ペットと家畜を両立するな!野生は論外
邪念を一晩中唱えていたアラクネとモーガンは疲れて寝てしまった。今もラマンは吸血鬼の頭の上…
朝が来る。異世界にラマンが来て5日目となるだろうか?
日の光りに弱い吸血鬼は朝になると態度が変わる。
「是非、このまま座っていてくださいね♪」
ラマンは街や自作のダムに糸に貼り付けにされている女達をのんびり眺めていた。
「石の上にも三年、吸血鬼の上にも三日でもするか……」
温もりなど伝わるどころか冷えそうな状況である。
ラマンは動かなくても魔法で動かすため自分の口に合う味を求めて料理をする。
その材料のほとんどが未知であったがため調理方法が全く判らない、だがラマンは前世の知恵と勘で巧みに仕上げる。全て失敗する。ラマンの口に合う味は見つからない。
残り全てを周囲の口に放り込むと、美味しそうに食べるのである。ラマンは自分という存在は食事への欲求を封じられているのではないか?必要ないにせよ全て不味いと感じるのは何故なのか?食についての知識は少し身に付けたつもりであったが、それに該当するのはあくまで人間だけとなる。この世界での楽しみ方が未だに見つからないラマンだった。
「存在そのものを罪とされたのなら変える努力をしよう…」
ラマンが望んでもいないのに周囲は彼を求めてしまう。恥じらいを消し、全てをさらけ出し、それでも動じない彼の心に惹かれる。
ラマンは必ず良し悪しを差し引いた良し悪しを決める。そして周囲からの評価など全く気にしない。それを真意と思わないからだ。どんなに好かれようが嫌われようが、周囲はラマンの全てを知らないで判断するからだ。ラマンは全てを理解しない限り、その良し悪しを決断しない。彼にとっての思いやりなどとは基本的に薄っぺらいものだと認識している。そのほとんどは彼が求めるイデアには、程遠いからだ。
「あの…よかったら名前付けて欲しいです」
「吸血鬼に名前か……俺はペットは飼わん」
「生け贄や奴隷に名前はあるのに吸血鬼じゃダメですか?」
「こだわる必要などない、俺は欲しくて付けられたわけじゃないからな…」
「でも私は欲しいです」
「もはや呪縛のようなものだ……真意とは言葉じゃ表現できない」
「相手を呪縛するのは楽しいと思いますよ?」
「俺はそう思わない……」
「不思議な方ですね」
「呪縛されていた不幸を基準にしているから、そんな考えが生まれるんだ。そんなもの本当はない……」
「ふーん……」
理解し難い彼の理想は全てを超越しても来ないだろう…
弱さを知っているから…
強さの裏を知っているから…
矛盾を知っているから…
無とは何も無い以外に、表現できないもあるから…
彼の無気力とは理解し難い感情表現と言えるから…
そんな彼に吸血鬼も惹かれる。吸血鬼にとって彼が始まりであるからこそ理解しようとする。その努力は無駄にならないだろう。だが必ず気づくはず、本当に必要なことが何処にあるのか。気づくことがなくても偽りで作るだろう。必要でないことくらい理解するだろう。だが見つからない恥や過去への後悔は嘘を真実だと無理やり思わせるもの。そうであろうと勝手に思い込むもの。故に哀れで可哀想だが、それを可愛いと周囲が偽善となることも多い。ラマンは考え続ける。動く前に真意を見極めてから行動する。
それを臆病だと指摘する者だっているだろう、早く行動しなければ評価しない者だっているだろう、だがラマンにそんなもの関係なく必要としない。
「俺が求めるのは全てを超越し全てを破壊した先にある。破壊して直ぐではない、ずーっと……ずーっと先の果てなく続く先にある」
「よくわかんない」
「理解してほしいわけじゃない、ただ理解したつもりでいたのなら俺はお前を消していた」
「そうなんだ」
相変わらず不味い料理しかできないので夜になったら材料を探索することにしたラマンだった。




