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本日はとりあえず3話あげておきます。
字間の空け方とかだいぶ変わってると思います。
4話目ぐらいまで3年ぐらい前に書いてありましたm(_ _)m
「あれ……?」
鉄格子越しに向かい合ってお喋りしながら簡素な食事を終えた俺達は、話の続きは明日だとそれぞれ備えつけのベッドへ寝転がったのだが、視界に入った違和感に俺は思わず声を洩らす。
「どうかしたか、アカリ」
地下牢は静かなため、俺の小さな呟きはアレクへ届いたらしく、すぐに心配そうな声が飛んでくる。
「いえ、牢の隅に穴みたいなのがあって……」
アレクに答えながら、俺は横たえた体を起こして、穴らしき場所へと歩み寄っていく。
広いとは言えない牢なので、すぐ穴らしきものが見えた部屋の奥へとたどり着き、しゃがみこんでまじまじと眺めてみる。
穴といっても大きさは三十センチメートルぐらいで、俺の頭がやっと通るぐらい……でも、牢にこんな大穴開いてるなんて問題ないのか?
しゃがみこんで穴を覗き込むが、中には暗闇が広がっているだけで、何も見えない。
もちろん、牢にも明かりはあるので夜も更けて来たとはいえ、牢の中は十分に明るいが、穴は深いらしく入口ぐらいまでしか届いてないのだ。
「……誰か脱走でも企てましたか?」
「いや、最近は俺しか入ってない筈だ。それにここは身分の高い人間用の牢だからな、穴を掘って脱獄するような気合のある奴は入れられないと思うが……」
俺の疑問に、向こうの牢からアレクが答えてくれる。
ちょっと突っ込みたい単語もあったが一回それは置いといて、アレクを信じるならこの牢はしばらく使われてないらしい。
「経年劣化……?」
もう一度、穴へと顔近づけてブツブツと呟いていると、穴の中からヌッと何かが出てくる。
「わっ!」
「アカリ!? 離れろ!」
驚いて体を退いた俺に、アレクも驚いたように声を上げ、そこへさらに鋭い警告の声が続く。
ズリズリと尻もちをついた体勢で後退る俺の目に映ったのは、穴から顔覗かせた白い体毛を持つ──可愛らしいネズミらしき生き物。ただし、額に小さめながら鋭い角が生えてる。
「って、大きい……」
さすが異世界……いや、地球にもいたか、大きなネズミっぽいやつ。カピバラとか、ヌートリアとか。
「それはホーンラットっていう魔物だ! おい! 誰かいないのか!」
鉄格子を体当たりしそうな勢いで掴んでアレクが叫ぶが、見張りの兵士がやって来る気配はない。
「これが、魔物……」
ホーンラット──直訳すると角ネズミか。自動翻訳のルール的なのどうなってるのか気になるところだ。
何で突然英語なんだ。
「アカリ!」
そんなことをのんびり考えていたら、アレクの声と同時に腹部へドンッと衝撃が来る。
「っ!」
見下ろすと、そこには俺の腹部へしがみついたホーンラットの姿がある。
見れば見るほど、大きなハムスターみたいな体型で愛らしいが、これは魔物──魔物なんだよな?
魔物って、何かゲームとかアニメのイメージだと、人間を襲う危険な生き物っていう認識だったんだけど。
「なんか、可愛い?」
角が当たらないようにしてくれてるし、くりんとした目は真っ青でキラキラしてるし、毛ももふもふっとしてて触り心地最高だ。
「えぇと、これは誘惑する攻撃とかですか、アレク」
戸惑ってアレクを振り返ると、とんでもなく高速で首を横に振られる。
「いやいやいやいや、普通に額に生えた角でぶっ刺して来たり、噛んできたりする筈だぜ?」
「そうなんですか?」
一応本人(?)に確認してみたが、俺のお腹の上で可愛らしく首を傾げている。
「俺を攻撃しますか?」
ふるふる。
「仲良くしてくれるんですか?」
チュッ、と少し低めながら可愛らしい鳴き声と共に、たしっと短い前足を上げてくれた。どうやら仲良くしてくれるらしい。
「俺の言ってること、わかるんですね。これ食べますか?」
ホーンラットにさっき食べきれなかったパンを差し出すと、すぐにパンを短い前足で抱えて食べ始める。
「……可愛いですねぇ」
まさにハムスターぽい動きに、俺は思わずほっこりしてしまう。
「もしかして……。アカリ、召喚された時に自分のステータス──あーっと、数値とか技能みたいなのの一覧見られるようになったよな?」
アレクが心配そうに鉄格子へ張り付きながら、やけに回りくどい言い方で訊ねてくる。
「俺も含めてクラスメイトなら、たぶんステータスで通じると思いますよ。で、それが見られるようになったか、ですよね」
「あぁ。何か変わったのなかったか?」
「一応ざっと見ましたが、変わったのと言われても、俺の世界ではもともとステータスなんてものは存在しないので、何が変わったものに該当するかわからないんですが……」
ホーンラットを抱きかかえたまま、俺は再度表示させた自分のステータスを眺めて首を傾げる。
俺も少しはゲームをするからステータスとか見たことはあるが、さすがに現実になったステータスだとよくわからなかった。
表示自体は体力とか魔力とかなのでわかりやすいが、比較対象がいないから、自分の数値が高いのか低いのかも微妙だ。
ゲームによって、そういう値とかもまちまちだし。わかりやすく言えば、有名ドコロな竜なクエスト系と最終幻想的な系の二つですら全然違うのだから。
「アカリが嫌でなければ、見せてくれるか?」
見せろとか言われても、俺にはやり方がわからないので、思わず無言でアレクを見る。
「ステータスオープンと口に出してみろ」
「えぇと、ステータス、オープン?」
なかなかに恥ずかしかったが、言われた通り口に出すと、先ほど見たばかりの半透明なステータス画面が目の前に現れる。
先ほどはじっくり見られなかったので、向こうの牢の中から見てくるアレクの視線を感じながら、俺も自らのステータスを眺める。
名前、年齢、体力、魔力と続いていき、数字で表されるステータスの下には文字列が並んでいる事に気付く。
「スキル、ですか」
「そうだ」
スキルの最初にある『自動翻訳』というのは、召喚された時に組み込まれているという特典のやつだろう。
つまりこれはクラスメイト全員にあるスキルなんだろう。
その次からが、俺独自のスキルという事か。
『空間魔法』『鑑定』
このあたりは、ラノベ好きなクラスメイトから聞いた事があるスキルだ。
「空間魔法に、鑑定とは……さすが異世界人だな」
「珍しいんですか?」
「あぁ、どちらもかなり珍しい。そのどちらか持ってるだけで、引く手数多だし、下手すれば監禁してお仕事コースもあり得る」
「うわぁ……」
聞きたくなかった補足情報に、思わずそんな声を洩らした俺に、アレクが優しく微笑んだのが見えて少しイラッとする。
原因はアレクの補足情報だからな。
そんな俺のささくれた気持ちを察したかのように、パンを食べ終えたホーンラットがすり寄ってきてくれて、そのもふもふした体毛を撫でて癒やされる。
「まぁ、お前らに関しては王家が後ろ盾になるから、手を出す馬鹿はいないから心配するな……って、地下牢にいるアカリに言っても仕方ないか」
「思い切り王様に逆らっちゃいましたからね」
今さらながら自分の短慮を後悔……しないな、特に。
遅かれ早かれ、俺みたいに流されず疑り深いタイプは、クラスメイト達を扇動しようとしている王様にとって邪魔になって地下牢行きだったと思う。
下手に戦闘訓練始まってからじゃなくて良かったかもしれない。
戦闘訓練中の事故で始末とか、普通にありえそうだ。
もしかしたら戦闘訓練中に消されてたかも、とアレクに冗談混じりで話したら、真剣な顔で頷かれてしまった。
逆に考えると、ここは安全地帯かもしれない。
「王の事より、今はアカリのスキルだ。たぶん、最後にある一つがそうだと思うんだが、正直俺も初めて見るな」
アレクの言葉で、そういえばスキルを見ていたんだと俺も思考と視線をスキルへと戻す。
問題のスキルは、アレクが最後の一つと言っているからには、鑑定の次にあった『生活魔法』の事ではなく、俺のスキル欄の一番下にあるスキルの方だ。
アレクが初めて見たというそのスキルの名前を、俺は知っていた。
スキルの名前は──『動物愛護』だ。
思わずもふもふと撫で回していたホーンラットを見る。
このホーンラットを撫で回していたせいで、新しいスキルが生まれた……とかなんだろうか。
確かに動物は好きだが、そこまで動物愛護の精神に溢れていたつもりはないし。
言葉の意味はわかるが、何故スキル欄にこの言葉があるのかがわからない。
「動物を可愛がると何かあるスキル……という事でしょうか」
「スキルを鑑定出来るか?」
「あ、そうですね……って、どうやれば」
「俺が知ってるのは、鑑定したい物を注視するってやり方なんだが……」
「やってみます」
動物愛護スキルを鑑定スキルで鑑定するため、アレクから聞いたやり方を試してみるが、いくら文字を見つめてみても変化はない。
そういえばと思い返してみれば、気付いていなかったとはいえ、こちらの世界に来てからも何回か何かを注視したがその時に何か見えたり聞こえたりもしていない。
もしやと思い出したのは、ステータスをアレクに見せるため声に出した、あの恥ずかしい一言だ。
「鑑定……?」
気恥ずかしさを耐えながら、スキル名を口にしながら動物愛護スキルを注視する。
すると動物愛護スキルの文字の脇に、吹き出しのようなウィンドウが現れる。
俺の鑑定スキル限定かはわからないが、スキル名を口にするのが発動の引き金になっているんだなと思いながら、出て来た吹き出しの文字を目で追う。
そこにはこう書かれていた。
『熟練度が足りないため鑑定不可』
「……熟練度が足りなくて、鑑定出来ないようです」
少し期待していたため、呟く声が自分でもわかるくらい落ち込んだものになってしまった気がする。
向かいの牢の中から俺を注視していたアレクは、俺の答えを聞くと「それは残念だったな」と言いながら、肩を竦めて笑顔を浮かべる。
気にするなと言わんばかりの笑顔に、俺はつられたように頬を緩ませる。
「だが、熟練度が足りないって事は、数をこなせば鑑定出来るようになるって事だ」
励ましてくれるアレクに大きく頷いて返した俺は、
「そうですね、じゃあ手始めにアレクでも」
と冗談混じりに口にして、アレクを鑑定しようとして……。
「…………鑑定阻害アイテムにより、鑑定不可?」
「あー……悪い、それ持ってるわ」
アレクに対する大きな疑問が一つ増えてしまった。
「一応、これでもそこそこ重要人物でな。色々対策してるんだ」
俺の反応を見たアレクは、冗談めかせて答えたが、それ以上は答える気は無さそうなので、俺もあえて聞かなかった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
ネタ被りなどのお知らせありましたら、即消す予定の作品となっております。
ベタベタな展開なので、被ってそうで怖いのですが、ベタベタ好きなのでついつい書いてしまいました。




