帰れない国グラ=ネヴァと封印の魔王
『転生しても貴族医師としてここを守る』
第九話時点 登場人物
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黒鯛 拓真
異世界名:タクト・フォン・レーヴェン
* 本作の主人公
* 前世は日本の外科医
* 十歳
* レーヴェン侯爵家次男
* レーヴェン診療所院長
* フィリアの夫
* リリアの師匠
* 王家直属医師見習い
* 「全ての命を守る」が信念
* リリアを本当の家族として育てている
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フィリア・フォン・レーヴェン
元フェルディア王国第一王女
* 十五歳
* タクトの妻
* 明るく優しい性格
* リリアを妹のように愛している
* 診療所の手伝いをしている
* 「白き王女」と呼ばれている
* タクトと共に各国を巡る
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リリア・ノエル
* 十二歳
* タクトの一番弟子
* 教会孤児院出身
* 心優しい少女
* 両親に売られた過去を持つ
* タクトとフィリアを本当の家族として慕う
* 医師を目指して勉強中
* 両親からの最後の手紙を燃やし、過去と決別する
* 「最悪な親」と一言だけ告げる
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セレスティア・ルミナ
聖光教会聖女候補
* 白銀の髪と黄金の瞳を持つ少女
* 人々を救うことを願う心優しい女性
* タクトたちと行動を共にする
* 教会改革を望んでいる
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アルベルト・フォン・レーヴェン
レーヴェン侯爵家当主
* タクトの父
* 王国最高峰の医師
* 「聖医」の異名を持つ
* 息子の成長を温かく見守る
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エリシア・フォン・レーヴェン
レーヴェン侯爵夫人
* タクトの母
* 穏やかで優しい女性
* フィリアとリリアを家族として受け入れている
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レオンハルト・フェルディア
フェルディア王国国王
* フィリアの父
* 民を愛する名君
* タクトを信頼している
* 教会との均衡を保つ王
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セレーネ・フェルディア
フェルディア王妃
* フィリアの母
* 慈愛に満ちた女性
* タクトとフィリアを祝福している
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バルディウス
聖光教会大司教
* 六十歳
* 聖光教会最高幹部
* タクトとの対立を経て自らを見つめ直している
* 教会改革を考え始めている
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アリアンシア・エル=アルヴヘイム
エルフ女王
* 六大王の一人
* 数百年を生きるエルフ族の支配者
* 教会を超える影響力を持つ
* タクトの才能に注目している
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魔王ヴァルゼノス
封印の魔王
* 終焉の地グラ=ネヴァの支配者
* 数千年を生きる古き魔王
* 冷静沈着な性格
* 人間を嫌っているが理不尽を嫌う
* リリアの境遇を知り興味を抱く
* 「親として何を与えた」とリリアの両親を叱責する
* 世界の秘密を知る存在
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リリアの実父
* 酒と煙草に溺れた男
* 娘を金のために孤児院へ売る
* 村の崩壊の原因を作る
* グラ=ネヴァへ追放される
* 最後まで娘を「使えない娘」と呼んだ
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リリアの実母
* 娘を見捨てた女性
* 浮気と放蕩生活を繰り返した
* 実父と共にグラ=ネヴァへ送られる
* 最後まで自分のことしか考えなかった
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聖光教会
* 大陸最大の宗教組織
* 王家以上の権威を持つ
* 内部では改革派と保守派に分かれ始めている
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レーヴェン診療所
* タクトたちの拠点
* 貧富や身分を問わず患者を受け入れる
* 世界各国を巡る医療活動の中心
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終焉の地グラ=ネヴァ
* 「帰れない国」と呼ばれる謎の土地
* 一度入れば出られない
* 王も法も存在しない
* 魔王ヴァルゼノスが眠っていた場所
* 世界最大の秘密を隠している
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主人公たち
タクト・フォン・レーヴェン
「血の繋がりよりも、共に支え合う心こそ家族だ。」
フィリア・フォン・レーヴェン
「リリアは大切な妹よ。」
リリア・ノエル
「先生とお姉様が、私の本当の家族です。」
魔王ヴァルゼノス
「家族とは、生んだ者ではない。守り続けた者だ。」
第九話 帰れない国グラ=ネヴァと封印の魔王
終焉の地グラ=ネヴァ。
そこは地図に存在しない。
国と呼ばれている。
だが、王もいない。
法もない。
ただ、黒い霧に包まれた大地が広がるのみ。
一度入れば、誰も帰ることはできない。
そんな場所へ、リリアの両親は送られていた。
「出してくれ!」
「俺たちは悪くない!」
「こんなところ嫌だ!」
叫び続ける二人。
しかし。
黒い玉座の間。
巨大な角を持つ男が静かに目を開いた。
封印されていた魔王。
魔王ヴァルゼノス。
数千年を生きる古き魔族の王。
「騒がしい」
「人間よ」
「貴様ら、何をした?」
二人は震えながら答える。
「娘を売っただけだ!」
「金が欲しかっただけだ!」
「使えない娘だった!」
その瞬間。
魔王の目が冷たく光る。
「ほう?」
「娘を売った?」
「その娘は、今どうしている?」
「知らねえよ!」
「使えない娘なんだ!」
魔王は静かに立ち上がる。
「帰れない国?」
「愚かな人間よ」
「貴様らこそ、何をしてきたのだ」
「その娘に」
「親として何を与えた?」
「愛か?」
「食事か?」
「言葉か?」
「何一つ与えず、娘を道具として捨てたか」
二人は言葉を失った。
「貴様らのような者が、帰る場所を望むな」
◇◇◇
その頃。
王都のレーヴェン診療所。
「先生、手紙です」
リリアが持ってきた手紙には、追放された両親からのものと書かれていた。
「リリア!」
「助けてくれ!」
「親だろ!」
「迎えに来てくれ!」
「最後に話をしたい!」
だが。
リリアは静かに手紙を畳んだ。
そして。
何も言わずに暖炉へ入れた。
「リリア……」
フィリアが心配そうに見る。
「お姉様」
「もういいんです」
「私には家族がいますから」
「……」
タクトは何も言わず、優しく頭を撫でた。
「リリア」
「君は僕たちの家族だ」
「これからも一緒に生きていこう」
「貴族医師として」
「立派な医師に育てる」
リリアは涙を流した。
「はい、先生」
◇◇◇
グラ=ネヴァ。
再び魔王の前。
「助けてくれ!」
「娘を呼べ!」
すると、黒い炎の中に映像が現れた。
笑顔で患者を診るリリア。
隣にはタクト。
そしてフィリア。
幸せそうな三人。
二人は叫ぶ。
「リリア!」
「お前は使えない娘だ!」
「親を助けろ!」
その時。
魔法越しに映像を見ていたリリアが、一言だけ呟いた。
「最悪な親」
それだけだった。
怒りもない。
憎しみもない。
ただ、事実を告げるように。
魔王ヴァルゼノスは静かに笑った。
「そうか」
「貴様らは、娘にすら見捨てられたか」
「当然だ」
「今やあの娘には、本当の家族がいる」
「貴様らの居場所はない」
そして魔王は、初めて優しく微笑んだ。
「リリア・ノエルか……」
「面白い娘だ」
「人間も捨てたものではない」
誰も知らない。
帰れない国グラ=ネヴァ。
そこに封じられた魔王ヴァルゼノスが、
遠く離れた一人の少女の優しさに興味を持ち始めていたことを。
そして、その出会いが、
世界を揺るがす新たな運命へと繋がっていくことを――。
第十話「魔王からの招待状と黒き大地の真実」へ続く――。
魔王ヴァルゼノス
第九話をお読みいただき、ありがとうございます。
今回、新たに姿を現したのが、終焉の地グラ=ネヴァを治める封印の魔王ヴァルゼノスです。
「魔王」と聞けば、多くの人は世界を滅ぼす存在を想像するでしょう。
しかし、ヴァルゼノスは少し違います。
数千年を生き、多くの人間を見てきた彼は、人間の愚かさも優しさも知っています。
だからこそ、リリアの両親の言葉を聞いた時、怒ったのは娘ではなく親の方でした。
「使えない娘」
その言葉に、ヴァルゼノスは失望しました。
生まれた子を愛さず。
守ることもせず。
ただ利用し、捨てる。
そんな者たちに、親を名乗る資格はない。
彼にとって、家族とは血の繋がりではありません。
共に笑い。
共に泣き。
守りたいと願う者。
それこそが家族でした。
だからこそ、遠く離れた場所で笑顔を取り戻したリリアを見た時、彼は初めて微笑みました。
「面白い娘だ」
「本当の家族を見つけたか」
そして、彼はもう一人の存在にも興味を抱きます。
タクト・フォン・レーヴェン。
権力のためでも。
名誉のためでもなく。
ただ人を救いたいと願う若き医師。
魔王であるヴァルゼノスには、その姿が懐かしく映っていました。
まるで、遠い昔に失った何かを見るように。
敵なのか。
味方なのか。
善なのか。
悪なのか。
まだ誰にも分かりません。
ただ一つ確かなのは――
魔王ヴァルゼノスは、世界を滅ぼすために目覚めたのではないということ。
そして、若き医師タクトと、笑顔を取り戻した少女リリアとの出会いが、長き時を生きた魔王の運命すら変えていくことになるのでした。
「家族とは、生んだ者ではない。」
「最後まで守り抜いた者のことだ。」
――魔王ヴァルゼノス。




