探索で余計な物が混ざるのも普通
夜となり辺りは暗くなる。
ラマンは材料探索をするために道具を作る。
「素手だと厳しい、魔法で集めるしかない」
イメージする。アラクネくらいのサイズなら余裕で運べそうな台車を元素から作成する。
手押し車になったが、それもまた味があって良いんじゃないか?とも思いながら最初にいた街へ向かった。
もちろん吸血鬼なんぞ土の中だ。知ったことか、この世界の楽しみを最低限は見つけておきたいものだ。
最初にいた街にラマンは到着した。正確に言うとラマンが拉致されていた場所でもある。相変わらず人気の無い街だった。ラマンが蹴飛ばしたドアが残っている。あれから何日も経っていながらも残っているのだ。建物が並んでいるのにも関わらず生活感を一切感じさせない街にラマンが来たのも理由がある。
「あの女は美味しいだろうか?数日寝かせているから熟して柔らかいはずだ」
入り口の近くに台車を置き部屋を覗く。何か群がっていないか期待していたラマンだったか、何もなかった。そこにあるのは肉の塊となった女の遺体のみである。
その部屋からは予想外に甘い香りで包まれていた。腐敗臭となるはずであろう遺体のある場所がラマンには良い匂いとなっている。
「すぅ~………うん♪これだ、これこそ俺の好みの香りだ匂いだスパイスだ!」
女の遺体を固まった血液から剥ぎ、両腕で抱えて部屋を出る。その変わりない美しい女の顔に、つい目がいく。見た目、匂い、最後に味が良ければラマンはこの女の種族を特定し家畜とするだろう。
台車に遺体を乗せて運ぼうとした時だった。
何かが背中に当たる。それはラマンの背を貫きラマンの腹から出てきた。
「ぐっ……ぬぐぅ!?あ、痛くない……なんだ」
「チッ…………」
小さな舌打ちが聞こえた。
刺さったものを引き抜き素早く後退するのが音で伝わる。
ラマンは何者かに不意討ちを仕掛けられたのだ。
振り返ると、そこには何処かで見たような雰囲気の顔と間違いなくラマンが渡していたはずの剣を持っていた。
「その剣、何処から持ってきた?」
「魔物に教えることなどない……魔物は皆殺しだ」
「知り合いに似た顔だが気のせいかな?」
「死ね……」
問答無用で攻めてきた。ラマンは特に反応を見せず攻撃を受ける。足を斬られ、腕を斬られ、喉元を刺されたりと相手は凄まじい剣術でラマンの肉体を切り刻む。
「どうした?終わりなのか?」
「効いてないっ………!?」
剣で肉体を斬られてもラマンの肉体は直ぐに斬られた部分が繋がる。
ラマンは、ゆっくりと相手に近づき剣と顔を交互に見ていた。
「な、なんだ!?」
「……………………。」
相手は動揺していた。勝てないと分かっても逃げようとしていなかった。
「殺すなら、好きにしろ……煮るなり焼くなり」
「ん~?本当に似ているな、あの吸血鬼に」
ラマンはあの時のように顔を撫で回し引っ張ったり押したりする。
「何しやがる!あぁ…そうか、辱しめをこれでもかと受けさせ楽しみながら殺すんだな……」
「諦め早いし変な妄想するし、お前わざとか?」
「そ、そんなわけないだろ!?私は剣士だ。いつでも全力で魔物の相手をしている剣士なんだぞ!」
その表情に明らかな焦りと恥ずかしさ、そして何かしら期待のようなものを感じたラマンは、無言で台車に戻る。
「あ、あっ!?ちょっと待って……ここからが本番でしょ?」
「すまないが変な意味で聞こえる。俺は材料を探しているんだ。遊びになど付き合ってられない……」
ラマンは考えた。
似ている部分が、あの吸血鬼以外の部分もある。
答えは湖に戻れば直ぐだと…
台車を押して他の建物に行く。
少しでも多くの材料をなるべく確保して早くこの女から離れよう。
ドアを開ける。二階建てのようだった。奥に階段が見えた。
「なんで着いてくる……失せろ」
「私、美味しいかもしれませんよ?」
「………………………。」
無視して部屋にある物を探した。
タンスに壺など何かの風習を感じさせる。木の実や葉っぱ、何かの塊に粉のような何かが付いたものなど色々ある。変わった外見と香りを確かめながら一つずつ持ち去る。
階段を登り二階を覗くとベッドがあった。そこに男三人と女一人、ベッドの数が5個に対して一人いない。
「何だかドキドキしますね…」
「黙ってろ」
男三人の内、一人は髭の濃いオッサンで残り二人は青年だろうか。女はその妹に感じる。一人いないのは母親だろうか?あの原始的奴隷の実験にでも使われたのだろう。日記のようなものがある。
『5/31 あの怪しいお店から毎晩聞こえていた叫び声が聞こえなくなり皆、よく眠れる。でもママは帰ってこない、たぶんもういない。それでいい、私は耐えるからママは寝ていてね。いつか迎えに行くから…』
「…………………。」
少女の顔が酷く痣があることに気づいた。日記から察する。
あの髭の濃いオッサンは父親で家庭内暴力といったところだろう。青年二人からも痣が見つかる。たぶん身体全体に痣があるはずだ。だが俺が何かするわけでもない、俺は材料を探索しているだけだ。日記にあるように皆、よく眠れている。とても都合が良い…
「ん……あれぇ………」
少女が起きた。だが俺は気にしないで探索する。叫ばれようが相手はただの人間だ。今さら誰が俺を止められるだろうか?
だがラマンの予想とは全く違い少女は叫ばない。その表情は笑顔だった。
「皆、死んじゃえ……」
「………………………。」
「怖いですねあの女の子、笑顔で物騒なこと言ってますよ?」
「ベッドの下も調べるか…」
ラマンは不気味だから何も反応しない訳ではない、むしろその気持ちを理解しているからこそ反応しない。
髭の濃いオッサンのベッドの下から妙な鈍器が出てきた。
「ん?何だ………食べれそうにないな」
鈍器を手にした時にラマンの肩に少女が乗った。その表情は今にもどこか遠くへ行きそうな優しい笑顔だった。
「………………………。」
「これ、どういう状況…?」
「………………………。」
互いに何も言わない、無言であるが伝わる。最初からラマンは理解している。だが何もするつもりなどなかった。
「悪魔さん……皆、殺しちゃってよ」
「俺は忙しい」
「じゃあ私を何処か連れていって」
「…………………。」
ラマンは無言で立ち去った。それに二人は着いてくる。
台車に残りの材料を入れて湖を目指す。
「連れるつもりなどないが着いてくるのは勝手だ……」
少女の顔は涙を流し優しい笑顔だった。




