神を喰らう者と忘れられた王女
『転生しても貴族医師としてここを守る』
第十七話時点 登場人物
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黒鯛 拓真
異世界名:タクト・フォン・レーヴェン
* 本作の主人公
* 前世は日本の医師
* レーヴェン診療所院長
* 人間も魔族も救う若き貴族医師
* 大魔王ベルゼリオスから「我が友」と呼ばれる
* 千年前の記憶と深い関わりを持つ
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フィリア・フォン・レーヴェン
* 元フェルディア王国第一王女
* タクトの妻
* エマの母
* リリアを家族として愛する
* 忘れられた王女アイリスに容姿が似ている
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エマ・フォン・レーヴェン
* 七歳
* タクトとフィリアの娘
* リリアを「リリアお姉ちゃん」と呼ぶ
* 明るく優しい少女
* 将来は貴族医師を目指している
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リリア・ノエル
* 十二歳
* タクトの一番弟子
* 元孤児
* レーヴェン家の一員
* アリシアやエマを大切に思っている
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アリシア
聖女候補
* 十三歳
* 黒月病に侵されていた少女
* 古代の巫女リュミナリアの器となる存在
* 世界の秘密を握る少女
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リュミナリア
古代の巫女
* 千年前を知る最後の巫女
* アリシアの身体を借りて現界
* タクトとベルゼリオスの過去を知る
* 忘れられた王女アイリスに仕えていた
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フィリア・フォン・レーヴェン
* タクトの妻
* フェルディア王国第一王女
* 家族を大切にする女性
* アイリス王女との繋がりを感じ始めている
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魔王ヴァルゼノス
終焉の地グラ=ネヴァの支配者
* 数千年を生きる古き魔王
* 大魔王ベルゼリオスの息子
* ラグナの父
* 人間と魔族の共存を願う
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大魔王ベルゼリオス
奴隷の国ドレイゴーストの王
* 魔王ヴァルゼノスの父
* ラグナの祖父
* 聖光教会創設者
* 自ら鎖に繋がれ世界を守ってきた
* タクトの旧友
* 千年前の王妃アイリスを愛していた
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ラグナ・ベルゼリオス
ドレイゴーストの守護者
* 魔王ヴァルゼノスの息子
* 大魔王ベルゼリオスの孫
* 三百年間ドレイゴーストを守り続けてきた
* 誠実で心優しい青年
* 祖父の願いを受け継ぐ
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バルディウス
聖光教会大司教
* 教会病の秘密を知る人物
* 過去の過ちを悔いている
* タクトを信頼する
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アリアンシア・エル=アルヴヘイム
エルフ女王
* 六大王の一人
* アイリス王女に恩を受けた
* 数百年を生きるエルフ族の女王
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アイリス・エル・フェルディア
忘れられた第二王女
* 千年前のフェルディア王国第二王女
* タクトの妻だった女性
* 奴隷市蘭を作った人物
* 民を愛し続けた王女
* 名誉を傷つけられ歴史から消された
* 世界樹の奥で眠っている
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ネメシス
神を喰らう者
* 千年前に封印された災厄
* 神々すら滅ぼした存在
* 巨大な砂時計の崩壊と共に復活しようとしている
* 世界最大の脅威
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ドレイゴーストの民
* 人間、魔族、獣人、エルフが共に暮らす
* 「奴隷の国」と呼ばれながらも笑顔を忘れない
* ベルゼリオスとラグナに守られてきた
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終焉の地グラ=ネヴァ
* 魔王ヴァルゼノスの国
* 人間と魔族が共存する場所
* レーヴェン診療所が存在する
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奴隷の国ドレイゴースト
* 世界最悪と恐れられる国
* 大魔王ベルゼリオスが守る国
* 巨大な砂時計が存在する
* 世界の秘密が眠る場所
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レーヴェン家
タクト
「助けられる命を、僕は諦めない。」
フィリア
「どんな過去があっても、私はあなたの妻よ。」
リリア
「先生たちが私の家族です。」
エマ
「リリアお姉ちゃん、大好き!」
魔王ヴァルゼノス
「父上……もう一人で苦しまないでください。」
大魔王ベルゼリオス
「我が友よ、千年待ったぞ。」
ラグナ
「祖父上の願いは、私が守り続けます。」
リュミナリア
「アイリス様……もうすぐ、再び会えます。」
第十七話「神を喰らう者と忘れられた王女」
「我が友よ……」
大魔王ベルゼリオスの言葉に、まだ困惑するタクト。
しかし、彼らに考える時間はなかった。
巨大な砂時計の砂は止まることなく落ち続けている。
そして、その足元に広がる国――
ドレイゴースト。
そこは奴隷の国と呼ばれていた。
だが、その実態は違った。
◇◇◇
「先生……」
「人がいます」
リリアが驚きの声を上げる。
街には人間、魔族、獣人、エルフたちが暮らしていた。
皆、鎖の首輪をしている。
だが、その顔に絶望はなかった。
「変ですね……」
フィリアも首を傾げる。
「奴隷の国なのに」
「みんな笑っているわ」
エマは子供たちとすぐに仲良くなっていた。
「こんにちは!」
「一緒に遊ぼ!」
子供たちも笑顔で迎えてくれる。
魔王ヴァルゼノスは静かに呟く。
「父上……」
「これが貴方の国だったのですか」
◇◇◇
その時。
一人の青年が現れた。
黒髪。
赤い瞳。
そしてヴァルゼノスに似た角。
「父上!」
「ご無事でしたか!」
「お前は!」
ヴァルゼノスが驚く。
「ラグナ……!」
青年は跪いた。
「ラグナ・ベルゼリオス」
「大魔王ベルゼリオス様の命により、ドレイゴーストを守る者です」
タクトたちは驚く。
「息子?」
「そうだ」
ベルゼリオスは微笑んだ。
「ヴァルゼノスの息子」
「つまり孫だ」
「三百年前から、この国を守ってくれている」
ラグナは優しく笑った。
「祖父上の願いです」
「この国に住む者たちを守れと」
「だから私は剣を取った」
◇◇◇
「しかし」
ラグナの顔が曇る。
「限界です」
「神を喰らう者が目覚め始めています」
リュミナリアが青ざめた。
「まさか!」
「ネメシス……!」
ベルゼリオスも顔色を変える。
「まだ封印が残っていたはずだ!」
ラグナは頷く。
「砂時計が落ちきれば」
「奴は完全に目覚めます」
「そして神々を喰らい」
「世界そのものを飲み込みます」
◇◇◇
「先生……」
リリアは震えていた。
「怖いです」
タクトは優しく頭を撫でた。
「大丈夫」
「僕たちは一人じゃない」
その時。
城の奥から、一枚の古びた肖像画が運ばれてきた。
そこに描かれていたのは――
金色の髪。
蒼い瞳。
気品に満ちた美しい王女。
フィリアが息を呑む。
「この方……」
「私に似てる……?」
リュミナリアは涙を流した。
「アイリス様……」
「忘れられた王女……」
ベルゼリオスは静かに頭を下げた。
「我らが王妃」
「そして――」
「千年前、お前の妻だった女性だ」
「タクト」
「アイリス・エル・フェルディア」
「名誉を傷つけられながらも、最後まで民を愛した第二王女」
「その魂は……」
「今も、どこかでお前を待っている」
タクトの胸に激しい痛みが走る。
知らないはずの笑顔。
知らないはずの温もり。
そして、涙が溢れて止まらなかった。
「どうして……」
「どうして、こんなに懐かしいんだ……」
その瞬間。
遥か彼方。
世界樹の最深部で、眠っていた一人の女性が静かに目を開けた。
「タクト様……」
「やっと……」
「会えますね」
そして、封印の奥底で――
神を喰らう者ネメシスもまた、目を開いた。
第十八話「世界樹の姫と神を喰らう黒き王」へ続く――。
この世界で謳われている歌
第十七話をお読みいただき、ありがとうございました。
人々が忘れても。
歴史が消えても。
歌だけは残ります。
終焉の地グラ=ネヴァ。
奴隷の国ドレイゴースト。
そして各国を旅する吟遊詩人たちは、今も一つの歌を謳い続けています。
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♪『希望の灯』
誰も知らない 遠い昔に
涙を拭った 優しい人がいた
身分も種族も 違うけれど
同じ空の下で 笑っていた
傷ついた心を 抱きしめながら
明日を信じて 歩いてゆく
たとえ世界が 終わろうとも
守りたい人が そこにいるから
悲しみ越えて 手を取り合えば
きっと未来は 変えられる
千年の時を 超えてなお
消えない願いが あるのなら
愛する人よ 忘れないで
命の灯は 受け継がれてゆく
人も魔族も 共に歌おう
新しい朝が 来るその日まで
ラララ……
希望の灯よ
永遠に――
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この歌の作者は誰なのか。
誰も知りません。
ただ、古き魔族たちはこう語ります。
「大魔王ベルゼリオスが涙を流しながら聴く歌」
「古代の巫女リュミナリアが祈りの時に口ずさむ歌」
「そして、忘れられた王女アイリスが愛した歌」
だと。
もしかすると。
若き医師タクトの魂もまた、どこかでこの歌を知っているのかもしれません。
歌は歴史よりも長く生きる。
そして今日もまた、世界のどこかで誰かが――
静かに「希望の灯」を謳っているのです。




