【規格外の初陣】
「ガ、ガアアアッ!」
スカベンジャーが空中で身を翻し、鋭い爪を仁の喉元へ突き出す。
だが、仁の反応は本人の意識を超えていた。
『近接防御モード、自動起動。』
左腕の籠手から、目も眩むようなプラズマ状のシールドが展開される。火花を散らして爪を弾き飛ばすと同時に、仁は無意識に右手のハンドガンの引き金を絞った。
――ドォォン!
放たれたのはただの弾丸ではなかった。全武装解放の補正を受けた「魔導強化弾」が、狼の肩口を木っ端微塵に吹き飛ばす。
「いける……これなら戦える!」
仁は一歩踏み出し、背中の**『対魔大太刀』**を抜き放った。
本来なら数人がかりで運ぶような巨剣が、強化スーツのパワーアシストによって羽毛のように軽い。
「はああああっ!」
一閃。
大気が悲鳴を上げ、スカベンジャーは一刀のもとに両断された。
【予期せぬ副反応】
しかし、あまりにも過剰な装備には、相応の「異常」が伴っていた。
『――警告。全武装の同時展開により、システム負荷が限界値を突破。』
スマホの画面が激しくノイズを走らせる。
スカベンジャーが霧となって消滅した直後、仁の身体を異変が襲った。
「ぐっ……熱い……!? なんだ、これ……!」
全身のアーマーから、排熱が追いつかないほどの蒸気が噴き出す。
さらに、倒した敵から立ち昇る「黒いモヤ」が、仁のスマホへと吸い込まれていく。
『経験値を全武装へ均等配分……。
――待機状態。全武装の「進化」を開始します。』
「進化……? 待て、まだ何も聞いてないぞ!」
ガシャガシャと音を立て、装備が勝手に形を変え始める。
ハンドガンはより巨大な魔銃へ、大剣は脈動する生体金属を纏い、背後のレールキャノンはさらに凶悪な砲口へと変貌を遂げていく。
『試練クリア。マスターランク:測定不能。』
静寂を取り戻した廃墟の街に、スマホの無機質な声だけが響く。
「……これ、帰れるのか?」
仁が呆然と呟いたその時。
遠くのビル群から、いくつもの赤い眼が自分を注視していることに気づいた。
一つ、二つ……ではない。
この「バトルワールド」に放り込まれた他のプレイヤーたちが、突如として現れた「異常な光を放つ兵器の山」――すなわち仁を目撃してしまったのだ。
仁のスマホに、一通の通知が届く。
【緊急ミッション:逃走、または殲滅】
現在、あなたの現在地は全プレイヤーに「レアエネミー」として公開されています。
「……はぁ!? 俺が、敵扱いかよ!?」
最強の装備を手に入れた瞬間、仁は世界中のターゲットになってしまった。




