第5話:【オーバーフローの終焉と、敗者の選択】
「馬鹿な……神剣(公式)が押し負けているだと……!?」
ゼクスの叫びが、ライブ配信を通じてバトルワールド全域に響き渡る。
神剣グラムは、運営がゼクスに与えた「一撃必殺」の権能。しかし、仁の放つ一撃は、ライカの電磁力、イヴの剣気、さらには無意識に発動したハンドガンとナイフの自動援護が重なり合った**「多重演算の暴力」**だった。
「……ライカ、最大出力だ!」
『了解! 仁、反動で腕が痺れても知らないわよ! ――「全武装連結」……ブチ抜けえええ!』
――轟音。
青白い雷光と紅い斬撃が混ざり合い、巨大な光柱となってゼクスと『鋼鉄の処刑人』を飲み込んだ。
運営の用意した処刑人が、悲鳴を上げる間もなくポリゴン状の塵となって霧散していく。
【勝者:仁】
爆煙が晴れると、そこにはボロボロになったゼクスが膝をついていた。
手元に残った神剣は刀身の半分を失い、システムエラーを告げる赤いエフェクトが虚しく点滅している。
「……信じられん。公式が、ただのバグに負けるなんて……」
仁は銃口を下げ、肩で息をしながらゼクスに近づいた。
トドメを刺すのか。周囲で見守っていたプレイヤーたちが固唾を呑む。
「……あんた、これ、ゲームだと思ってんだろ」
「……何?」
「俺にはもう、そうは思えない。この武器たちの声も、痛みも、全部本物だ。……あんたが『運営の犬』として戦うなら勝手にすればいい。でも、こいつらをただのデータとして扱うなら……俺は何度でもあんたを叩き斬る」
仁はそう告げると、背を向けて歩き出した。
その背中には、実体化したライカがべったりと抱きつき、横にはイヴが当然のような顔で寄り添っている。
「……フン。暑苦しいわね、仁」
『ちょっと! 仁、さっきの「愛」の込め方、合格点よ!』
ゼクスの驚愕と決意
呆然と立ち尽くすゼクスのスマホに、運営からメッセージが届く。
【通知:ゼクス様。任務失敗。ペナルティとして、全装備を没収し、アカウントを初期化します。】
「……はは、用済みか」
公式チートを失い、ただの「レベル1」に落とされようとするゼクス。
だが、その時。彼の目の前に、一本のハンドガンが放り投げられた。
仁が「全部持ち」の中から、あえて一つ選んで置いていった初期装備のスペアだ。
「……バグ野郎に、情けをかけられるとはな」
ゼクスは笑った。屈辱、驚愕、そして――運営への怒り。
彼はそのハンドガンを拾い上げると、配信画面に向かって中指を立てた。
「おい、運営。……俺は、今のを『辞表』と受け取ったぞ。これからは、俺自身の足でこのクソゲーを攻略してやる」
こうして、かつての「最強の番犬」は、運営に牙を剥く**孤独なライバル(あるいは協力者)**へと堕ち、そして昇格した。
『――警告。対象「仁」の脅威レベルを【S】へ引き上げ。
特殊部隊「パッチ・バスターズ」の派遣準備を開始。』
仁の知らないところで、世界はさらに彼を排除しようと動き出す。
しかし、仁のスマホ画面には、新たな通知が踊っていた。
【新武装解放:???】
※条件達成により、新たな武器娘が顕現されます。
「……次は、誰が出てくるんだ?」
仁の「全部持ち」伝説は、まだ始まったばかりだった。




