第7話:【沈黙の断罪者と、見えない刃】
ピピたちの騒ぎ声も、その「寒気」によって一瞬で凍りついた。
ジャンク・エデンの広場を包んでいた熱気が引き、代わりに肌を刺すような静寂が降りる。
「……来るわ。今までの連中とは格が違う。」
イヴの表情がかつてないほど険しくなり、仁の前に一歩出た。
廃ビルの屋上から、ひらりと一枚の紙片が舞い落ちる。それは「修正」と書かれた古めかしい御札のようだった。
空間が歪み、そこから姿を現したのは、現代的な特殊部隊とは対極の姿をした男。
古風な着物の上に、基板のような紋様が刻まれた漆黒の甲冑を纏い、顔を狐の面で隠した侍――運営の最終防衛システム、**『パッチ奉行・ムラマサ』**だった。
「一撃」の恐怖
ムラマサは言葉を発しない。ただ、腰に差した抜身の刀をゆっくりと構えた。
「ピピ、援護だ! ライカ、いけるか!?」
「「任せてー!」」
『チャージ完了! 吹き飛ばしてやるわ!』
ピピが跳弾の嵐を形成し、ライカが極太の雷光を放つ。しかし、ムラマサは微動だにしない。
彼が刀を**「一寸」**だけ抜き、再び鞘に収めた瞬間――。
パリンッ!
「えっ……!?」
仁の目の前で、ピピの放った光弾も、ライカの電磁砲も、まるでガラス細工のように空中で砕け散った。
「ボクたちの攻撃が……消された!?」
『嘘でしょ!? あたしの電磁出力を「切断」したっていうの!?』
それだけではない。仁が装備していた『タクティカル・アーマー』の胸部に、深い切り傷が刻まれていた。
切られた感触さえない。音も、衝撃もない。ただ「切られた」という結果だけがそこに存在していた。
運営の「削除権限」
「あれはただの武器じゃないわ。……【概念切断】。運営が『不要』と定義したデータを、この世界の物理法則を無視して消去する刃よ」
イヴの声に、珍しく恐怖の色が混じる。
ムラマサが一歩、踏み出した。その足跡から、世界の床がボロボロと剥がれ落ちていく。
「……全部持っていようが、当たらなければ意味はない。そして、彼に切れないものはこの世界には存在しないわ。……仁、ここは私が食い止める。あなたは――」
「嫌だね。」
仁は震える手で、あえてすべての武器の安全装置を解除した。
「一人で逃げたって、どうせすぐに追いつかれる。それに……こいつらを見捨てて生き残っても、俺の『全部持ち』はただのガラクタだ」
仁の決意に呼応するように、スマホの画面が黄金色に輝き出す。
『――新武装の解放条件を達成。
対象:パッチ奉行の「切断データ」を解析……完了。
新カテゴリー:【因果逆転】をインストールします。』
「……またバグか? だったら、どこまでも付き合ってやるよ!」
ムラマサが再び刀に手をかけた。
世界のすべてを切り刻む「削除」の刃が放たれようとしたその時、仁の前に新たな影が立ち塞がった。
新キャラ予告:盾の乙女「アイリス」
「お待たせいたしました、マスター。……その不浄な刃、私がすべて『お受け』いたします。」
仁の左腕に装着されていた小さなエネルギーシールドが、爆発的な光を放ち、一人の優雅なドレス姿の女性へと変貌を遂げる。
究極の防御にして、切断不可能な絆――『アイリス』。
最強の「矛盾」対決が、今幕を開ける。




