第十環 好きなもの
あれから5日が過ぎた。
菜園では、赤の季節の野菜が収穫の時を迎えた。
俺はまた、1つ1つ丁寧に収穫・計測を行い、ハカリにデータを送った。
ふと、緑の季節の野菜たちに目を向ける。
「・・・こっちは、まだ小さい芽が出てるだけか」
どうやら今回はゆっくり成長しているらしい。
緑魔力の水を与え続けているため、魔力数値も少しずつだが増え続けている。
しかし今のところ目に見える変化・・・というものはなさそうだ。
「一体どんなものができるんだろうな」
少し期待のこもった目で、小さくとも空に向かって伸びようとしているそれを見る。
「・・・よし!まずは、ハカリのところにいくか!」
ハカリに「今から行く」と通信を入れる。
俺は籠にきゅうりを多めに詰め、ハカリのところに向かった。
…
ミレル環に着いた途端、ハカリが俺に気付き、待ってましたとばかりに近付いてくる。
「ジン!おはよう!野菜はたくさん採れた?」
「ああ、きゅうりもバッチリ採れた。多めにもってきてるぞ!」
わーい!と言いながら、ハカリはニコニコと野菜を受け取る。
「そういえば、緑の方はどう?」
「今回は前の季節より、ゆっくり成長してる」
「今は小さい芽が出てるくらいだ」
「そっかー・・・育ちは、してるんだね」
2人で少し考えるが、やはりまだ判断材料も何も足りていない。
「まあ、また何かあったら連絡する」
「次採れるきゅうりも、また持ってくるからな」
「え!いいの?ありがとう!」
それを聞いて、ハカリがパッと笑顔になる。
・・・どうやら本当にきゅうりが好きらしい。
「へへ、きゅうりって漬物も美味しいよねー」
「でもこれは新鮮だから、そのままかじって食べようなー」
ニコニコときゅうりをどうやって食べるか話すハカリを見て、俺は口元がフッと緩んだ。
それからまた少し話して、ハカリと別れ、俺は残りの野菜を持ってイチバ環へと向かった。
…
イチバ環に着くと、オロシ姉さんが誰かと話していた。
「・・・ですので、このお薬を作るために、こちらの材料を頂きたいのですが・・・」
「はいよ!この紙に書いてるものだね!持ってくるからちょっと待っててくれるかい!」
「わかりました。ありがとうございます」
・・・どうやらオロシ姉さんは、今忙しいようだ。
また後にしようと、俺は広場へと向かった。
広場の噴水前にあるベンチに腰を下ろす。
ぼんやりと街を眺めていると、以前より街に活気がある気がする。
「ん?」
ツクレル環の隣で、作業員が何かしている。
線・・・を引いているのだろうか?
もしかしてあそこに、また何か建つのだろうか?
しばらく眺めていたが、そろそろオロシ姉さんのところに行こうと、俺はイチバ環へ向かった。
…
「あぁ!ジン!さっき来てただろう?悪いね!出直させちゃって!」
「いや、いいよ。こっちこそ忙しいのに悪いな」
「フフッお互い様ってやつだねぇ!それはそうと、今日の野菜を見せてもらおうか!」
籠を渡し、値付けしてもらっているうちに、俺も欲しいものを手に取る。
「ふんふん、じゃあ今回はこのくらいで・・・ジンの持ってる分のお代も、これから貰っておくよ!」
「ああ、ありがとう」
「今回は赤の季節の野菜だったねぇ!そろそろ野菜作りも板についてきたかい?」
オロシ姉さんは、俺が買った商品を袋に入れながら聞いてくる。
「まだまだ初心者だけど、皆やあの土地のおかげで、なんとかやれてるよ」
「そうかい、それはよかった!」
「またなんかあったら言いな!それじゃ!まいどあり!」
そう言ってくれたオロシ姉さんの目は、なんだか優しかった。




