世界樹の姫と神を喰らう黒き王
『転生しても貴族医師としてここを守る』
第十八話時点 登場人物
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黒鯛 拓真
異世界名:タクト・フォン・レーヴェン
* 本作の主人公
* 前世は日本の医師
* レーヴェン診療所院長
* 人間も魔族も平等に救う若き貴族医師
* フィリアの夫
* エマの父
* リリアの師匠
* 千年前の白き賢医レオニス・ヴァレンハートの魂を受け継ぐ
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フィリア・フォン・レーヴェン
* 元フェルディア王国第一王女
* タクトの妻
* エマの母
* リリアを娘のように愛している
* 家族を支える優しい女性
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エマ・フォン・レーヴェン
* 七歳
* タクトとフィリアの娘
* 将来の夢は貴族医師
* リリアを「リリアお姉ちゃん」と慕う
* 明るく優しい少女
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リリア・ノエル
* 十二歳
* 元孤児
* タクトの一番弟子
* レーヴェン家の大切な家族
* 優しく努力家の少女
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アリシア
* 十三歳
* 聖女候補
* 黒月病を乗り越えた少女
* 古代の巫女リュミナリアの器
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リュミナリア
古代の巫女
* 千年前の最後の巫女
* アイリス王女の側近
* 世界の秘密を知る存在
* アリシアの身体を借りて現界している
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アイリス・エル・フェルディア
忘れられた第二王女
* 千年前のフェルディア王国第二王女
* 重い肺病に苦しんでいた
* レオニス・ヴァレンハートによって救われる
* 奴隷市蘭を築いた女性
* 世界樹の中で千年間眠っていた
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レオニス・ヴァレンハート
白き賢医
* 千年前の伝説の医師
* 種族を問わず命を救った
* 大魔王ベルゼリオスの親友
* アイリスの夫
* 現在のタクトへと魂が受け継がれている
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魔王ヴァルゼノス
終焉の地グラ=ネヴァの支配者
* 数千年を生きる魔王
* 大魔王ベルゼリオスの息子
* ラグナの父
* 人間と魔族の共存を願う
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大魔王ベルゼリオス
ドレイゴーストの王
* 魔王ヴァルゼノスの父
* ラグナの祖父
* 聖光教会の創設者
* 自ら鎖に繋がれ世界を守る
* レオニスの親友
* 優しき大魔王
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ラグナ・ベルゼリオス
ドレイゴースト守護者
* ヴァルゼノスの息子
* ベルゼリオスの孫
* 三百年間ドレイゴーストを守る
* 誠実で真面目な青年
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バルディウス
聖光教会大司教
* 教会病の秘密を知る人物
* 自らの過ちを悔いている
* タクトを信頼している
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アリアンシア・エル=アルヴヘイム
エルフ女王
* 六大王の一人
* アイリス王女に恩を受けた
* 長命のエルフ族の女王
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ネメシス
神を喰らう黒き王
* 千年前に封印された存在
* 神々を滅ぼしかけた災厄
* レオニスとベルゼリオスの友
* タクトを「我が友」と呼ぶ
* 世界の終焉に深く関わる存在
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ドレイゴーストの番人
* ドレイゴーストの門を守る守護者
* ベルゼリオスに忠誠を誓う
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ドレイゴースト
* 世界最悪と恐れられる国
* 大魔王ベルゼリオスが統治する
* 巨大な砂時計が存在する
* 世界の真実が眠る場所
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終焉の地グラ=ネヴァ
* 魔王ヴァルゼノスが治める国
* 人間と魔族が共に暮らす場所
* レーヴェン診療所の本拠地
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千年前の三人
レオニス・ヴァレンハート
「患者を諦めることはない。」
大魔王ベルゼリオス
「友よ、千年経っても待っていた。」
ネメシス
「今度こそ約束を果たそう。」
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レーヴェン家
タクト
「助けられる命を、僕は諦めない。」
フィリア
「どんな過去があっても、私はあなたの妻よ。」
リリア
「先生たちが私の家族です。」
エマ
「お父さんとリリアお姉ちゃんが大好き!」
第十八話「世界樹の姫と神を喰らう黒き王」
巨大な砂時計が砕けた。
黒い空。
裂ける大地。
そして、世界樹の最深部。
千年もの間、眠り続けていた一人の女性が静かに瞳を開いた。
白銀の髪。
蒼い瞳。
優しい微笑み。
「やっと……」
「長い夢でした」
古代の巫女リュミナリアは涙を流す。
「アイリス様!」
「お目覚めになられたのですね!」
忘れられた第二王女。
アイリス・エル・フェルディア。
千年前に歴史から消された女性だった。
◇◇◇
一方。
ドレイゴースト。
大魔王ベルゼリオスの前で、タクトは激しい頭痛に襲われていた。
「うっ……!」
「先生!」
リリアが慌てて支える。
「大丈夫ですか!?」
ベルゼリオスは静かに目を閉じた。
「思い出しかけているのだ」
「魂の記憶を」
「魂の記憶?」
フィリアも不安そうにタクトを見つめる。
その時。
タクトの脳裏に、見知らぬ景色が浮かぶ。
戦火。
病に苦しむ人々。
そして、一人の医師。
白い外套。
優しい瞳。
誰よりも患者を想う男。
その男の名は――
レオニス・ヴァレンハート。
千年前に存在した伝説の医師。
「白き賢医」と呼ばれた人物。
◇◇◇
「先生……」
「私はもう駄目なのでしょうか……」
若い女性が咳き込む。
長い間続く高熱。
血の混じる咳。
誰もが近寄らなかった。
不治の肺病。
だが。
レオニスは微笑んだ。
「大丈夫です」
「まだ終わりではありません」
「私は医師です」
「患者を諦めることはありません」
その女性こそ。
若き日のアイリスだった。
王家の第二王女。
陰謀により名誉を傷つけられ、病を得て、全てを失いかけていた。
しかし。
レオニスは身分など気にしなかった。
「王女でも平民でも関係ない」
「貴女は、生きていい」
その言葉に、絶望していたアイリスは涙を流した。
◇◇◇
「そうだったのですね……」
世界樹の中。
目覚めたアイリスは微笑んだ。
「レオニス様」
「そして今は……」
「タクト・フォン・レーヴェン様」
リュミナリアが涙を流す。
「アイリス様!」
「本当に……本当に長い時間でした」
◇◇◇
「友よ」
ベルゼリオスがタクトに語る。
「レオニスは人間だった」
「だが、我ら魔族を恐れなかった」
「種族を超えて命を救い続けた」
「だから我は友となった」
ヴァルゼノスも頷く。
「父上が唯一心を許した人間」
「それが白き賢医レオニス・ヴァレンハート」
「そして、その魂が今のお前なのだ」
◇◇◇
しかし。
その時。
空間が裂けた。
巨大な黒い腕。
無数の瞳。
神々の亡骸を纏う漆黒の王。
「久しいな」
「ベルゼリオス」
「リュミナリア」
「そして……」
赤い瞳がタクトを見つめる。
「また会えたな」
「我が友よ」
魔王ヴァルゼノスが震える。
「ネメシス……!」
神を喰らう黒き王。
千年前、神々を滅ぼしかけた存在。
だが。
ネメシスの瞳には敵意ではなく、悲しみがあった。
「千年か……」
「長かったな」
「レオニス」
「今度こそ約束を果たそう」
タクトは涙を流していた。
知らないはずの名前。
知らないはずの友。
それなのに。
胸の奥が熱くなる。
「どうして……」
「君を知っている気がするんだ……?」
そして。
千年前。
白き賢医レオニス。
大魔王ベルゼリオス。
神を喰らう者ネメシス。
三人が交わした約束が、再び動き始める――。
第十九話「千年前の三人と終焉の約束」へ続く――。
肺結核――治せるのか?
第十八話をお読みいただき、ありがとうございます。
かつて、人々は肺結核を「死の病」と呼びました。
長く続く咳。
血を吐き。
高熱に苦しみ。
多くの命が失われていきました。
千年前の世界では、治療法など存在しません。
祈りも。
魔法も。
万能ではありませんでした。
それでも、一人の医師は諦めませんでした。
白き賢医レオニス・ヴァレンハート。
彼は言いました。
「治せるかどうかではない」
「患者を見捨てるかどうかだ」
「医師が先に諦めてはいけない」
その言葉に救われたのが、若き第二王女アイリスでした。
そして、時代は流れます。
現代日本で医師だった黒鯛拓真。
そして異世界で貴族医師となったタクト・フォン・レーヴェン。
二つの人生を持つ彼は知っています。
病は恐ろしい。
しかし、恐ろしいのは病そのものではありません。
「もう治らない」
「無駄だ」
「仕方がない」
そう言って誰かを見捨ててしまう心なのかもしれません。
肺結核は、本当に治せるのか。
その答えは――
「治療によって治る可能性はある」
です。
だからこそ。
千年前のレオニスも。
今を生きるタクトも。
同じ言葉を口にするのでしょう。
「まだ終わっていない」
「生きることを諦めないでください」
それは医術の力だけではありません。
誰かを救いたいと願う心。
それこそが、千年を超えて受け継がれる「貴族医師」の本当の加護なのかもしれません。
そして今日もまた。
若き貴族医師タクト・フォン・レーヴェンは、
助けを求める誰かのために、前を向いて歩き続けるのです。




