第六話 冷たいコタツ
「近いけど……ダメだよ。帰れって」
唯がスマホで例の動画を見せる。
「あぁ!もう、わかったから」
「俺の車乗れよ。うち駐車場ないから」
車内は鼻がツンと痛くなるほど冷えていた。
なのに、なぜかいつもより暖かく感じた。
「あ!コーヒー買ってたけど、渡すの忘れてた。冷えたけど、飲む?」
「ううん。貰っとく。帰ってから飲む」
気まずい。
言葉を探すが、見つからない。
「お邪魔しまーす」
ガチャ。
扉が閉まる。
「さむぅー!暖房ないの?」
「コタツならあるぞ!」
「なつかしー!」
「昨日出したばっかりだから、少し埃っぽいかもな」
「お湯、沸かしてくる」
コタツに足を入れるが、まだ冷たい。
外気より冷たく感じる。
冷たいコタツ。
埃の匂い。
狭い部屋。
それだけで、喉の奥が少し詰まる。
スイッチを押す。
小さな音。
ゆっくりと熱が広がっていく。
「ピィーー」
「まだそんなヤカン使ってんの?」
「悪いかよ」
「コーヒー飲むだろ」
ヤカンの火を止める。
「ブラックでいいか?」
「……ミルクと砂糖」
「ほい」
「お菓子食う?」
「……ダイエット中」
コーヒーを一口飲む。
少し、ぬるかった。
沈黙。
コタツの熱だけが、
ゆっくりと足元から広がっていく。
「なぁ、お前、今なにしてんの?」
「ん?看護師」
拓也は少し視線を逸らす。
「へぇ……うちの奥さんと同じだな」
唯が少し目を丸くする。
「え、ほんと?」
「あぁ」
「そんな偶然あるんだね」
小さく笑う。
しばらく二人とも黙った。
コーヒーから立ち上る湯気だけが、
二人の間をゆっくり漂う。
外では晩秋の風が窓を叩いていた。
コタツは暖かかった。




