取調
「……では、アンヌ・ユグノー嬢の失踪の件についての話を聞かせてもらおうか」
重苦しい取調室の空間の中には取り調べを務めるアルバートと容疑者であるレオンハルト。そこに記録官が同席していた。
「寮の人間はアンヌ嬢を誰も見ていないという間、貴方だけが彼女と会っているんです。貴方はほかの人が誰も姿を見たことがない3週間の内に「今日はアンヌと会えた」とおっしゃっていたと聞き及んでおりますが?」
「そ、それは……」
レオンハルトは言いよどむ。意味もなく身体を動かし、視線が定まらない。分かりやすいほど動揺している。
「寮の管理人たちが何人も聞いています。その時のアンヌ嬢との会話を教えていただけますか?」
「……」
アルバートの後ろに控えている記録官もこちらを見る。
だが、アルバートの目つきの方がその何倍も恐ろしかった。
「何を話されたのですか?」
「……ません」
「なんですか?」
「……会っていません……嘘なんです……」
「……嘘?」
アルバートは訝しげにレオンハルトを見る。
「なぜそのような嘘をついたのですか?」
「その……見栄といいますか。婚約者に毎日、会いに行っているのに、会えなかったなんて恥ずかしいじゃないですか……」
視線を落としながら、おどおどとたどたどしく話すレオンハルトにいつものような爽やかさはなかった。
「毎日、貴方は扉に向かって話しかけていたと?」
「……中にいたと思っていました」
口にすると改めてその間抜けさが分かる。
記録官がさらさらとペンを動かす音が聞こえてくる。改めて記録にもこの間抜けな行動が残る。
「……貴方は部屋の中に入りましたか?」
「い、いいえ! それだけは絶対にっ!!」
それははっきりと否定する。
「………」
「本当ですっ! 僕は中にアンヌがいると思っていたんです!! 勝手に入ったら嫌われるじゃないですかっ!!」
この男の善悪の境界線がいまいち理解ができない。人それぞれ善悪の境界線は違うがレオンハルトにとっては人の部屋に勝手に入るということは許されないことだったのだろう。そして、アンヌに嫌われまいとそれを守っていた。
だが、もうすでに嫌われている。自分は嫌われていないと思っているレオンハルトの言葉には力がこもる。
「ほ、本当は鍵を借りようとしましたが、それだけは無理だと言われて諦めたんです」
「……」
「そもそも女子寮は男性が入ることすら禁止されていることはご存じでしたか?」
「そ、それは……はい」
寮の管理人たちが融通してくれたから入ることができたとレオンハルトは話す。
「なぜ、貴方は入ることができたのですか?」
「……その、ちょっとチップを……」
チップとは貴族が使用人への好意を示すための心づけとして渡す行為だ。この場合は「買収」と言ってもいいだろう。
あの寮は規則が守られていなかったが、第三者への鍵の貸し出しは許可しなかったようだ。だが、今回の一件を重く見た上役はあの寮の管理人たちの業務を停止させ、各部屋に謹慎処分とした。部屋の前には見張りとして幾人の人間が立っている。誰かと連絡を取り合うことも禁止されている状態だ。
寮の管理人たちが黙っていた買収と言う行為が明らかになった。管理人たちの余罪を追及する必要が出てきた。
「……本当はアンヌ嬢が部屋にいないことを知っていたんじゃないですか?」
「……は?」
「周りの人間にアンヌ嬢が部屋にいると思わせるために、毎日部屋を訪れていたんじゃないですか?」
「は? はあ? 何のためにそんなことを……」
レオンハルトは訳が分からないと首を横に振る。
アルバートは単刀直入に結論だけを述べた。
「貴方がアンヌ嬢を拉致したのではないかと言うことです」
「は、はああああああああああ!?」
自分が今とんでもない冤罪をかけられていることを告げられて、レオンハルトは大きな声を出した。
「あ、え、な、なんで僕が!? してません!! 僕は何もしていません!! それに僕はどちらかと言ったら僕も被害者よりですっ!! 婚約者が行方不明なんですよっ!? アンヌのことをずっと心配して……」
「………」
アルバートの目つきはすでに罪人を見る目だった。
その目を見てレオンハルトは捲し立てるようにこの三週間の自分のアリバイや無実であることを話し始める。記録官はそれらを余さず記録していく。
「……では、ご自身は無実であると?」
「当たり前ですっ!!」
「それでしたら、家宅捜査をご了承いただけますね?」
「……それは」
レオンハルトは言い淀む。
アルバートはここで初めて笑顔を見せる。だが、目は笑っていない。
「どうしました? ご自身の無実を証明される絶好の機会ですよ」
家宅捜査が嫌がられるのは当然のことだ。
自身の無実が証明できるからと言ってもすぐに了承できるわけがない。
だが、もうすでに捜査局は動いていた。
了承と言うのはあくまで建前であり、人命が関わっている場合は本人の了承なく動くことができる。この取り調べの中盤当たりにはレオンハルトの自宅であるウォルターズ家に捜査員の手が迫っているのだった。
◆
「全員動くなっ!! これより家宅捜査を執り行う、不審な動きを見せようものなら隠匿の疑いがかけられると思えっ!!」
捜査局員が司法大臣の印の入った書類を提示する。屋敷の面々は、いきなりの捜査局員たちの姿に呆然とする。ただ事ではないことは分かったのか全員が動かずにエントランスに集められる。ウォルターズ家の当主や妻なども使用人も含め全員だった。
「これで全員でしょうか?」
「は、はい……しかし、家宅捜査とは?」
ウォルターズ家の当主は何も知らない様子だ。
捜査局員は極めて冷静に今回の家宅捜索の理由を告げる。
「レオンハルト・ウォルターズにアンヌ嬢の拉致監禁の疑いがかけられております。人命にかかわることのため、この屋敷を改めさせていただく」
「れ、レオンハルトがですか?」
当主は寝耳に水といったように驚く。
今朝の内に捜査局員がやってきて息子の事情聴取のために捜査局へと連れて行ったが、一体何があったのかと頭を押さえる。
「……では、各班に分かれ始めっ!」
当主の「待ってくれ」といった声は聞こえているが制止される理由にはならない。捜査員たちは割り当てられた部屋へと向かいアンヌの身柄、もしくは失踪の手掛かりになるものを探し始める。
捜査員たちが屋敷内を踏み荒らし、執務室や私室、女性の寝室だろうが入り捜査を始める。一応と言うことで女性の部屋については女性捜査員が担当することになっているが気休めにもなっていなかった。もはや個人情報守秘などあったものではなかった。
「……では、レオンハルトは夜遅くに帰宅していたこともあると?」
「は、はい……」
その間にも捜査局員たちは使用人たちから情報を集める。
部屋どころか、床の絨毯すらひっくり返し探す。
自身のドレスクローゼット内を無遠慮に見られ、隠し部屋などがないか探される。その光景を見たショックでウォルターズ夫人はめまいを起こし、当主に寄り掛かる。当主はどうしてこんなことになっているんだとまだ混乱している状態だった。
ウォルターズの屋敷には大勢の捜査局員たちが出入りし、慌ただしく動いている。そのことはあっという間に噂になり屋敷の前には野次馬が集まりだし、様々な憶測が飛び交うことになる。
貴族として最悪といってもいいほどの醜聞だった。
◆
レオンハルトの聴取を部下に任せ、アルバートはウォルターズの屋敷へとやってきた。
「何か手掛かりになるものはあったか?」
家宅捜査で何かわかったことがないかと部下に尋ねる。
「「「………」」」
部下たちは黙ったままだったが案内する。レオンハルトの部屋から見つかったものを並べているところだった。
手紙やペンや書類、コップやハンカチ、靴、服など日用品が白いシーツの上に並べられていた。
「……これらすべてアンヌ嬢の持ち物だそうです……」
「……は?」
アルバートは間抜けな声を出した。
「待て待て待て。なんでそんなことが分かる?」
「こちらのノートにいつ手に入れたかなど詳細がまとめられていました」
つまりアンヌの私物を盗み、それをリスト化していたというのか。
気持ち悪いが、おかげで分かりやすかった。
押収品を見て女性の捜査局員は口元を隠す、嫌悪の目は隠しきれていない。そもそも隠す気はさらさらないようだった。
一番気の毒なのはこれらを見た両親だろう。見ていて可哀そうなくらいだ。両親は「もうダメだ……」と諦めているようだった。
「……このドレスとかはどうしたんだ。明らかにこれって幼少期の物だろう。なんであの男が持っているんだ?」
窃盗の容疑も加わるかと思ったが部下は首を横に振る。
「アンヌ嬢の兄のぶ……カルロからの横流し品だそうです。あっちも話を聞いた方がいいでしょうね」
「……あの豚ぁ……」
アルバートは憎々し気に呟く。
おそらく今回の事件には全く関係ないだろうが、絶対に何かやらしているだろう。いつか捕まえる予感がしていた。
「……これって、もうレオンハルトは確実に黒でしょう」
「ですが、アンヌ嬢の安否は……」
捜査局員たちは、あの押収品を見てからこの屋敷のどこかに監禁でもされているのではないかと疑った。食糧庫や地下室など探せる場所は探したがアンヌの姿はどこにもなかった。
捜査局員たちの脳裏によぎるのは最悪の結末だった。
「……とりあえず、この押収品使って揺さぶってみるか」
……おそらくアンヌ嬢の口紅が付いているハンカチを血が付いていると言ってみれば動揺してまた幕立てるように話を始め何かこぼすかもしれない。
「す、すいません。通してくださいっ!」
その中に一人の男性が入ってくる。
アンヌの上司であるレダースだった。相当、急いできたのか息が乱れている。
甥が勾留され、ウォルターズ家に家宅捜査が入ったと聞いてから慌ててこちらに来たようだ。
「おいっ! 外部から人を入れるんじゃないっ!!」
「申し訳ありませんっ!! この事件で言いたいことがあると、止まらず……」
捜査局員も止めたが半ば強引にここまで来たようだった。何度も引き留められたようで服も髪も乱れていた。
そのままアルバートの方へとやってくる。
「れ、レオンハルトはアンヌを誘拐なんてしていないっ!!」
「なぜ、貴方がそう言いきれるのですか」
必死なレダースに対してアルバートは冷静だった。
「た、退職届と手紙が部屋にあったんだっ!! あ、アンヌは攫われたんじゃないっ!! 自分から逃げ出したんだっ!!」
レダースの言葉が部屋に響く。
「……はあっ!?」
誰かが驚きの声を上げる。
だが、それはここにいる人間を代表したかのような声だった。
「絶対に嘘だろ……」
捜査局員の一人が呆れたように呟く。身内を庇うためについた苦し紛れの嘘だと思っていた。
「ほ、本当だ。私は間違いなく見たっ!! レオンハルトとの結婚が嫌なこととか、周りの人間を信用していないことが書いてあった……そんな職場でもうこれ以上は働きたくないとも……」
周囲にはまさかと言う雰囲気が漂い始めるが、アルバートは違った。
「ですが、それはアンヌ嬢と貴方が面談室で話していた内容ですよね。貴方はアンヌ嬢がレオンハルトとの結婚を嫌がっていたのを知っていた人間だ」
だから、レダースはアンヌが自ら逃げ出したと言える。
「ほ、本当なんだ……」
「ならば、その退職届と手紙を見せてください」
アルバートはその証拠を出せと命じる。
その現物があればアンヌは拉致されたのではなく自主的に逃げ出したのだという証拠となり、であれば少なくとも現状は誰かに命を脅かされる心配はない。
「…………」
レダースは黙る。
「どうしました? 退職届と手紙を見せてください」
「……した」
「なんですって?」
「……燃やしたから、もう無い……」
レダースが手紙を盗んだのは、管理人が捜査局へ連絡をしに行った間だった。
家に持ち帰り、手紙を読んだ。手紙の中にはアンヌがされた仕打ちや誰も自分の話を聞いてくれないということや、レダースに対しての不信感も記されていたという。
「な、なんで燃やしたりなんかしたんだっ!!」
「に、兄さん。だ、だって……」
レオンハルトの父親であるウォルターズ家の当主は自身の弟の胸倉をつかんだ。
もしもその退職届や手紙が残っていればこんなことにもならずに済み、最悪な事態は免れたかもしれない。もう過ぎたことなのに責めずにはいられなかった。
アンヌは自身の残業時間や仕事量などを細かく記録として残していた。案の定、それらはしっかりと手紙の中に書いてあった。それらが上に知られたら自分の経歴に傷がつくと判断したレダースはこの世から消すために燃やしてしまったそうだ。
だが、可愛い甥がアンヌの拉致容疑で捜査局に拘留されたと聞き、慌ててウォルターズ家へとやってきたという。
レダースの胸倉を乱暴に放り投げると「あぐう」とレダースは情けない声を上げ倒れるがこの屋敷の人間は誰も助けることはしなかった。
「残念ながら、その証拠を燃やしてしまったということですので」
今残っている証拠や証言はアンヌが自らいなくなったというよりも、レオンハルトによって拉致された可能性の方が明らかに高い。
手紙さえあればアンヌ嬢の逃亡という結論が優位に立っただろう。墓穴を掘ったとはまさにこのことだった。
「では、レダースさん。貴方にも捜査局に来ていただきましょうか」
「え……」
「当たり前でしょう。貴方には証拠隠滅の自白と言うことで聴取させていただきます」
自身を守るために可愛い甥を追い詰める状況を作ってしまった。
せめて黙っていれば自身は助かったのかもしれないが、墓穴を掘り自ら飛び込む結果になってしまった。
馬車に乗せられ、レダースは捜査局へと連行されていく。
周囲は何か事件が動いたのだとさらに騒ぎ始めた。
◆『なぜレオナールを頼らなかったのか』
馬車に乗せられた。
ゆっくりと馬車が進む道のりの中、目的地と違う方へと進み始める。
「……道が違うのでは?」
そのことを指摘した瞬間に同乗していた捜査局員が素早く動き、口元に何かの薬品を染み込んだハンカチを押し付けられ、抵抗する間もなく意識を手放した。
「え……あ……おえええ……」
目が覚めた瞬間に感じたのは二日酔いにも似たような強い吐き気だった。
胃の中は空っぽなのに吐き気はちっとも収まってくれない。
痛む頭や吐き気の中でここまでに至る経緯を思い出す。
「こ、ここ、とこ……?」
見知らぬ空間。
地下室のような空間にランプの明かりだけが灯っている。
体を起こすのがやっとだ。動こうにも動けない。呂律も回りにくい。多分、あの時に嗅がされた薬の影響だ。
——逃げないと……。
ただそれだけは分かった。
目の前にあるのは扉に向かって這うようにして動き出す。
だが、目の前の扉が動き出す。
誰かがここに入ってきた。
足元からゆっくりと見上げる。
黒のマーメイドドレスを見上げた先には赤い羽根をつけた目元だけの半面型の仮面をつけた女の顔があった。赤いルージュを引いた唇がゆっくりと口角を上げ——笑った。
「だぁ……え?」
「ようこそ、私の屋敷へ。私はフューリーと申します」
綺麗な挨拶儀礼を決める女性。
この女は貴族なのかと思考を巡らせるが、それよりもなぜこんなところに自分がいるのかと尋ねたかった。
「私があなたをお招きしたの。お待ちの方もいらっしゃいますからそちらへお連れしますわ」
引きずられるように連れてこられた部屋の中には自身の部下やアンジーの住んでいるアパルトマンの管理人女性がいた。
牢屋の中にいる様子を見るからに彼らも捕らわれたのだろう。足には逃げられないように枷が付けられている。
こちらの質問には全く答える気はないのにフューリーを名乗る女はつらつらと話を進める。
「まず私は貴方たちを殺します」
僅かな躊躇いもなく殺害予告をする女。
だが、それが本気であることはなぜか伝わってきた。
「い、いやああああああ!!」
「なんで、どうして!?」
「助けてくれ!!」
部下たちは恐怖で叫び、助けを乞う。
自分自身も声を上げたいが、薬の影響でうまく言葉を発することができない。
「まあまあ、そんなに叫ばれてもここに助けは来ませんわよ」
おかしそうに笑うとフューリーは一丁の銃を取り出す。
そして、その引き金を引いた。
ボォン!!
地下空間に銃声が響く。そして中から弾かれた弾がランプを1つ破壊する。
耳が劈く衝撃音を聞いて先ほどまで騒いでいた人間が一斉に黙った。代わりに小刻みに身体を震わせる。
「ほら、この通り、ね?」
フューリーは黙らせるつもりなどはなく、これほど大きな音を出してもここには誰も来ないことを証明しただけだったようだ。
「……話が逸れてしまいましたね。ですが、1つだけチャンスがあります。ローダースさん」
フューリーに名前を呼ばれる。
ローダース・エルダンそれが私の名前だ。
「貴方一人が犠牲になれば、ほかの人は助けてあげても構いませんよ?」
「……は?」
私はなぜそんなことを言われるのか分からない。
だが、部下や管理人の女性たちはその言葉に希望の光を見出したようだった。
フューリーはそっと私の耳に語り掛ける。
「どうしましたか? 貴方が死ぬことを選べば助けられるんですよ。一人の人間の不幸でほかの人間が幸せになれるんです。迷うことはないでしょう、アンジーにはそのようにおっしゃったのですから」
まさか、この女の裏にいるのはアンジーなのか。
確かに私はアンジーの家族のことを盾にして自身の親類と結婚することを迫った。だが——
「自分と他人では違いますか? 他人はよくて自分はダメですか?」
口にしたいが言えない。
部下や管理人の女性たちが私を見る目は私の死を望んでいるようだった。
「部長! 助けてくださいっ!」
「お願いします!」
「早く助けて!」
必死に助けを乞う。その言葉の後ろに隠れている言葉は「自分たちのために死んでくれ」だった。
「……10、9、8……」
フューリーが秒読みを始める。
この間に答えを示さなければどうなるのだろうか。
なんでもいいから答えを口にしなければならない。
だが、口は薬の影響で動いてくれない。
「ぐ……んお……」
カウントダウンが進むたびに部下たちの声は大きくなる。「早くっ! 部長っ!」「早く死ねっ!!」「何か言ってよっ!!」と、もはやなりふり構ってすらいられないようだった。
「3、2、1……0——残念ですね。ローダースさんは死ねないということなので……貴方もあの方たちも殺すことにします」
この場では間違いなく神のごとき存在であるフューリーの決定に「ふざけんなっ!」「そいつだけを殺せよっ」など反発がおこる。
フューリーは私を引きずり、牢屋の扉を開けて部下たちのところへと連れていく。
牢の扉があいたというのに誰も逃げ出そうとしない。力なく横たわる私を部下たちは見下ろす。その目は血走り、いつ襲い掛かってきても不思議ではない肉食獣のようだった。
違うんだ。
これは薬の所為で声が出ないだけなんだ。
そう弁明したかったが声が出ない。
「ローダースさん、もうとっくに薬の効果は切れていますので話せますよ? いつ話されるかと思っていましたが……なぜ何も言わなかったのですか?」
私の最後の言い訳はこの女に壊される。
その言葉が合図のように多くの拳が私に降り注いだ。
「わ、わだしは……」
フューリーは私を見ている。
楽しそうに私が甚振られているのを見ているだけだった。
◆
捜査局はレダースの証言はレオンハルトの保釈のための虚偽だと判断し、レダースも拘留されることになった。
誤字脱字報告ありがとうございます。至らぬ点が多々ございますがこれからもよろしくお願いします。




