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本日2話目です。
ご注意ください。
脱獄に関して特に俺がする事はないと言われたので、俺は唯一の心残りである友人達へメッセージを残す事にした。
魔族は別に悪い存在じゃない可能性が高い事。
王は魔族の領地にある資源を欲しがっているという話がある事。
俺がその話を聞かせてくれた人物とここを脱出する事。
落ち着いたら、何らかの方法で連絡する事。
その時、逃げ出す気になっていたら、手助けする事。
最後に、ラノベ展開が楽しくても、無茶はするなと付け足した。
これらのメッセージを届ける、その方法はというと──。
「風花、晴夜、この真ん中にいる人間をよく見て。この人間にこの手紙を届けて欲しいんです」
ホーンラット二匹による伝書鳩……伝書鼠だ。
今までこれをしなかったのは、万が一他の相手に手紙が渡ってしまうと、さすがに俺が始末されるかもとアレクに止められていたからだ。
日本語で書いたら読めないのでは、と言ったところ、
「読めなくとも、アカリの世界の文字だとわかる奴はいる」
「希少だが翻訳出来る道具もある」
「アカリは牢の中で体調を崩したと処分される可能性がある」
と説得されたので、一度諦めていた。
それをもう一度試す気になったのは、俺がここからいなくなるからというのが一番の理由で、二番目は……。
「そいつら、よく懐いているし、頭も良いよな……」
アレクが感心したように呟いているが、本当にその通りだ。
白いホーンラットの方を『風花《かざはな》』と名付け、黒いホーンラットの方は『晴夜《せいや》』と名付けたのだが、名前を付けたらさらに頭の良さが増した気がする。
今も二匹揃って俺が差し出したスマホの画面をじっと見つめ、届け先である人物の顔を覚えようとしてくれている。
念の為、スライドして写真を変えて、この中の誰に届けるかわかるか? とそれぞれにやったところ、風花は少し悩んでから、晴夜はすぐに答えを出した。
仲良く前足でポンポンとタップしたのは、間違いなく俺が手紙を届けて欲しいと頼んだ相手だった。
という訳で、これが二番目の理由だ。
ホーンラット二匹との連携が上手く取れるようになったので、手紙を運んでもらうための確実性が増したから。
スマホがあるならスマホで連絡取ればいいのではという話だが、こちらの世界に電波がある訳なかった。
写真や動画を撮ったり、見せたりは出来ても、誰かに連絡したりネットに繋いだりは出来ない。
まぁ、そもそも誰かに連絡出来るようなら、牢へぶち込まれる時に没収されてたと思う。
おかげで没収されず済んだが、もうすぐ充電も切れてただの板となる。
クラスメイトの中には、もしかしたらモバイルバッテリーを持ったまま転移してきた奴がいるかもしれないが、俺としては使えなくなっても特に問題はないのでどうでも良い。
値段が値段なので、積極的に捨てる気にはならないから、脱獄する時には持って行くつもりではいるけど。
もしかしたら、魔法とかスキルで充電出来る可能性もあると考えるのは、希望的観測が過ぎるか。
ま、その時は風花と晴夜のためのカメラとして使うつもりだ。
「チュウ!」
手紙を持たせたのは風花の方で、弁当箱を包んでいたハンカチを使って、手紙を背負うようにして持たせた。
重くないかと心配したが、キリッとした表情で気合を入れた一鳴きをしてくれた。
「ヂュッ」
落ち着いた感じの一鳴きで応えてくれた晴夜には、俺の制服に付いていた名札を渡してある。
白いプラスチックの板を掘って名前を印字し、その溝を黒いインクで文字を浮かび上がらせている。
それを裏側にある安全ピンを用いて制服に着けている。
校則で決まっているのだが、最近は個人情報が駄々洩れになると色々突っ込まれているらしい。
そのうち廃止になるかもしれないが、今回はちょうど良かった。
「気を付けて行ってきてくださいね。相手が一人の時を狙って、まずは晴夜に持たせた板を見せてください」
いくら可愛くてもホーンラットはモンスター。
見つかったら攻撃される可能性が高い。
その前に俺の名札を見せて、俺からの連絡だと気づいてもらいたい。
なので、その確実性を高めるため、手紙の送り先に俺の数少ない友人の中で、一番一人になる機会がありそうな相手を選んだ。
やたらと話しかけてくるチャラ男の割にはいい奴な友人は、ほぼ一人になりそうもないので選択肢からは外した。
学校で俺へ話しかけてくる時、何故かいつも一人だったのは、俺を気遣ってくれてたんだと思う。
空気の読めるチャラ男、しかもイケメン。
モテモテだった。
これは、どうでもいい話だったか。
だからといって、今回手紙の送り先へ選んだ友人がモテてない訳ではない。
普通にモテているタイプだ。
俺がさらにどうでもいい事を思い出している間に、風花と晴夜は元気よく穴の中へ潜っていった。
俺が時間差で『無事に届くように』と祈っていると、なんともいえない表情をしたアレクがポリポリと頬を掻いているのが視界の端に入る。
「……俺へ預ければ、あちらへ潜り込んでいる人間に渡して、確実にその友人へ届けてやれたが?」
今さら言うなと全力でツッコミたくなった俺は悪くないと思う。
●
アレクからの無粋なツッコミがあったりしたが、風花と晴夜は無事に任務を遂行してくれた。
しかも、友人からの『了解した。そちらも気を付けろ』という短いメッセージの書かれたメモと、俺の物と交換したのか友人の名札を持って帰ってきたのだ。
これは大成功と言えるだろう。
友人の名札を大切にポケットにしまっていると、晴夜がもう一枚の名札を差し出してくる。
「え? 俺のは返してもらったんですか」
確かに名札交換なんて、カップルでもない限りおかしいかと思いながら晴夜の手にある名札を受け取ってひっくり返す。
しかし、そこに書かれていたのは俺の名前でも、手紙の届け先の友人の名前でもない。
そこにあったのは、手紙の届け先の選択肢から外した方のイケメンチャラ男な友人の名前だ。
「相変わらず、名前までキラキラしてますね」
どういうやり取りがあったかわからないが、たぶん手紙を受け取った友人がイケメンチャラ男を呼び出して、俺からの手紙を読ませたってところだな。
この二枚の名札は、お守りとして大事に持っていこう。
ここから脱出するにあたって、俺が持って行く物は、ポケットに入れてあったスマホと弁当箱を包んでいたハンカチ。友人の名前の書かれた名札が二枚。
それと物ではないが──。
「風花、晴夜。一緒に来てくれますか?」
「「ヂュッ!」」
異世界で出会ったホーンラットが二匹。
決行は明日の夜。
ドキドキするが、アレクがイラッとするぐらい落ち着いた表情をしているから、きっと大丈夫だ。
それでも、なんともいえない不安が込み上げてきて、風花と晴夜を抱きしめながらベッドの中で落ち着きなく寝返りをうち、結局眠れたのは朝方になってからだった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
主人公にも一応友人はいたのです。




