第十七環 魔力健康診断
黄の季節の中頃になったある日、俺はミレル環に来ていた。
そう・・・今日は待ちに待って・・・はない、魔力健康診断の日だ。
ミレル環を休環日にし、ミレル環職員全員がゲンキ環へ魔力健康診断を受けに行かなければならない。
これは社会人としての義務のようなものだ・・・。
先輩たちの顔を見ると、どこかしょんぼりしている。
そして・・・隣のハカリの顔もだ。
「今日が来てしまった・・・」
「俺たちまた、先生に怒られるのかな・・・」
悲壮感溢れる先輩の声が聞こえる。
ミレル環職員にとっては、日頃の不摂生などをチクチク言われる日という認識のようだ。
それもそのはず、去年まで来ていた隣街の病院の先生は、俺たちに容赦なく生活のダメ出しをしてきた。
決して悪い先生ではない。
だが毎回のように寝ろ、食え、食うな、運動しろ、バランスよく生きろ・・・と言われてきた。
・・・まあ健やかな暮らしをしてない俺たちも悪いんだろうけど。
今年は新しい先生だろうか?何を言われるだろうか?
戦々恐々としながら、俺たちミレル環一行は足取り重く、ゲンキ環へ向かった。
「おはようございます!ミレル環の皆様ですね!ゲンキ環へようこそ!」
「こちらが受付でーす!順番に並んでくださいねー!」
とても元気のいい声がする。
名札にバースと書かれた看護服のような、番頭のような恰好をした背の高いがっちりした体型の男性が、受付の前で俺たちに手を振っていた。
看護師さんだろうか、その人の指示に従って俺たちは受付に並んだ。
「ゲンキ環の職員さん、バースさんっていうんだねぇ」
「元気な人だなぁ」
ハカリがバースさんを見ながらポツリと呟いた。
体育会系というやつだろうか、それにしても、俺もゲンキ環は初めてだ。
少し緊張しながらも、順番がきたので俺も受付を済ませる。
受付では紙でできたカードをもらった。
右上に『5』と書かれている。
「皆さん受付されましたね!では、魔力健康診断の流れをご説明します!」
「皆さん、お手元のカードの右上をご覧ください!そこに書かれている数字毎に班になってもらいます!」
「各班ごとに順路に従って魔力健康診断を受けていってください!」
「カードの裏に順路が書かれてます!では!よろしくお願いします!」
説明が終わると、各々が班に分かれて最初の検査室に向かった。
どうやら5班は、俺とハカリと他3人の班らしい。
ゲンキ環のあちこちに行きながら、身長体重、視力、検尿、心電図、血液検査その他諸々を受けた。
魔力測定は血液検査と同時にできるので、改めて別で検査する、ということはない。
去年と変わりない身長体重に少し安心しながら、最後に診察室の待合へ向かった。
検査の最後の診察は、大体どの班も同じような時間に検査が終わるので、ここは少し混み合っているようだ。
今は3班まで進んでいるらしい、俺たち5班はまだ先のようだった。
診察待ちで、ゆっくりとした時間が流れる。
俺はぼんやりと菜園のことを考えながら、時折診察室から出てくる先輩方の顔を見る。
今年は怒られなかったのか、なんだか穏やかだ。
ハカリもその様子を見て、少しホッとしているようだ。
・・・ハカリも毎年怒られてたのか。
それからしばらく待っていると、ハカリが診察室2に呼ばれる。
その後少しして、俺は診察室1に呼ばれた。
「ジンさんですね!どうぞ!座ってください!」
「あれ?バースさんが診察するんですか?バースさんは看護師さんじゃ・・・?」
「ああ!ここは普通の病院と違って、ゲンキ環ですから!」
「あ!医師免許はちゃんと持ってますよ!安心してくださいね!その上で、俺も色々やってるんです!」
ニカ――!!っと笑うバースさんに、なるほど・・・?と思いつつ、診察が始まる。
軽い診察と問診をして、今わかる結果を教えてくれる。
それから気になることなどを聞かれたが、特に問題なく終わった。
「はい!問題なさそうですね!」
「詳しい検査結果は後日、ミレル環の方に送らせてもらいますね!」
「では!これで魔力健康診断は終了です!お疲れさまでした!」
「これどうぞ!娯楽用魔力温泉に入って、元気になって帰ってくださいね!」
バースさんはにっこりと笑って『温泉券』と書かれた、青色のチケットを差し出してくる。
俺はお礼を言いつつ、チケットを受け取った。
「ありがとうございます」
「はい!」
「俺ももう少ししたら温泉の方と交代なんで、またお会いするかもですね!」
ニコー――!!っと笑うバースさんの笑顔を眩しく思いながら、俺は診察室を出て、魔力温泉の方に向かった。




