。


守りたいと願う者。


それこそが家族でした。


だからこそ、遠く離れた場所で笑顔を取り戻したリリアを見た時、彼は初めて微笑みました。


「面白い娘だ」


「本当の家族を見つけたか」


そして、彼はもう一人の存在にも興味を抱きます。


タクト・フォン・レーヴェン。


権力のためでも。


名誉のためでもなく。


ただ人を救いたいと願う若き医師。


魔王であるヴァルゼノスには、その姿が懐かしく映っていました。


まるで、遠い昔に失った何かを見るように。


敵なのか。


味方なのか。


善なのか。


悪なのか。


まだ誰にも分かりません。


ただ一つ確かなのは――


魔王ヴァルゼノスは、世界を滅ぼすために目覚めたのではないということ。


そして、若き医師タクトと、笑顔を取り戻した少女リリアとの出会いが、長き時を生きた魔王の運命すら変えていくことになるのでした。


「家族とは、生んだ者ではない。」


「最後まで守り抜いた者のことだ。」


――魔王ヴァルゼノス。

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