第十九環 診断結果
魔力健康診断を受けて、早1か月が過ぎた。
俺はその間、野菜の収穫や販売をしながら、いつもとそう変わらない日々を送っていた。
そして今日もいつもと同じように、朝から菜園の世話をしていたのだが・・・。
ウィー―――ン!!
モーターのような音と俺の背後からふわりとした風を感じた。
振り向くと・・・。
宙に浮くバイク・・・とそれに跨ったハカリがいた。
「ジン!おはよう!」
「・・・」
唖然とする俺だったが、何とか気を取り直し、バイクのエンジンを止めているハカリに声をかける。
「ハカリ・・・それは・・・なんだ?」
「ああこれ?いいでしょ、魔力バイクだよ!」
魔力バイク、ちょっと前に都会で流行っていると聞いた乗り物だ。
たしかエンジンに魔力収集変換器を付けた結果、車体を浮かして進むことに成功した・・・ってなにかで聞いた気がする。
魔力機械に関して、俺は専門外だから、定かではない。
そして、今はそれどころではない。
「いや、なんで買ったんだ?」
「ん?ここ来るの結構大変だから、すっかり忘れてて貯金も貯まってたし」
「思い切って買っちゃった!」
ハカリはにっこりと笑いながら答えた。
「・・・そうか」
・・・俺はそうかとしか言えなかった。
「はいこれ。魔力健康診断の結果来てたよ」
「ここへの様子見ついでに持ってきちゃった」
ハカリに封筒を手渡される。
ああ、バイクを見せに来ただけじゃなかったんだな。
「ああ、悪いな」
「結果もちょっと気になったし、どうだったか教えてよ」
そう言いながら、ハカリはもう1つ、自分の分も持ってきたようだった。
「ちなみに僕は・・・変わりなしだ」
「そうか、良かったな」
「ジンはどう?」
そう言われて、俺も開封してみることにした。
封筒をバリッと豪快に開ける。
少し、緊張するな。
「・・・魔力色が変わってる」
「え?!嘘、僕も見ていい?」
「ああ、ほら」
魔力色の部分、主要魔力色の数値とカラーパレットで自分の魔力色が表されているところを指さす。
「本当だ、去年より緑間色がちょっと増えてるね」
「緑魔力・・・まさか・・・」
俺は緑魔力が増えたことに、少し、心当たりがある。
いや、あまり考えたくはないことだが、もしかしたら、そうかもしれない。
俺は可能性を、恐る恐る口に出してみる。
「緑魔力野菜カレー・・・」
「え・・・あれからもずっとカレー食べてたの!?」
「ずっとじゃない、3日に1回作って、次の日も食べてたくらいだ」
「・・・それってほぼ毎日じゃない?」
そうか・・・?と思いながらも、俺はカラーパレットの魔力色を見る。
去年までの結果では、ずっと変わらず、俺の魔力色は白魔力と黒魔力の半々だった。
それが今年は、白い部分にほんのりと緑が混じっている。
「魔力スポットの近くに住む人が、魔力色や髪色とかが変わることがあるっていうのは、聞いたことあるけど」
「魔力色だけ変わる現象は、僕は知らないなぁ」
ハカリが不思議そうに俺の結果を見ている。
魔力スポットか。
この辺りはそうではないはずだが、昔で言うパワースポットのようなところだ。
そこでは大体1種の魔力色の濃度が濃く、相性の合う人には、とても居心地のよい空間になっているそうだ。
俺は合う場所へは行ったことがないから、感覚的なことはわからない。
髪色が変わる現象も、魔力医療の方の知識になるので俺には専門外だ。
「まさか、今は出てないけど、俺も髪色が変わったりするのか?」
「どうだろうね・・・緑色のジンかー」
ハカリが少し笑っている。
きっと髪が緑になった俺を想像しているのだろう。
それから、魔力バイクで颯爽と帰るハカリを見送った。
その日の夜、俺は髪色が変わらないことを祈りながらも、またいつものカレーを食べるのだった。




