第二十環 少し前へ
魔力健康診断結果を、ハカリが届けに来た日から、数日経ったある日のこと。
俺は収穫できた赤魔力野菜を含んだ野菜たちを持って、ハカリのところへ向かっていた。
今回も魔力野菜が無事に収穫できたことで、俺は少しホッとした。
街の広場を通ると、どこからともなく、食欲をそそる、いい匂いが漂っている。
匂いの元に目をやると、そこには食堂・・・もといタベレル環がオープンしていた。
少し気になったが、まずは野菜を持っていくのが先だ。
俺は後ろ髪をひかれながら、ハカリのところへ急ぎ足で向かった。
「やぁジン!赤魔力野菜、ちゃんとできてよかったねぇ」
ハカリに赤魔力野菜を渡すと、ハカリも今回も魔力野菜がちゃんとできたことを喜んでいた。
「ああ、じゃあこれも解析頼むな」
「うん、こっちで預かるよー」
これでまた、何かわかるといいな。
そう思いながらハカリに渡した赤魔力野菜を見た。
「あ、そうだ、前の変な色になった魔力野菜のことなんだけど、わかったことがあるよ」
「ホントか!?」
「うん。こっちでも高濃度魔力水を使ったり、同条件になるよう栽培をやってみたんだ」
ハカリは俺に、わかったことを教えてくれた。
野菜につく魔力色については、魔力水をやることであの土地の菜園で、地中に蓄えられてた魔力色を水分や栄養素と一緒に根から吸収することで、実である野菜等に魔力色がつく、という仕組みのようだ。
これは、俺も大体予想はしていたことで、概ねあっていたので少し安心した。
さらに前回の変色については、緑魔力が赤魔力と合わさることで、量の多かった赤魔力側に魔力色が傾き茶色に変色した・・・ということのようだ。
「そうだったのか・・・」
「あと、地中に魔力が含まれるのは、どうやらあの土地固有の現象みたいだよ」
「うちの簡易菜園では、そういう現象はみられなかった」
「魔力野菜を作ることは魔力水を使った水耕栽培でできたけど、コストが高すぎるから、実験用にしか作れないね」
なるほど、魔力野菜自体は作ることは可能なのか。
ただ、高濃度の魔力水を流し続けるのは・・・高額になるだろうな。
しかも栽培速度も変わらなかったようだ。
これは・・・販売用に作ろうとは思わないな、たしかにコストが高すぎる。
「魔力色の変化は見られたんだ、これからは、やろうと思えば色んな色の魔力色野菜が作れるかもよ?」
ハカリがニヤリと笑って言う。
そうか、茶色が出来たんだ、他の色も・・・。
俺はこれからの研究が、俄然楽しみになってきた。
誰も見たことのない魔力色の野菜に出会えるかもしれない。
「ああ、そうだな。これからが楽しみだ」
「調べてくれてありがとう、ハカリ」
俺は笑顔でそう言った。
そんな俺の顔を見て、ハカリは少し驚いていた。
「ジン・・・よかったね」
ハカリが目を細めて笑った。
なんて言ったかは、俺は聞き取れなかった。
「?何だ?」
「フフッ、ううん、何でもないよ」
そう言ってまた、ハカリは穏やかに笑ったのだった。
ハカリと少し話したあと、俺は残りの野菜を持ってオロシ姉さんのところに向かった。
…
イチバ環に着くと、ダイクさんがオロシ姉さんに何かを嬉しそうに話していた。
2人に近付くと、オロシ姉さんが俺に気付いた。
「ジン!今日も持ってきてくれたのかい!」
「おお!ジンかぁ!久しぶりだなぁ!」
「ジンも聞いてくれ!俺の娘が帰って来たぁ!」
ダイクさんがとても嬉しそうな声で話す。
「そこのタベレル環でなぁ!働きだしたんだ!そうだジン!今から一緒に行かないか?」
あのいい匂いがしたタベレル環か・・・願ってもない話だった。
「いいな、俺も気になってたんだ!ちょっと待っててくれるか?」
「おっとそうだな野菜が先だ!そこで待ってるな!」
ダイクさんがちょっと後ろに下がった。
俺を待ってくれるようだ。
俺はオロシ姉さんに持ってきた野菜を渡した。
「ダイクったら、ちょっと前からずっと娘の話をしてるんだ!」
「よっぽど嬉しかったんだねぇ!」
「そうみたいだな」
器用に値付けもしながら、オロシ姉さんはダイクさんの話をした。
ダイクさん、たしかにすごく嬉しそうだ。
チラッと見ると、ダイクさんがソワソワと大きな身体を左右に揺らしていた。
その様子にちょっと笑っていると、オロシ姉さんの値付けが終わったようだった。
「はいよ!いつもありがとね!」
「こっちこそ、いつもありがとう」
「フフッじゃあ早くタベレル環行ってやんな!」
「ああ、そうする」
オロシ姉さんにも促され、俺はダイクさんとタベレル環に向かった。




