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第九環 水を求めて

しばらく走ると、目的地に着いた。

ナビが言った通りなのか、そこには川が流れていた。

「水は・・・あったな」

「デショー!」

「問題はこの水が緑魔力の水かどうかだ」

「計測してみよう」

計測器で水の魔力色を調べる。

「・・・たしかに緑魔力の水だな」

「デショデショー!」

「ああ、疑って悪かったよ」

心なしかルンルンしているナビの声に、俺もつられて少し笑う。

「じゃあ汲んで帰るか」

水を汲み鞄に入れる。

俺のこの大きな鞄も魔力鞄ではある。

しかし初期ごろにでたものなので、大きさはあるが、性能や容量は現行の、比較的安価なものに比べても悪い。

「やっぱり買い替え時かな・・・」

そう言いつつ、水を入るだけ鞄に詰めて、小屋に帰ろうと腰を上げる。

「あれ?人だ!お客さん!?」

女の子の声・・・だろうか?

声のした方に目を向けると、大きな荷車を引いた・・・馬がいた。

「・・・馬?」

「違います!ここです!私!ここにいます!」

馬の後ろから少し小柄な女性が出てきた。

「お客さんですか!?私行商人してます!よかったら見てってください!」

行商人は荷車の方を指さしながら、俺の服の裾を掴む。

・・・結構力強いな?

「何を売ってるんだ?」

「ふっふっふー!今日の目玉はこれです!」

ジャジャーン!と言いながら、行商人が見せてきたのは、何かの卵だった。

「これはこの近くの牧場で牛同士が環結(かんけつ)してできた、牛の卵です!どうです?珍しいでしょう!」

「環結って・・・環(わ)を結んだのか!?」

「そうです!最近は家畜も環結させたりするみたいですよ!」

環(わ)を結ぶ・・・略して環結(かんけつ)といわれる。

それは魔力が発見される前・・・いや今もする人は少なくなったが、結婚に近いものだ。

結婚との違いは、書類等で誓いを立てるのではなく、互いの魔力同士を結ぶことだ。

国での管理を円滑にするため、今では人はムスビ環で環結を行う。

そして環結すると、卵ができることもある。

土地との魔力や、互いの魔力色などの相性もあって、必ず卵ができるわけではない・・・とされている。

今や魔力の発見で人もなぜか野生生物も、環結を行い、皆卵から生まれるのが主流になった。

「牛の卵か・・・」

「そうです!どうですか?今ならお安くしますよぉ?」

「・・・いや、今はいいかな」

俺の返事を聞いて、行商人はガーンと肩を落としながら卵をしまった。

・・・俺も今は小さな菜園だけだが、いつか牧場と胸を張って言えるように、牛も飼いたいものだ、と心の端で思った。

そんな俺を行商人はチラッと見つつ、ゴソゴソと他の商品を出してきた。

「お客さん・・・これならどうですか!」

「こっ・・・これは!?」

行商人が出してきたのは、なんと魔力鞄だった。

「こちら!最新型ではございませんが!性能は同じくらい良いものですよぉー?」

「お客さんが今欲しいと思っているものではないですかぁ?」

「通常1万kanのところ、なんと初回限定価格!8千kanでのご紹介とさせていただきます!」

「おっ・・・おぉー」

つい声を出してしまった。

いや、今の俺にはあまりにも魅力的だ。

「お客さん、服装的にどこかの牧場の方かと思いましたが・・・」

「どうやら街で聞いた、噂の牧場の方・・・みたいですね?」

「噂?」

「そうです!科学者の方が山で牧場を始めた、と聞きましたよ!」

どうやら野菜を売りに出したことで、それなりに俺の噂も広まったようだ。

「なので!お客さんには!今の大きな初期型よりも!こちらのおすすめ商品をお使いいただきたいなーと!思うのですが!?」

さあ買えとキラキラした目で、行商人が俺を見ている。

その熱意と・・・まあこれも何かの縁かと思い、買うことを決めた。

「わー!ありがとうございますー!」

「お客さん!いい買い物をしましたよぉー!」

「・・・こっちこそ、ありがとう」

お金を渡し、鞄を受け取って小屋へ帰ろうとする。

行商人のありがとうございましたという声を、背に受けながら、俺はもう会うこともないかな・・・と思った。

・・・が、これからフィールドワークに出ると度々出会うことになるとは、この時の俺はまだ知らない。

…

無事、緑魔力の水を小屋に持ち帰ることができた。

早速俺は菜園の準備を始める。

まずは、新しく拡張した菜園と、既存の菜園をビニールを広げた柵で分ける。

片方の水が、もう片方にかからないようにするためだ。

それから、前の種を植え、魔力測定をした後、なるべく低い位置から緑魔力の水をやる。

その後また魔力測定をする。

「・・・ん?」

「これは・・・おかしいぞ?普通じゃない・・・」

データが送信されたことを確認し、ハカリに連絡を取る。

通信機がピッと音をたてる。

繋がった合図だ。

「ハカリ!今送ったデータ見てるか!?」

「今確認するね」

「これは・・・うん、やっぱりその土地は変だね」

「ああ、普通なら季節の魔力色と違う魔力色の水を撒いたところで、数値は変わらない」

「だがこれは、ほんの少しだが緑魔力濃度と量が増えている」

一般的には季節の魔力色と違う魔力色の水が、作物に使用されることはある。

だが収穫まで違う魔力色の水をかけ続けて、そこでようやく『若干の数値上昇がみられることがある』くらいだ。

「1回だけで数値が変わるなんて・・・」

「この土地が不安定な上、魔力色を多種類含むからか・・・?」

「うーん・・・いや、憶測はやめよう、まだ何も確定してない」

この土地に何かあるという可能性は濃厚だが、何がどうなっているのかはさっぱりだ。

俺もハカリも頭を悩ませるが、結論はでない。

「俺はこれからも、ここで研究して調べていく」

「ハカリも色々よろしく頼むぞ」

「もちろん、僕もこの謎を知りたいからね」

ハカリと少しこれからのことを話し、通信を切る。

この土地の謎が、また深まってしまった日だった・・・。


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