第五話 霜柱
第二部 晩秋の答え合わせ
あれから三ヶ月。
晩秋の寒空。
唯からLINEが来た。
もうすぐ母親の命日だから、
「お墓そうじ」
くるよね?笑
拓也は短く返す。
行かない。
少し間が空いた。
そうなんだ。わかった。
続いて動画が送られてくる。
三ヶ月前の墓所。
雨。湿った吐息。
「あの時の、仕返し♡」
拓也は耐えきれず返信した。
わかったよ!いくよ!
日時またLINEしといて!
11月某日。
今朝は特別寒い。
車のフロントガラスが凍っている。
集合は9時。
落ち着かない。
8時30分に着いてしまう。
墓所には一面の霜柱。
ザク、ザク。
踏み潰して時間を潰す。
俺のリズムと違うザクザクが近づいてくる。
唯だった。
「おはよ!」
白い息が、朝の空気にふわりと溶ける。
「あ、拓也、おはよ。早いね?」
マフラーに半分顔を埋めた声は、思ったより柔らかかった。
「……ちょっと早く来てしまった」
霜柱がザクッと乾いた音を立てる。
「早く掃除終わらせて帰ろうぜ!」
「掃除がメインじゃないよ。ちゃんと線香もあげなきゃ」
線香に火をつける。
白檀の香りが漂う。
「なぁ、唯。おばさん、俺たちのこと、気づいてたよな?」
「どうだろ……わかんない……
もう、どっちでもいいんじゃない?」
返事を聞きながら、
拓也は墓石に手を添えた。
冷たい。
あの日と同じように。
二人で黙ったまま線香をあげる。
白い煙だけが、
晩秋の空へ細く伸びていった。
「ほら、拓也、帰ろ!」
「あぁ、帰ろうか」
墓所を出て、
駐車場へ向かう。
霜柱はもうほとんど残っていなかった。
「そういえば、拓也の家、ここから近かったよね?」
拓也は足を止める。
嫌な予感がした。




