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106話 神託

短いです。

≪……ぃ………こえ…………? ……よし! これでどうじゃ!≫

 夜、ユウトは気疲れを感じながら眠る準備をしていると、突如頭に聞き覚えのある声が響いてきた。

(うわ、この声……)

≪うわっとはなんじゃ! うわっとは! ようやっと繋がったと思えばその反応! しまいには泣くぞ!!≫

 その声は直接頭に響くので耳を塞ぐことも出来ず、諦めてベッドに座り直すユウト。声の主はユウト達がこの世界に来た時に少し話した神のものだった。

「えー……と、お久しぶりです?」

≪本当にな! 姉弟揃って無意識に我の声を拒否するし! こっちはせっかく神託が下ろしやすいように【勇者の卵】の称号をつけたというに!≫

 うわ、あの称号こいつの仕業かよ、と頭によぎるユウト。

≪何故じゃ!? 普通勇者とか心躍らんのか!? 過去にその称号を与えた落とし子は非常に喜んでおったぞ!?≫

「別にいらない。というか、何故わざわざ苦労してまで神託を下ろそうと?」

≪……そうじゃった……こやつらはこういう奴じゃった…………。んん。では本題に入るとする。この神託はいわゆる『追加報酬』というやつじゃ。普通はそんなもの与えぬのじゃが、おぬしらは善行により我の信者を増やしてくれたり、我の信者である聖職者達に知恵を与えたりしてくれたようじゃし、特別サービスじゃ。多少の願いならば叶えてやらんでもないぞ?≫

 ここでふと考える。その程度のことでわざわざ『追加報酬』を貰えるものなのだろうか、と。

(俺達がやったこと位なら他にもたくさん条件にあてはまる人がいるだろうし、人目線なら規模が大きかったかもしれないが、この世界として見れば影響力はかなり限定的じゃないか? 落とし子特典ということにしても何か引っかかる)

「ということで、勿論、答えていただけますよね?」

≪……まあ別にいいが。いいか、まず、神にとって信仰心とはそのまま力なのじゃ。つまり信者を増やすことは、力を強めることに通ずる。さらに言えば、敬虔な信者というのはポイントが高い。おぬしの姉は「神の思し召し」「感謝するなら神へ」だのなんだのと適当に言っておるが、それが良い方向に働いておる。さらにおぬしの姉は「シャルム教の聖女(のような存在)」じゃと思われておるから、おぬしの姉を信仰している者の信仰心も我の力になっているというわけじゃ。ポーションの質向上についてもシャルム教の求心力の一助となっておる。本来ならば無かったはずの、おぬしらの功績によって集まった信仰の一部を還元してやろうという神の気まぐれじゃ≫

「つまり姉さんが違う神を信仰したら……」

≪他の神の力が強まるじゃろうな。じゃが、我にすれば些末な事じゃ。邪神を崇める等でなければどの神の力が増そうがさして問題はない。最高神の地位に拘っているわけでもないしの≫

「(まあ、姉さんが神を信仰する姿が浮かばないけど。というか最高神だったのか……)次の質問ですが、【英雄の卵】や【聖女の卵】の称号も貴方が?」

≪いや、そちらはおぬしらの行動の結果じゃ。条件を満たせば勝手につくようになっている。というか、おぬしの姉が我の神託を受け取っておけば、おぬしに新たに称号を与えずとも済んだのじゃが……。【英雄の卵】に神託スキルはないしの≫

「ちなみに消すことは?」

≪一度与えた称号を消すことは出来ぬ。というか、そんなに嫌なのか?≫

「あまりチェックはしてませんけど、精神衛生上よろしくないので。あ、それと、勇者や聖女の卵だからといって、別段、行動を指示されたり制限されたりはないですよね?」

≪そういうことを言う神もおらんとは言わんが、少なくとも我は強制はせぬ。第一、おぬしら我に言われたからとて行動などせんだろうに≫

「まあ……状況次第、ですかね?」

 降りかかる火の粉を払うくらいはするが、対岸の火事に出向いてまで首を突っ込む気はない。

 神は基本的に下界の事は不干渉であり、出来る事と言えば『神託を授ける』か『神罰を下す』の二択だそうだ。そして、ユウトに【神託】スキルが付いていることも告げられた。

「スキルを消すことは……」

 称号が消せないのは諦めるがスキルはどうだろうかと一応聞いてみる。

≪おぬしは本当に不敬じゃな! 信者ならば泣いて喜ぶありがたーいスキルじゃからなソレ!? ……ハァ。質問の答えじゃが、神託スキルを消そうとすれば罪を犯す必要がある。そうなると街の出入りが出来なくなるしその方が面倒じゃと思うがのぅ≫

「じゃあこのままでいいか」

 その後、いくらか話し、報酬としてステータス偽装のスキルを付けてもらった。調合レシピは要らないのか聞かれたが、ユウトは今後の楽しみにする予定なので既存のレシピは断り、すでに失われた調合レシピのヒントだけもらうことにした。他にも、トラブルに巻き込まれないように、そして現在のトラブル(エルフの少女)もどうにかならないかと願ったのだが、それは無理とのことでばっさり却下される。

≪追加報酬は以上じゃ。姉には我の神託を拒否せんようにちゃんと伝えるようにの。あと、出来れば成功率を高めるためにシャルム教の教会で祈りを捧げるようにと伝えよ。そこで要望を聞くとな! あ、そうじゃ。北の迷宮から近々魔物が氾濫するかもしれぬから気を付けよ。ではさらばじゃ!≫

「え」

 最後の最後に重要そうなお告げを残して会話は終了された。

(北というとオビギュの迷宮か? というかサラッと魔物が氾濫とか言わないでほしいんだけど。ただでさえ、こっちはいま面倒事を抱えてるってのに)

 ダンジョンの出入りはギルドが管理しているのでこっそり行くことも出来ないし、すでに街の城門が閉じていて明日の朝まで開かない。冒険者ギルドに報告するにも「神様が言っていた」など言えるはずがない。

 今日はもうどうしようもないので、防犯システム(魔法陣)のチェックだけしてユウトは寝ることにした。


今年最後の投稿です。皆様良い年をお迎えください。

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