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雑談三昧  作者: カトーSOS


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101/121

セイラさんがアムロの最初の相手だということについて



ガンダムの小説版を読んだとき、

多くの人が一瞬、立ち止まる場面がある。


セイラ・マスが、

アムロ・レイの「最初の相手」になるところだ。


子ども心に読むと、

妙にドキドキするし、

同時に「え、そうなる?」とも思う。

だが時間が経って振り返ると、

あれはとてもガンダムらしい描写だったと感じる。


まず押さえておきたいのは、

小説版ガンダムは

TV版の補足や説明ではない、ということだ。

富野由悠季が、

スポンサーや玩具メーカー、

放送枠や年齢制限といった

あらゆる制約から離れて、

「人間の話」として

ガンダムを組み直した作品である。


だから描写は、

全体に現実寄りになる。

関係性も、感情も、

戦争の重さも、

きれいに整理されない。


その中で描かれる

セイラとアムロの関係は、

恋愛というより

はっきりと「通過儀礼」だ。


アムロは、

戦争に放り込まれ、

人を殺すことを覚え、

守られる側から

戦う側へと一気に引きずり出される。

精神はまだ子どもなのに、

環境だけが

大人であることを要求してくる。


そんな状況で、

何も起きない方が不自然だ。


セイラは、

母でも恋人でもなく、

完全な姉でもない。

戦争の中にいる、

一人の大人の女性だ。


アムロにとって彼女は、

理想や救済ではなく、

ただの現実になる。


だから、

最初の相手になる。


ここには、

運命的なロマンスも、

ニュータイプ的な精神的結合もない。

あるのは、

閉鎖空間と死の気配と、

若さと不安だけだ。


さらに重要なのは、

この関係が

セイラの感情的な衝動ではない、という点だ。


セイラ・マスは、

感情で突っ走る人物ではない。

自分の立場も、

距離も、

状況も、

冷静に分かっている。


だからあの行動は、

優しさでも、

恋愛的な積極性でもない。

もっと冷たい判断に近い。


この少年は、

もう戻れないところまで来てしまった。

ならば、

中途半端な理想や幻想を残すより、

現実を一度、

体に落とした方がいい。


そんな覚悟すら感じる。


それは残酷だ。

だが同時に、

戦争という環境の中で、

年上の人間が

年下の人間にしてしまう、

もっとも「あり得てしまう選択」でもある。


この経験によって、

アムロは

憧れの対象としてのセイラを失う。

だがそれは同時に、

彼を神話から引きずり下ろす。


選ばれし少年でもなく、

純粋な被害者でもなく、

ただの若い兵士として、

現実に立たせる。


TV版では、

この要素はすべて削ぎ落とされた。

子ども向け作品としては

描けないし、

描く必要もなかったからだ。

その代わりに、

ララァという存在が置かれ、

関係性は神話の方向へ昇華された。


だから小説版を読むと、

どうしても違和感が残る。


だがその違和感こそが、

ガンダムの二重構造を示している。


アニメのガンダムは神話で、

小説のガンダムは人間ドラマだ。


セイラさんが

アムロの最初の相手だった、

という事実は、

ロマンではない。


戦争が、

人をどんな順番で壊していくかを示す、

静かな記録だ。


しがらみをすべて外したとき、

ガンダムは、

あの冷たさと生々しさを

自然に引き受ける。


そう考えると、

あの場面は

ドキドキするだけで終わらない。

あとになって、

じわっと重さが残る。


それこそが、

制約のない場所で描かれた

ガンダムの、

正直な姿なのだと思う。


私はこの生々しいまでの小説版ガンダムが好きだ。

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