第十三環 意外なこと
あれから赤の季節が終わり、黄の季節が来た。
すっかり涼しくなった風を感じつつ、俺は菜園を整えていた。
整え終わって一息つきながら、菜園を見る。
「んーちょっと狭くなってきたか、緑魔力野菜はまだ育てたいな」
「ダイクさんに頼んで、菜園増やしてもらうか・・・」
「それなら記録用機材も足りなくなるか・・・」
俺はそう呟きながら、とりあえずダイクさんのところに行こうと、魔力靴を履いて街に向かった。
…
ツクレル環の前に着くと、隣が本格的に工事を始めていた。
ここにゲンキ環ができるのか・・・と思いつつ、俺はツクレル環の中へ入った。
「おぉージン!よく来たなぁ!」
「ダイクさん、またちょっと頼みたいことがあるんだが・・・」
「おぉ!どうしたぁ?言ってみろぉ!」
「菜園を増やしたいんだ、頼めるか?」
「おう!菜園か!任せろぉ!さあ行くぞ!!」
・・・毎度のことながら話が早いダイクさんの後を、俺は急いで追いかけた。
…
「よーし着いたな!で?どこに増やすんだぁ?」
「ここに今あるのと同じくらいのを作ってほしいんだ」
俺は菜園予定地を指差しながら言った。
ダイクさんは今ある菜園と予定地を見ながら、顎に手をやり、少し考えているようだ。
「そうだなぁ、これだと・・・ちぃっとレンガが足りねぇな」
「枠がなくてもいいならできるぞぉ!」
「なるほど、それなら枠なしでお願いできるか?」
「おう!じゃあちょっと待ってろ!」
言うや否やダイクさんは仕事に取り掛かろうとしていた。
「ダイクさん、ミレル環に機材を取りに行ってもいいか?」
「おう!ここはやっとくから行ってこい!」
「ありがとう!じゃあ頼むよ!」
ダイクさんを残し、俺はミレル環に機材を取りに行った。
…
ミレル環に着くと、俺はハカリのデスクに向かう。
いつものようにデスクに籠っているハカリに俺は声をかけた。
「ハカリ!今いいか?」
「ん?あれ、ジン?どうしたの?」
「それが、菜園を増やすから、録画範囲も増やしたくてな」
俺は理由を話し、ハカリに使用してもいい機材があるか聞いた。
ハカリは納得したようで、俺に機材を渡してくれた。
「はいこれ、あとこれからも増えるだろうし、多めに持っていきなよ」
「え?いいのか?」
「僕の研究は、ジンの研究と一緒だから使わないし」
「他の人たちも、今はこの機材を使うような研究はしていないからね」
「そうか。じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ」
そうして俺はハカリにお礼を言い、機材を持って小屋に帰った。
…
小屋に帰ると、ダイクさんがすでに菜園を作り終えていた。
「おぉ!思ったより早かったな!」
「ダイクさん!もうできたのか!さすが、仕事が早いな」
ガハハ!と笑うダイクさんに今回の代金を聞きつつ、俺はしっかりとお金を払った。
「そういやお前さん、牧場なのに家畜は飼わねぇのか?」
「まだ駆け出しだからな。もう少し慣れたら飼おうとは思ってるんだ」
「そぉかあ!それはまた楽しみだな!」
「おぉ楽しみと言えばよぉ、俺の娘も、ジンの野菜で料理してみたいって言ってたぞぉ!」
「・・・娘?」
俺は突然のダイクさんの発言に耳を疑った。
「ダイクさん、娘いるのか?」
「おう!」
「もしかして奥さんも・・・いる?」
「おう!ムスビ環の受付にいるヨシエが、俺の奥さんだ!」
俺の開いた口が塞がらない。
ダイクさんとはそこそこ長い付き合いだが、初めて知った。
「えぇえええ!?」
「ガッハッハ!なんだぁ、知らなかったのかアッハッハ!」
俺の驚く声と、ダイクさんの笑い声が、この山に響いたのだった。
…
あまりの衝撃にしばらく固まっていたが、何とか持ち直した。
そしてまだうっすら笑っているダイクさんを見送り、俺は新しい菜園に黄の季節の野菜の種を植えた。
機材も新しくセットし、植えたところに普通の水をやる。
魔力計測もして、前の菜園のところへ行く。
赤の季節の野菜を植えていたところで、次は赤魔力野菜に挑戦しようとしているのだが・・・。
「・・・赤魔力の水がいるな」
俺は久しぶりにナビ付き地図を開いた。
「アー!!オヒサシブリ デスネ!」
「忘レラレタノカト 思イマシタヨ!」
「あ、ああ、ごめん?」
「イインデスヨー!!」
ナビの勢いに押されつつ、俺は赤魔力の水がある場所を聞いた。
「アァ!ソチラニ オデカケ デスネ!」
「チョットマッテ・・・ア! タブン ココデス!」
「・・・ちょっと遠いな」
どうやら今回は少し遠めの山の中にあるようだ・・・たぶん。
まあ魔力靴で体力を温存しつつ行けば・・・1時間くらいか?
今から行けば、昼過ぎには着くだろう。
「よし、じゃあ案内してくれるか?」
「モチロンデス! 任セテ クダサーイ!」
元気のいいナビの声を聞きながら、俺は魔力靴を履いて、目的地へ向かって走り出した。




