第十一環 変化
あれから数週間が過ぎた頃、緑の季節の野菜たちが、ついに収穫の時を迎えたのだが・・・。
「・・・なんで全部先端が緑になってるんだ!?」
トマトを手にもってよく観察してみる。
トマトの先端部分が、少し緑に変色している。
病気かとも思ったが、他の野菜もすべてそうなっているし、調べてみても病気の類ではないようだった。
「・・・とにかく、ハカリのところに持って行こう」
俺は収穫と計測をして、すぐにデータを送り、結果もろくに見ないまま、ハカリの元へ急いだ。
…
「ジン!待ってたよ!」
「ハカリ!どうなってる!?」
「あれ?データ見ないで来たの?これすごいよ!」
ハカリがデータを見せてくる。
俺はそれを今度はしっかりと見る。
・・・なるほど、どうやらこの緑は魔力色の影響らしい。
「地中の緑魔力が増加したことで、野菜もそれを吸収してこうなったんだね」
「それで、緑魔力の緑に少し変色した・・・と」
「どうやらそうみたいだね!こんなの初めてだよ!」
ハカリが興奮気味に言う。
魔力色の影響で変色が見られるなんて、まあまあの発見じゃないか・・・?
「これは結構すごい発見だよ!」
「今までの色んなところの研究データとかも見たけど、どれも魔力色がこうも影響したものはなかった!」
「どうやら、これが!魔力色のついた野菜の第一号みたいだよ!」
俺は目を丸くする。
・・・じわじわと胸の奥から、嬉しさが込みあがってくる。
「俺たちが・・・俺たちの、最初の発見・・・」
「そうだね、君の発見だよ」
おめでとう、とハカリが優しく声をかけてくる。
つい下を向いてしまった。
溢れかけたそれが、溢れ落ちてしまわないように必死に堪えた。
やがてハカリがゆっくり口を開いた。
「・・・それじゃあ、この野菜は僕の方で預かるよ」
「君の名前で報告書もあげておくね」
「・・・ハカリの名前も入れろ、じゃないと許さない」
ハカリがちょっと驚いた顔をする。
それからまた優しい笑顔になり、
「はいはい、わかったよ」
と幼子に言い聞かすように言った。
俺たちが発見したこの野菜は、後にミレル環魔力野菜として、ちょっと有名になるのだった。
…
小屋への帰り道。
今日はオロシ姉さんのところへは魔力色野菜は持って行かなかった。
まだ正式なものではなく、食用としての適性と効果を、ミレル環で検証し、安全を確認して承認されないと販売等もできないことになっているからだ。
「・・・なんか、まだ嘘みたいだな」
籠に残った野菜たちを見て思う。
本当に俺たちが・・・?だがここに、発見の証拠である野菜が、歩くたびに少し揺れながら存在を示している。
腕の中の籠が、やけに重く感じながら、俺は小屋へと帰った。




