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第十五環 試食

あれから2週間程経ち、黄の季節の野菜は何度か収穫できた。

収穫した野菜は、ハカリに持って行ったり、オロシ姉さんのところへ持って行ったりしながら、日々を過ごしていた。

そんなある日、俺はミレル環に行く途中、ついにツクレル環の隣に、ゲンキ環ができたことを知る。

また、その隣で何かの工事も始まっていた。

俺はミレル環に着いて、それらのことをハカリに話した。

「ああ、もうできたんだね。それにしても、なんだかこの街も活気づいてきたよねぇ」

ハカリがのんびりした声で言う。

たしかにここ最近、街で見かける人の数も多くなった気がする。

ダイクさんもオロシ姉さんも忙しくなってきたようで、たまにお客さんを案内している姿を見かけたりしていた。

「そういえば僕らもそろそろ、魔力健康診断の日が来るし、今回はゲンキ環で受けることになるかな?」

「ああ・・・もうそんな時期か」

魔力健康診断とは、先輩曰く、健康診断に人体の魔力測定が入っただけで、受ける側は以前の健康診断と変わらない・・・らしい。

社会人になった時にはすでに魔力健康診断が主流だったので、以前の健康診断と同じと言われても、俺にはよくわからなかったな。

「忘れるところだった、そろそろ本題に入るね!」

「前に申請してた、魔力野菜の販売許可が下りたよ!」

「!ほんとか!?」

「うん、これからはイチバ環で売っても大丈夫だよ」

ハカリが優しく微笑み、頷きながら答えた。

そうか・・・安全性も確認できたし、次にできたものはオロシ姉さんのところに持っていこう。

・・・喜んでくれるだろうか?

俺はハカリにお礼を言い、安全性が確認できたとは言え、自分でも食べてみようと思い、少し軽い足取りで小屋へ帰った。

…

小屋に帰ると、もう昼過ぎになっていた。

まあまあ腹も減ったという実感が、時間を確認したことで襲ってくる。

俺は古い方の魔力鞄に入れていた緑魔力野菜のジャガイモと人参を手に取る。

魔力鞄は、入れたいものを魔力で圧縮して収納する。

入れた時の状態を魔力で固めるため、長期保存が可能になる。

やはり魔力鞄は役に立つし、便利なものだな。

新しいのも買ってよかったと思いつつ、俺はジャガイモ片手にメニューを考える。

「ジャガイモ・・・人参・・・ポテトサラダ?」

「作ったことないな・・・茹でて潰せばいいのか?」

「・・・まあ、やってみるか!」

未だに慣れない手つきだが、ジャガイモと人参の皮を剥く。

魔力野菜の特徴の、魔力色がついた部分は、皮を剥いてもその色だった。

「こうなってたのか・・・」

なんて呟きながら、俺は適当な大きさに切り、水を入れた鍋に放り込む。

火をつけて、野菜が柔らかくなるまで茹でる。

柔らかくなったら、火を消して野菜を取り出す。

ジャガイモは潰して、人参はもう少し細かく切った。

最後に野菜をボウルに入れて混ぜながら塩コショウをして・・・。

「・・・できたのか?」

「これでいいのか?・・・まあいいか、食べてみよう」

割と大量にできてしまったそれを、食べる分だけ皿に移し、テーブルにつく。

「いただきます・・・」

恐る恐る口に運ぶ。

パクッ・・・。

じんわりと少し温かいような何かが身体に染み渡っていく気がする。

そしてホクホクとしたジャガイモと人参の甘みが口に広がる。

「・・・素材の、味だ」

「けど・・・うまい、な?」

味付けが足りないのか、素朴な味だった。

知ってるポテトサラダの味じゃないな、と思いながらも、どこか休まる感じのする、不思議な料理になった。

「ごちそうさまでした」

俺は食べたものを片付け、ハカリに連絡をした。

ピッと音がした後、ハカリの声が聞こえる。

「やあジン、どうしたの?」

「ポテトサラダ作った」

「・・・ん?それだけ?」

ちょっと拍子抜けしているハカリに、さっき作ったポテトサラダの話をした。

「あー、それマヨネーズとか卵とか入れてないの?」

「マヨネーズ?・・・入れるものなのか?」

「・・・そういえばジン、あんまり料理する機会なかったし、料理するのあんまり興味ないって言ってたね」

どこかがっくりしているようなハカリの声が聞こえる。

それからハカリは俺に、ポテトサラダの作り方を教えてくれた。

「今回の分には、マヨネーズ足せばいいからね」

「わかった、ありがとう」

「魔力回復する感じは、ちょっとわかったんだね」

「・・・ん?」

魔力回復・・・ってハカリは言ったのか?

「あれ?言ってなかったっけ?」

「初耳だぞ・・・」

「ああごめん、じゃあ説明するね」

そう言ってハカリは俺に、この魔力野菜の効果について話してくれた。

どうやら、通常よりも多く魔力が含まれることによって、魔力温泉のような効果が得られるようだ。

うつ環の魔力は、身体を循環する過程で少しずつ外に放出され、減少する。

その分を魔力野菜の経口摂取によって、わずかに補給することができる、ということのようだ。

「だから温かいものが広がる感じがしたんだろうね」

「なるほど、そういうことだったのか」

「にしても、ちょっと料理の本でも買ってやってみたら?今まで何食べて過ごしてたの?」

「大体カレー食ってた」

「・・・よく飽きなかったね」

「カレーは完全食みたいなもんだろ?」

「うーん、そう、なのかな?」

ハカリが若干引いているような声を出す。

それから少し話し、お礼を言って通信を切った。

・・・マヨネーズは今度買いに行こう。

そう思いながら俺は残りのポテトサラダを保存容器に入れた。


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