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本日2話目です。6話ほどで一応の完結となる作品ですm(_ _)m
「俺の話の前に、一つ素朴な疑問いいですか?」
「なんだ? 女の好みでも聞きたいのか?」
悪戯っぽく問い返してくるアレクに、俺は小さく肩を竦めてから言葉を紡ぐ。さん付けはいらないと言われたから、遠慮なくアレク呼びだ。
「それはまた今度で。聞きたいのは──どうして言葉が通じるのか、です」
最初からずっと違和感があった。
どう見ても日本語なんて話しそうもない、ハリウッド俳優みたいな王が普通に流暢な日本語で話しかけてくるのだ。
ラノベだと言語翻訳とかあるらしいが、さっき見たステータスにはそんな項目はなかった。
「あー、それな。俺も今アカリと問題なく話せてるよな?」
「はい。特にタイムラグもなく、アレクの言葉がわかりますし、俺の言葉も通じてますよね?」
「あぁ、通じてるな。これは、召喚時の陣に組み込まれてるらしいぞ。召喚して言葉が通じなければ話にならないからな」
そんな単純な話だったとは。
まぁ、助かるからいいか。
そう心中で呟いていると、くく、と喉を鳴らして笑っているアレクに気付く。
「無愛想かと思えば、意外とわかりやすいな、アカリは。……単純な理由だが助かるな、みたいな事を考えただろ」
「その通りですが、そんなに顔に出てましたか?」
思いがけない言葉に、俺は自分の顔を軽く撫でる。
クラスメイトには、何考えてるかわからないと評判だったんだが……。
「これでも人生経験長いからなー。しかし、普通は何で異世界から来たこと知ってるんですかー、とか聞きたくならないか?」
俺の反応を楽しそうに見ていたアレクは、その場でドカリと胡座をかいて悪戯っぽく問いかけてくる。
そういう仕草もイケメンだ。
無駄にキラキラした騎士団長より、俺はアレクの方が好感が持てるな。
そんな場違いな事を考えながら、俺もその場で胡座をかいて座り込む。
清掃が行き届いてるのか、石の床はそこまで汚れてないので、忌避感は少ない。
「あぁ、そうですね。そこまで頭が回らなかったです。言葉が通じるのが不思議だったので、気をとられてました」
ひんやりとした石を制服のズボン越しに感じながら、俺はアレクの突っ込みに自分の思考を振り返って素直に口にする。
取り繕うまでの事でもないし、見るからに外国人な見た目から出てくる違和感ない日本語は、なかなかの衝撃だったようだ。
「まぁ、俺の方から見ても違和感あるからなぁ。知らない奴からすれば相当不思議かもしれないな」
馬鹿にした様子もなくアレクはそう言って、豪快に笑っている。
アレクは凶悪犯にも見えないし、性格も良さそうだし、イケメンだし……イケメンは関係ないが、どうしてこんな所にいる理由が想像つかないな。
と言うことは……。
「結婚詐欺、ですか……」
呟いて納得する。あり得そうだ。
アレクは初対面の男である俺にすら優しい。
つまりは女性にも優しいだろうから、勘違いされていざこざが起きたんだろう。
「いやいやいや、なんでそうなった? まさか、俺がここにいる理由とか言わないよな? ちょっと誤変換されてるだけだよな?」
「え? 違いましたか? てっきり結婚してくれるって言ったじゃない、とか勘違いした女性達から訴えられたのかと」
「やけに具体的だが、全く違うからな? 俺は好きになった相手一筋だから……って、まず結婚詐欺なんかしてないぞ? そんな不誠実な男に見えるのか?」
イケメンはシュンとした表情してもイケメンで、女性ならイチコロだろうなぁ、とか思いつつ、俺は首を傾げて見せる。
「見えませんけど?」
「……お前、大人をからかって楽しいか?」
恨めしげに俺を見てくるアレクだが、そこに怒っている様子は欠片もない。
「いえ、相手の本性を知るには、怒らせるのも一つの手なので……なんて冗談ですよ。アレクがいい男なので、そうじゃないかと邪推してしまいました。誤解してすみません」
真面目な顔で本音を口にすると、アレクの目が探るように鋭くなったので、俺は建前を付け足して、頭を下げて謝罪しておく。
「アカリは食えない奴だな」
「えぇ、そうですね。俺なんか食べても美味しくないですよ?」
苦笑いのアレクへ、わざとらしく笑って返すと、大袈裟な仕種で肩を竦められた。
日本人的和顔には似合わない動作も、アレクがするとよく似合う。
「じゃあ、そろそろ俺の世界の話をしましょうか? どんな事が聞きたいんですか? もちろん、俺に答えられる範囲の事しか話せませんが……」
アレクで遊ぶのも飽きたので、俺はニコリと笑って鉄格子越しにアレクを見やる。
通路は広めなので、例え鉄格子の隙間から手が出せても、アレクには届かないだろうな、なんてどうでもいい事を考えながら……。
アレクが聞きたがったのは、俺の住んでた世界がどんな世界か。
色んな話をした。
まずは食べ物の話。
何が好きか。どんな食べ物があるか。これに関しては特に日本は強いと思う。
で、納豆にドン引きされた。意外と甘いもの好きらしく、甘いものの話には鉄格子を掴んで、身を寄せて聞いてた。
どんな娯楽があるのか問われ、ファンタジーなアニメや漫画の話をする。
え? 普通の事だよな、と驚かれる。
剣と魔法の世界だから、当然かもしれない。と言うか、こちらが本家だから仕方ないか。
町の様子、通っていた学校のこと、便利な道具が溢れる日常生活。
こちらの話の方がアレクにはファンタジーなようで、感嘆の相槌を何度も打っていた。
「政治とか宗教の話とかはいいんですか? まぁ、話せと言われても俺に答えられる範囲なんて、大した話ではないですけど」
ひとしきり話し終わり、俺はテレビの話に興味津々なアレクへ問いかける。
「あー……異世界からの召喚は初めてじゃないし、迷い込む人間も稀にいるからな。そういうお堅い話は結構資料があるんだよ。俺はどうせなら、資料に残さないような話が聞きたかったんだ」
「まぁ、俺が話したような事は確かに資料には残さないでしょうね」
アイドルとかエロ本の話とか、ウケてたなぁ、イケメンなのに。
それより、今アレクは重要な事を言った気がする。
「あの、召喚は初めてじゃないんですか? って、そうですよね。前がなければ言葉が通じる前提で進めませんよね」
俺が王の立場なら、初めての異世界からの召喚なら、言葉が通じない体で話し始める。そうしなかったからには言葉が通じる自信というか、通じると思っていたんだろう。
「あぁ、その通りだ。だいぶ前だが、きちんと資料は残ってる。言葉は通じたって、記述もあったな。さすがに俺がアカリに聞いたような話は残ってなかったが」
「以前も戦士として、ですか?」
「いや、神と語らう神子として、だそうだ。まぁ、その時は一人だったらしいし、大きな争いもなかったからな。その神子は天候を操り、乾いた大地に雨を降らしたりしたようだ」
「平和な時代だったんですね」
「そうらしいな」
「召喚された人間にとって迷惑なのは一緒でしょうが……」
いや、でも、もしかしたら、私って特別なの? とか崇められて自分の立場に酔って、悦に入ってた可能性もあるか、と内心で呟いた……つもりだったが、向かいの檻の中でアレクは何とも言えない顔をしていた。
「お前、見た目は無害そうだが、なかなか毒吐くなぁ」
「……どうも、こちらへ来てから、口が軽くなってしまったようですね」
「もしかして、ここへ放り込まれたのも?」
「つい、王の言葉が胡散臭く、突っ込んでしまいました」
てへっと似合わない可愛い子ぶった笑い方をしたら、ゲラゲラと笑われた。
失礼だなぁ、と俺も笑いながら返してると、俺の腹部からぐぅーと情けない鳴き声がする。
そう言えば、召喚されたのは夕暮れ時だ。そろそろ夕飯時なんだろう。
今日は豚肉が安い日で、肉じゃがの予定だったんだが。
思い出したら、余計に腹が空いてきた。
「心配しなくても、飯ぐらいは出てくるさ。アカリが話してくれたような美味い飯は無理だが……」
顔に出ていたらしく、アレクが冗談っぽく告げて、入り口がある方向を示す。
「食べられれば何でもいいですよ」
同級生達はまだ飴の時期だから、きっときらびやかなごちそうでも食べてる頃だろう。
同級生の事を少しだけ考えていると、年若い兵士が二人分の食事の載った金属のワゴンを運んでくる。
年若い兵士は、何処か悲しげな瞳をアレクへ向けてから、一言も発する事なく食事を鉄格子にある搬入口からお盆ごと差し込んで去っていく。
「お仲間は、今頃、王に招かれてテッカテカなゴッテリ料理を食わされてるぜ、きっと」
「……それは、俺にはこちらの方が良かったかも知れませんね」
俺の視線を軽口で流したアレクは、胡座をかいた足の上にお盆を乗せて、パンと野菜スープだけの質素な食事を口へ運んでいる。
「そう言えば、迷い込む事もあるんですか?」
「あぁ。滅多にないが……。こっちはほとんど言葉が通じないから大変だ。で、珍しい力や知識は持ってるから、大体がお偉いさんに保護という名の囲い込みにあう」
「へぇ。……そう言えば魔王っているんですか? 俺の世界でのお話では、召喚された勇者が戦うのは、魔王ってパターンが多いんですが」
「魔王っていうか、魔族の王はいるな。……うちの王にとっては、悪人なのかもな」
珍しく歯切れ悪く答えたアレクは、行儀悪く固いパンを食いちぎっている。
「……そう言えば、俺達がここへ召喚された理由が、それでしたね」
素朴な野菜スープを皿から直接飲みながら、俺は王の胡散臭い演説を思い出してポツリと呟く。
「この国はあまり鉱山資源が豊富じゃない。隣国である魔族の国のキタル国には、色々な金属が出る大きな鉱山が何ヵ所もある。そこに野心家で強欲な我が国の王。何が起こるかは子供にだってわかるよな」
つらつらと話すアレクの口調は軽いが、チラリと見やったイケメン顔に笑顔はない。
「魔族が悪というのは……」
俺がポツリと洩らすと、アレクはにっこりと笑った。
「鉱山くれないからだろ」
あの王様アホなんじゃないかと心底思った……つもりだったが。
「本当に、その顔でサラッと毒吐くねぇ」
ポロッと口から出ていたようだ。本当に気をつけないと。
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