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第十六環 予想外

初めてポテトサラダを作った日から、また数週間が経った。

菜園では赤魔力野菜が、すくすくと育っている。

俺は先端が赤く染まったきゅうりをそっと触りながら、隣の区画にある作物たちに目を向ける。

・・・収穫期を迎えた、普通の水で育てた緑魔力野菜だ。

途中までは普通の野菜と見た目も変わらなかった。

だが徐々に、本当に徐々に変化が表れていた。

先端が赤色と・・・茶色のような色になっているのだ。

「前は見た目は普通だったのに、育つにつれ赤だけじゃなく、変な色もついたな」

収穫して、魔力を計測してみる。

すると不思議なことに、種の時にはあったはずの緑魔力が減り、その分、赤魔力が増えたかのような数値変化がみられる。

「どういうことだ・・・?」

「・・・いや、まずはハカリのところに持って行ってみよう」

俺はデータと連絡を送り、ハカリのところへ急いだ。

…

ミレル環に着いて、ハカリに例の魔力野菜を見せる。

「なんだか、不思議な色になったねぇ」

ハカリは驚きつつ、顎に手をやり、真剣な目で野菜を見る。

「先端は赤と・・・茶色・・・かな?」

「緑魔力の減少・・・魔力色が混ざって違う魔力色になるのはあることだけど・・・」

ハカリが考え込んでいる。

俺もハカリも、混ざったという可能性は考えているが、やはり確証がない。

「そっちでまた詳しく調べてもらってもいいか?」

「うん、わかった。この変色した緑魔力野菜は預かるね」

ハカリに変色した緑魔力野菜を渡し、俺はオロシ姉さんのところに他の収穫した魔力野菜を持っていくことにした。

…

イチバ環に着いたが、いつものところにオロシ姉さんはいなかった。

かわりにイチバ環の法被を着た職員さんがそこに立っていた。

「あ!ジンさん!今日もお野菜を持ってきてくれたんですか?」

「ああ、オロシ姉さんは?」

「あいにく、今日はお休みなんです」

「私でよければ、伺いますよ!」

少し残念に思いながら、イチバ環の職員さんに野菜を渡す。

「はい、ありがとうございま・・・え?これ・・・あれ?もしかして・・・」

「ちょっ!ちょっとこのまま待っててください!」

職員さんは慌てながら通信端末を取り出す。

誰かに連絡をとろうとしているようだ。

その様子に戸惑いながら俺は声をかけようとした。

「え?あの、待って・・・」

「オロシさ――――――ん!!!」

通信端末を持って職員さんは奥へ走って行ってしまった。

俺は呼び止めようと上げた手の行き場を失った。

そうして10分程待っていると、バタバタとした音と共に、オロシ姉さんがきた。

今日は休日だったからか、いつもはしっかりとまとめられている髪が、自由に揺れていた。

「ジン!今日アタシが休みの日に珍しいもん持ってきたって!」

ズイッとオロシ姉さんが身を乗り出しながら聞いてくる。

「ああ、休みって知らずに来て悪かったよ」

「あー、いやごめんよ!つい怒ったように言っちまったね!」

「珍しいものなら、アタシも見たくてさ!急いで来ちゃったよ!」

ニカッと笑いながらオロシ姉さんが言う。

俺はそんなオロシ姉さんに、少し緊張しながら、持ってきた緑魔力野菜を見せる。

「あぁ!これが許可された魔力野菜かい!」

「この前ここにハカリが来て、そろそろ販売許可が下りるから、ジンが持ってくると思うって言ってたんだ!」

ハカリが販売許可のことを、オロシ姉さんに言っていたことに驚く。

なんでも急に持って行って混乱しないようにと、先に販売許可証をここに持ってきたらしい。

「これが、ジンの初めての発見なんだって?すごいじゃないか!」

「そんでうちに持ってきてくれるなんて・・・アンタはいい子だねぇ!」

ワシャワシャとオロシ姉さんが俺の頭を撫でる。

「わっ!ちょ、恥ずかしいからやめてくれ・・・」

撫でる手をそっとよけつつ、俺はオロシ姉さんに感謝を伝える。

「オロシ姉さんも応援してくれたし、皆やあの土地のおかげで魔力野菜ができたんだ」

「ありがとうオロシ姉さん」

そう言った俺の顔は、たぶん笑っていただろう。

そしてその言葉にオロシ姉さんは、優しく笑い返してくれた。

「よし!じゃあ早速買い取らせてもらうよ!ちょっと待ってな!」

オロシ姉さんは値付けを始める。

時々隣の職員さんとも相談しているようだ。

少し待っていると、オロシ姉さんが「おまたせ!」と声をかけてくる。

「じゃあ、これが今日のお代だよ!」

ズシッといつもより明らかに重い袋に驚く。

「オロシ姉さん、こんなには・・・」

「何言ってんだい!初物なんだ!これくらいはいるのさ」

「そう・・・なのか?」

「そうさ!アタシの見る目を信じな!」

俺は少し自信がなかったが、ニッと笑うオロシ姉さんの言葉をしっかりと受け止め、お礼を言う。

その後、また少し話をして、俺はイチバ環を後にした。

手に持った袋に、中のお金以上の重さを感じながら、俺は一歩一歩、小屋への帰り道をしっかり歩いた。


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