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第七話 踏み込む過去


「せっかく来たから、色々見ていい?」


「あんまり散らかすなよ。奥さんに怒られるの俺なんだから」


「へぇ、この部屋は?」


「衣装部屋」


「ここは?」


「寝室」


「……ふーん?……ベッド大きいね?」


「ほら、ここはもういいだろ!」


「この部屋は、子供部屋かぁ」


「この部屋は?」


「……この部屋だけ畳なんだ」


!!


晩秋の風が窓を叩く。


部屋の窓枠。


「これ、私があげたペン立て?懐かしー!」


「もう、いいだろ!コーヒーぬるくなるぞ!」


「最初からぬるかったよ」


沈黙。


コタツの熱がゆっくり広がる。


「ねぇ、拓也。あの頃のこと、ちゃんと話したことなかったよね」


拓也は息を飲む。


「今日、話そっか」


優しい声。


でも、逃げ場がない。


「コーヒー、入れ直すわ……」


「……うん」


カップを洗う手が震える。


ヤカンの注ぎ口から白い蒸気が出始める。


お湯が沸かなければ良いのに——


トン。


カップにコーヒーが並々と注がれる。


一口飲む。


熱い。


さっきとは違う。


「ミルクと砂糖いる?」


さっきと同じ質問。


なのに、返ってくる答えは違った。


「……


……お母さん


……知ってた……」


拓也は何も言えなかった。


コーヒーから立ち上る湯気が、

二人の間をゆっくり揺れる。


「何で私だったの?」


「……俺には……あそこしか……」


言葉が続かない。


視線が合わない。


それでも、

もう誤魔化せる年齢ではなかった。


唯は熱いカップを両手で包み込む。


拓也も同じようにカップを持つ。


どのくらい話したのかわからない。


時間も量も質も。


ただ、


コーヒーは冷たかった。


合わない目線。


ズレていく答え合わせ。


触れる足。


(懐かしいな。この感じ)


コタツの中だけ温度が違う。


最初は偶然だった。


でも、


二回。


三回。


離れない時間が少しずつ長くなる。


誰も何も言わない。


言わなくてもわかってしまう。


外では晩秋の風が鳴っていた。


コタツの中だけが、

昔と同じ熱を閉じ込めている。


足が触れる回数と時間が増えていく。

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