18.楽しいダンジョン攻略!②
冒険者ギルドを出たロキとスイは、以前に書いてもらった地図を見ながら、レイラの家に向かった。
「え……まさか、この家……?」
着いた家は、かなりの豪邸だった。
大きな門の先には、色とりどりの花が咲いている庭が広がっており、建物は首が痛くなるほど高い。
どうやらレイラは、かなり良い貴族の娘らしい。
こんな良家の幼い娘をパーティに入れてダンジョンや依頼に連れ出すなんて、本当に大丈夫なのだろうかと心配になる。近いうちに、ちゃんと両親に挨拶に行こうと、ロキは思った。
立派な門に付いている呼び出しベルを鳴らす。
しばらく経つと、白いワンピース姿のレイラが現れた。
「ロキさん、スイさん、ごきげんよう。窓からお二人の姿が見えたので、慌ててまいりましたわ。本日はどうされましたか?」
「こんにちは、レイラさん。これから、Fランクのダンジョン攻略に行こうと思っているのですが、レイラさんも一緒にどうかなと思って」
「Fランクのダンジョンですか? ふふ、下位のダンジョンなんて、久しぶりですね。たまには初心に返るのもいいかもしれません。ぜひご一緒させてください」
Fランクのダンジョンと聞いても、レイラは嫌な顔一つせず、嬉しそうに微笑みながら、そう言った。
レイラの準備を待って、出発する。
基本的に変身して戦うため、ロキたちのパーティに防具はいらない。そのため、武器とアイテムだけあればよく、準備に時間はかからなかった。
ロキたちはラフな格好のまま、ダンジョンへ向かう。
一時間ほど歩いて、目的地の洞窟に着いた。
そこには、一人が入れるぐらいの大きさの穴がぽっかりと開いていた。入口前には『Fランク』と書かれたボロボロの看板がある。ここがFランクダンジョンであることの証明だ。
三人は魔法少女に変身した。
ロキを先頭に、ダンジョンの中へと入る。
ダンジョンは空間が捻じ曲げられているため、法則を無視した広さになっている。
特にBランク以上のダンジョンは、1階層につき1k㎡以上あるところがほとんどで、しかもそれが地下何十階にも続いていることが多い。
しかし、ロキたちが入ったダンジョンはそこまで広くなく、100㎡ほどしかなかった。それもたった1階層しかない。
「見たところ、モンスターもスライムやスケルトンしかいませんわね……」
穏やかな口調でそう言いながら、レイラはEランクのモンスターたちを切り殺していく。
スイはというと、顔を青くして、口元を抑えていた。
「……うう、同胞たちが瞬殺されている光景は、ちょっとだけ嫌な気分になるわね」
「大丈夫? つらいなら変身を解いて、目を閉じて僕の肩に乗っててもいいけど」
「平気よ。食糧がないときは、共食いしてたぐらいなんだから」
「……あっそう」
ロキは、心配して損をしたと思った。
そんなことを話しているうちに、レイラがあっという間に敵を殲滅した。
フロアの壁には、一つだけ扉がある。
一応警戒して、扉をゆっくりと開くと、扉の先に小さな宝箱が設置されていた。そしてそれを守るように、一体のモンスターがいる。
それは、Eランクモンスターのボブゴブリンだった。
「……まさか、ボブゴブリンがこのダンジョンのボス?」
ロキは呆気にとられながら、呟いた。
しかし、Fランクのダンジョンのボスとしては、適正なのかもしれない。
「あんなの、あたしでも倒せるわよ! えーい!」
スイがボブゴブリンに向かって、ローキックをすると、ボブゴブリンは断末魔をあげて消滅した。
「よっしゃ、ダンジョン攻略ね!」
このパーティでの、はじめてのダンジョン攻略だ。
ダンジョン内のボスを倒すと、大きさやランクにもよるが、早くて1時間前後でダンジョンが消滅するため、それまでに宝を回収する必要し、外に出る必要がある。
ロキは少しわくわくしながら、目の前の宝箱を開けた。
中には、銅貨が10枚入っていた。
それだけだ。
高価な金貨や宝石、珍しい武器などは見当たらない。
「しょ、しょぼすぎる……」
「Fランクのダンジョンなら、こんなものでしょう。しかしわたくしたちなら、Bランク以上でもよいかもしれませんね」
「そ、そうですね……。SSランクのレイラさんを、こんなところに付き合わせてしまって、すみませんでした……」
「あら、気を使わなくて大丈夫ですわ。同じパーティなのですから、のんびりと冒険を楽しみましょう」
レイラはおっとりとした口調でそう言った。
恐らくこの世界で類を見ない最強アタッカーだというのに、とても謙虚だ。
しかしさすがに申し訳ないので、次はBランク以上のダンジョンに行こうと、ロキは思った。
10枚の銅貨をカバンに入れて、ダンジョンを脱出する。
すぐにダンジョンの入口が消滅した。
時間の経過にかかわらず、核が倒され、攻略者が外に出るとダンジョンは消滅するしくみなのだ。
「ルーラたちは大丈夫かな……」
思い出して、つぶやいた。
ロキはルーラほど、元仲間に対して非情になれない。
冒険者なら、死と隣り合わせることは珍しいことではないが、生きて帰ってきてほしいとは思っていた。
「ルーラさんが、どうかされたのですか?」
「実はギルドからの依頼で、ここからすぐ近くのダンジョンを攻略しに行っているんです。たった数日でCランクになったダンジョンらしいので、大丈夫なのかなって……」
「それは一筋縄では行きませんわね……。少なくとも2ランクは上のダンジョンだと思って、間違いないでしょう」
レイラは神妙にそう言った。
経験豊富なレイラは、ルーラたちが行ったダンジョンの恐ろしさが分かるようだ。
「やばそうなダンジョンですよね。生還率も3%を切っているようなんです」
「ふふ、ロキさんは、ルーラさんたちが心配なのですね」
「えっ! その……まぁ、はい。良い思い出なんて全くないんですけど、さすがに元パーティメンバーですし……」
気恥ずかしくて、誤魔化すようにそう言った。
レイラは、口元をくすりと緩ませた。
「では、ここから近いみたいですし、様子を見にいきましょうか」
「え!? いいんですか?」
「えー行くのー!?」
驚いたようなロキの声と、心底嫌そうなスイの声が重なった。
レイラはまた、くすりと笑った。
「ロキさんったら、そのためにこのFランクダンジョンに来たんでしょう? まぁ、あのルーラさんのパーティなら、まず大丈夫だと思いますよ。野暮なことはしたくありませんし、少し覗きにいくだけにしましょう」
「そ、そうですね……ありがとうございます」
何もかもお見通しのレイラに、ロキの声が小さくなる。
「もー仕方ないわね! ロキ、ちゃんとあたしを守りなさいよ!」
しぶしぶスイも了承し、ロキはうなずいた。
そうして三人は、すぐ近くにある、ルーラたちが攻略中のCランクのダンジョンへと向かった。
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