第八環 文明の風
菜園を広げる範囲を決め、俺はその場でダイクさんを待っていた。
しばらくすると、ダイクさんの分かり易い足音が聞こえた。
「おーい!エアコン取り付けて、今試運転してるぞー!そっちは決まったかー!」
ダイクさんの方を見ると、こっちに向けてブンブンと大きく手を振っていた。
「ああ、この辺にしようかと思うんだけど・・・」
「この線のとこだな!よし来た!待ってろよぉ」
ダイクさんは魔力鞄から道具を取り出した。
「そういやぁよ、ジンは何でまだ初期型の魔力鞄使ってんだぁ?」
「あんまり入らねぇから不便じゃねぇか?」
「あー、今のままでも、あまり困ってないからな」
「でもよぉ、またフィールドワークっちゅうのに行くんなら、たくさん入った方が良くないか?」
・・・たしかに、そうだな、と俺も納得してしまった。
これから必要なものの採集にも行きたいし、今より性能がいいものにするべきか・・・。
「・・・ダイクさんの言う通りかもな・・・」
「だろぉ?道具にはそこそここだわる方がいいぞ!そこそこでいいからな!」
言われてみれば、ダイクさんの魔力鞄も最新最上級のものではないが、十分に役に立っている。
だからこそ、ダイクさんも『そこそこ』と言っているんだろう。
「わかった。余裕と機会があれば、また買い換えてみるよ」
「おお!そうしろそうしろ!・・・よし!できたぞぉ!」
・・・ダイクさんは口も動くが、手もめちゃくちゃ動いていた。
俺が線を引いた通りに、菜園が拡張されていた。
「普通のレンガがなくてよぉ!ちょいとオシャレになっちまった!」
菜園の枠のレンガには、これまたちょっと可愛い草の模様が入っていた。
たしかに、おしゃれ菜園のようだ。
「ありがとう、ダイクさん」
「じゃあこれ全部でいくらかな?」
と言いながら、俺は財布を取り出す。
「そうだな・・・まあざっと13万kanってとこだな!」
「そんなに安くていいのか?」
「ん?俺は別に安くはしてないぞぉ!」
「あぁ!最近は魔力機械も値が下がったんだ!技術の進歩ってやつだろうな!ガハハハ!」
魔力科学の発達により、電化製品は魔力を電力に変換して動くのが一般的になってきた。
エネルギー効率も魔力の方が遥かに高い。
最初ごろはたしかに高かった。
しかし俺がミレル環で働くようになってからでも、だいぶ価格は落ち着いていた。
「いろんなものが進歩してるな・・・」
「そうだなぁ!研究ばっかで籠っちまうと、色々わからなくなっちまうよなぁ!」
「俺も仕事が立て込んでた時は、外の様子もわからなくてなぁ!」
「魔力で動くもんがこんなに増えててびっくりだったぞ!」
ガハハハ!とダイクさんは笑った。
ダイクさんにもそういう時期があったのか・・・。
そうぼんやり思いながら、俺はダイクさんにお金を渡した。
「おう!たしかにもらったぞ!」
「じゃあ俺は帰る!またな!ジン!」
「ああ、ありがとうダイクさん!」
ヒョイと手を挙げながら、ダイクさんは街に帰っていった。
…
ダイクさんを見送り、俺は菜園の方へ戻る。
「たしかこの辺に・・・あった!」
緑の季節の種を、俺は少し残していたのだ。
これを使い、新しく拡張した部分で、別の研究を始めようと思ったが・・・。
「緑魔力の水が欲しいな・・・」
その時、俺はハカリから、ナビ付きの地図をもらったことを思い出した。
小屋にしまってあるな、と思い小屋のドアを開ける。
「!!!涼しい!!!」
なんということだろう!
外とは全く違う!涼しい風が俺を包み込む!
これが文明の風!エアコン!
「なんて涼しいんだ!これ魔力エアコンか!」
「ダイクさん・・・ありがとう」
あまりの涼しさに感動しながらも、俺は地図を探した。
「あった・・・やっぱりまあまあでかいな?」
ナビ付き地図は俺も初めてだな、と思いながら地図を開いてみる・・・と
「アナタ 地図ヲ 開キマシタネ?」
「!?」
地図が・・・しゃべった。
ナビってそういうことか!?
「ハジメマシテ! ワタシ アナタノ ナビシマス!」
「今日ハ ドコヘ オデカケデスカ?」
まだ少し驚きながらも、ナビに話しかけてみる。
「あぁ・・・緑魔力の水があるところに行きたいんだが」
「どこにあるか、わかるか?」
「アーチョットマッテ クダサイネ・・・」
「ア! ココデース!」
ナビはそう言って地図に矢印を出した。
・・・これも魔力地図だったのか。
「ココニ アルハズ デスヨ!」
「はず・・・なんだな」
「まあそんなに遠くないし、信じて行ってみるか」
俺は魔力靴を履き、ナビが示す場所を目指すことにした。




