第五の使徒と星界から来た少女
第五の使徒
使徒。
それは終焉神ゼロスに仕える者。
そう伝えられてきた。
だが、本当にそうだったのだろうか。
第一の使徒アザル。
第二の使徒セレナ。
第三の使徒リヴィエル。
第四の使徒ノア。
そして今。
誰も知らない第五の使徒が、この世界に生まれた。
白い翼を持つ小さな赤ん坊。
憎しみもなく。
絶望もなく。
ただ優しい笑顔を浮かべる、不思議な命。
「お父さん」
「先生」
そう呼ぶ小さな声。
そして、赤ん坊はまだ誰も知らない名前を胸に秘めていた。
その魂は、遥か昔から続く運命と繋がっている。
終焉を超えた先に生まれた希望。
それが第五の使徒。
やがて、彼女は世界の真実を知ることになる。
そして、一人の孤独な少年の運命を変えるために。
第三十八話「第五の使徒と星界から来た少女」
星界の門が開かれた夜。
白き鎧を纏った少女は、涙を流しながらタクトを見つめていた。
「先生……」
「ようやく会えました」
その姿を見たクロノスは息を呑む。
「まさか」
「星界の監察者アステリア……」
アイオニアも静かに目を閉じた。
「千年以上前の悲劇の娘」
「彼女まで来るとは……」
◇◇◇
一方。
第五の使徒の赤ん坊は、レオの隣で静かに眠っていた。
ミレイアは赤ん坊を見つめる。
「この子」
「優しい魂ね」
ベルゼリオスも笑う。
「友よ」
「家族が賑やかになったな」
◇◇◇
その時。
アイオニアは古い記憶を映し出した。
千年以上前。
フェルディア王国よりさらに古い時代。
そこには一人の少女がいた。
その名は――
エレナ・フォン・アルシア。
王の娘。
そして。
天才貴族医師。
若くして数々の病を治し、「白き奇跡」と呼ばれた女性だった。
しかし。
王は怒った。
「医師の道など認めん!」
「お前は王女なのだぞ!」
「国のために政略結婚しろ!」
エレナは涙を流した。
「私は人を救いたい!」
「医者になりたい!」
だが、誰も理解してくれなかった。
ただ一人。
旅の医師、アルベルトだけを除いて。
◇◇◇
「一緒に逃げよう」
「うん」
二人は駆け落ちした。
貧しくても幸せだった。
やがて。
エレナは新しい命を授かる。
「赤ちゃん……」
「私たちの子」
アルベルトも喜んだ。
「絶対に守ろう」
しかし。
運命は残酷だった。
ある日。
アルベルトは姿を消した。
「嘘……」
「どこ?」
残されたのは一通の手紙。
『すまない』
『もう会えない』
『幸せになってくれ』
エレナは泣き崩れた。
そして。
一人で産んだ男の子。
その名は――
バーデラス。
◇◇◇
「バーデラス?」
タクトは驚く。
ミレイアも顔色を変える。
「まさか……」
アイオニアは頷いた。
「そう」
「後に世界を震わせる男」
「バーデラス」
「彼こそ」
「終焉神ゼロスの前身となる存在」
全員が息を呑む。
「え?」
「そんな……」
アザルもセレナも震える。
「ゼロス様が……」
「人間だった?」
そして。
星界の少女アステリアは涙を流す。
「先生」
「お願いです」
「バーデラスを救ってください」
「今度こそ」
「彼を一人にしないで」
すると。
第五の使徒の赤ん坊が目を開き、小さく笑った。
「お兄ちゃん」
その言葉に。
時の女神アイオニアの表情が変わる。
「まさか!」
「第五の使徒は……」
「バーデラスの妹!?」
世界の運命が、大きく動き始める。
第三十九話「終焉神ゼロスの名前と捨てられた少年」へ続く――。
バーデラス
第三十八話「第五の使徒と星界から来た少女」をお読みいただき、ありがとうございました。
バーデラス。
後に終焉神ゼロスと呼ばれる存在。
しかし、彼も最初から神だったわけではありません。
母エレナ・フォン・アルシアに愛されながらも。
父アルベルトに去られ。
王家からも見捨てられ。
孤独の中で育った一人の少年でした。
誰にも認められず。
誰にも必要とされない。
そんな日々の中で、少年は何を願ったのでしょうか。
世界の終わりか。
それとも。
ただ一人でも、自分を愛してくれる人だったのでしょうか。
星界の少女アステリアは知っています。
時の女神アイオニアも知っています。
そして、第五の使徒の小さな魂もまた知っているのです。
「お兄ちゃん」
その言葉に隠された意味を。
次回――
第三十九話「終焉神ゼロスの名前と捨てられた少年」
世界を滅ぼそうとした神。
その本当の名は、バーデラス。
誰にも愛されなかった少年の、悲しい物語が始まる――。




