第七環 赤の季節
あれから、また少し日が経って・・・赤の季節になった。
空気中の魔力色が、緑魔力から赤魔力に変わる季節。
そして太陽が主役の季節だ。
「・・・暑い、暑すぎる・・・」
菜園の土を調整しながら、俺は次の種を植える準備をする。
今回は緑の季節とは違う、赤の季節に適した野菜を植えるつもりだ。
機材も事前にチェック済みだ。
あとはボタンを押せば、録画開始して、データをハカリに自動送信できるようになっている。
「ハァ・・・ハァ・・・っジー――ン!」
「!・・・ハカリ!?」
ごそごそと菜園をいじっていると、ハカリが突然来た。
「どうした?何かあったのか?」
「これ・・・ハァハァ・・・次これ・・・ハァ」
「植えて・・・ハァ・・・欲しくて、ハァ・・・」
「いやまあ、ありがとうだが、ちょっと水飲め!」
ハカリに水を手渡す。
ありがとうと言いながら、ハカリはそれを一気に飲み干した。
「プハァ!おいしい!ありがとうジン!」
「まったく、いつ登っても、この山は僕にはキツイよ・・・」
ゲッソリしながらハカリが言う。
まあデスクワークばかりのハカリには、たしかにキツイだろうな、と思った。
そして俺はハカリから手渡された種を見る。
「これは・・・何の種だ?」
「きゅうり!いっぱいできて美味しいよ!」
ニコーっと笑いながらハカリが言う。
・・・こいつ、きゅうりが好きなのか。
「わかった。収穫できたら多めに持っていくよ」
「ホント!?ありがとう!楽しみだなー!」
ニッコニコのハカリ。
俺はハカリがもう、きゅうりを食べたいのを察した。
ハカリ分かり易いな、と思わず笑いそうになりながら、街に戻るハカリを見送った。
それから菜園に戻り、カメラのボタンを押した。
きゅうりの他にも準備していた種を植え、水を撒いた。
「・・・暑い・・・」
ここは山だとはいえ、さすがに暑い!
最近は毎日寝るのも、寝苦しくなってきた。
これはまた何とかしなければならない。
それに他にも欲しいものがある。
「街に・・・行くか・・・」
俺は魔力靴を履いて、街に駆け出していった。
…
街へ着くと、イチバ環の隣に見慣れない建物があった。
「ほんとにツクレル環だったんだな」
好奇心と、もしかして、という気持ちで、中に入ってみる。
扉が開くと、見覚えのある姿が見えた。
「おぉ?ジンじゃねーか!久しぶりだなぁ!元気にしてるか?」
「そうだ!聞いてるぞぉ!頑張ってるみたいだなぁガハハハハ!」
「やっぱり!ダイクさんここに就いたんだな」
おうよ!と笑うダイクさんがそこにいた。
「なんだぁ?なんかまた必要なもんでもできたかー?」
「ああ、そうだ、エアコンってここにあったりする?」
「おぉ!そうか小屋には着けてなかったな!あるぞぉ!今からつけに行くか!」
ありがたいが、また話が早すぎるくらい早い。
「おぉそうだ、菜園も増やすか?」
「暖炉はいるか?」
「なんなら井戸も掘っちまうか?」
「いやいや、菜園以外は今はいらないかな」
次々と矢継ぎ早に提案するダイクさんに圧倒されつつ、俺はもう1つ欲しいものを言う。
「ダイクさん、レンジってあるか?」
「あぁチンするやつか?あるぞぉ!ほれどれにする?ああ向こうで決めろ!持ってってやる!」
そう言いながら、すでにズカズカと小屋に向かって歩き出すダイクさんを、俺は慌てて追いかけた。
…
ダイクさんと共に小屋まで戻ってきた。
ダイクさんは、今回はしっかりと持ってきた魔力鞄から、色違いのレンジを何点か取り出した。
「性能はほぼ変わらねぇ!値段も変わらん!どれにするんだ?」
ダイクさんは俺にズイッとレンジを差し出してくる。
「えーっと、じゃあ、これで」
「黒だな!わかった!ここに置いとくぞ!」
「じゃあ次はエアコンだな!うーんそうだな・・・効率を考えるなら・・・ここか」
「よし!ちょっと待ってろ!すーぐ付けてやるからな!」
ガサゴソと魔力鞄から工具とエアコンを取り出しせっせと取り付けてくれる。
・・・本当に仕事が早い人だ。
「そういや菜園も広げるか!?なら場所を決めといてくれ!」
「わかった!じゃあ場所決めて、外で待ってるよ」
おう!と元気のいい返事をもらい、俺は外に出る。
今ある菜園まできた。
どこにしようか・・・機材からも邪魔にならず、画角に入るところにしよう。
俺はその場所に足で線を引いた。
「ここが広がれば、もっと色々試せるな・・・」
今は季節に応じた野菜しか植えていないが、それ以外も試してみたい。
ジリジリと照り付ける太陽の下で、俺は次の実験への期待に胸を焦がした。




