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だいぶ前から書いていた作品です。
思いついた時に書き足すのを繰り返してたので、もしかしたら辻褄が合わなくなったりしてるかもです。
何とか一応の終わりを迎えさせられたので、勿体無い精神で上げてます。
ここまでだとあまりハッピーエンドではない話なので、苦手な方はまわれ右でお願いいたしますm(_ _)m
公民の授業だっただろうか。
習ったのは、民主主義と多数決。
でもさ、ひねくれ者の俺は思ったんだよ。
少数派は、間違いなのか?
多数派は正しく、正義足り得るのか?
少数派は──悪い事なのか、と。
●
ある日の放課後、俺とクラスメイトはラノベのテンプレというやつに出会った。
その日、帰りのホームルームが終わり、担任が教室が出て行った途端騒がしくなる室内──俺は手早く帰り支度をしていた。
「カラオケ行くのに頭数足りねぇ、誰か誘わねぇか?」
「あ、空気読めない君でも誘うか?」
「あり得ねぇし、あははは」
ちなみに空気読めない君とは俺の事だ。
俺を笑ってるのは、チャラ男ぶって頑張ってイケメンになろうとしてるグループの奴らだ。
本当のチャラいイケメン陽キャグループは、俺なんかスルーしてるし、すり寄ってくる雰囲気頑張ってイケメンなろうとしてるグループの存在もガン無視だ。
あと騒いではいないけど目立っているのは、クラスのリーダー格とその取り巻きだ。こちらは頭がいい奴が多い。
どちらも、それぞれ雰囲気が似た女子グループもセットだ。
ちなみにどうでもいいが、雰囲気頑張ってイケメンになろうとしている、エセ陽キャグループには、女子はいない。どうでもいいが。
あとは、女子グループの派手でお金持ちな女子とその取り巻き。
運動部所属のサバサバ女子グループと、同じく運動部所属の人気者男子の体育会系グループ。
何処にも属さない孤高を気取る不良。
意外と完全なぼっちはいない。
生徒会入りが約束されているリーダー格な同級生のせいだろう。
『おかげ』じゃない。
俺にとっては『せい』だ。
俺はこのクラスで浮いている。
別に厨二病とかこじらせてる訳でも、反社会的な訳でもなく、ただ気持ち悪いから。
多数派を正しいとして、空気を読まない少数派(俺)は異物として弾く。
なぁなぁと付き合う手もあったけど、それすら面倒臭い俺は徹底的に空気を読まなかった。
普通のクラスでは浮きそうな不良や、オタク系すら空気を読む中で。
おかげで、さっきみたいな陰口は普通だし、存在しない者になった気分だ。楽だけれどさ。
俺はさっさと教科書をまとめ、鞄を手に取り、出口へ向かう。
嘲笑う声なんて気にしない。
こっちは好きでぼっちなんだ。
もう少しで扉に手が届くというタイミングで、たまにこっそり会話する、数少ない友人に近い存在のクラスメイトと目が合った。
その瞬間、教室の床が光輝き、俺とクラスメイト達は、異世界へと召喚された。
●
別に俺はそこまでラノベに詳しい訳じゃないが、さっき目が合ったクラスメイトが好きらしく、色々話して聞かせてくれていた。
まぁ、気付いたら近寄ってきていて、いつの間にか隣でベラベラ話してるだけなんだが……。
今目の前に広がった光景は、そいつから聞いていたテンプレの一つ『クラスごと異世界召喚で勇者になる』ってやつにそっくりだと思う。
光が収まり、辺りを見回すと、そこは映画とかでしか見たことがないような、中世の神殿っぽい場所だった。
目の前には居並ぶ兵士と、その中心に明らかに格好が違う人物が一人。
「よく来てくれた。異世界の勇者達よ! わしはワラッカ国国王、ダグラスだ。混乱しているだろうが、まずはわしの話を聞いて欲しい!」
朗々と響く声の持ち主は、壮年の渋めな男性だ。本人の申告を信じるなら、俺達を召喚した国の王らしい。
服装は確かに際立って偉そうだから、間違いないと思う。
「異世界?」
「勇者って何だよ?」
「家に帰してよ!」
「テンプレきた~!」
皆が口々に叫ぶ。
一人、変なの混じってた気もするが……。
叫んだりはせず、冷静に周囲を観察しているクラスメイトも数人いる。
これなら、勇者になって魔王、またはこの国の敵と戦え、みたいなテンプレを言われても全員が流されたりはしないだろう。
そんな期待をした数時間前の俺を殴りたい。
結果は、見事に流されてる、なうだ。
建前としては、俺達は魔族という『悪い』存在と戦うために喚ばれたらしい。
異世界の人間は基本的に魔力が高く成長も早い上に、特別なスキルというものを召喚される際に得られるそうだ。
自分の能力やスキルは、ステータスと口に出せば誰でも見られるらしく、実際小さくステータスと呟いたら見られた。
他のクラスメイトも試してるようで、あちこちから驚いている声が聞こえる。
しかし、気になるのは一点。
「その『悪い』とは、誰にとっての『悪い』なんでしょうね………」
つい心の声が洩れてしまい、ざわついていた空間が一気に静まり返る。
演説していた王様の額の辺りがピクピクしてるのが見えるが、俺を責めるような眼差しで見ているクラスメイトは気付かないだろう。
「そんな言い方はないだろう? 国のトップの方がわざわざ説明してくださってるんだから」
次期生徒会入りが約束されてるクラスのリーダー格──前園勇也が、やれやれと肩を竦めて笑顔で俺を諌め、クラスメイトもそれに同調して頷いている。
鳥肌が立つほど気持ち悪いが、今のは俺が悪いから、小さく頭を下げておく。
空気を読まないからといって、礼儀は忘れたつもりはない。
相手の話は最後まできちんと聞いておくべきだろう──今後のためにも。
王様は大袈裟な動作で朗らかに笑って見せ、俺を許したというか興味を失った様子で、また話を再開している。
どうやら話を聞く限り、まずは戦闘訓練をしてから、モンスター相手に実践訓練をし、国の軍隊と共に魔族との戦いへ臨む予定らしい。
途中でアイドル顔負けなキラキラとした美少女な姫が現れ、さらにイケメン騎士団長が現れ、戦闘訓練という言葉に躊躇っていた男女共に士気が上がる。
どう考えても、俺達を懐柔しようとしているようにしか見えないのは、俺がひねくれているせいだろうか?
異世界に来ても、空気が読めてないのは俺ぐらいだな。
他のクラスメイトは、自分のスキルを確かめたり、王様達に話しかけて質問したりしている。
「あの! 私達、元の世界に帰れるんでしょうか!」
挙手して質問したのは、派手女子グループの中心人物──名前なんだっけ? 白崎……花音だったか。確か。
「申し訳ないですが、今は方法がないのです。ですが、魔族を討ち滅ぼした暁には、必ずあなた方を元の世界へお帰しする方法を探しだします。そのためにも、どうか我々に力をお貸しください」
白崎がキラキラした誠実そうな騎士団長から手を取って丁寧な説明を受けると、不服そうだった女子グループのほとんどはおとなしくなった。
白崎がくねくねとしなを作って騎士団長へ媚びてるのもデカいな。
俺なら、空気を読まずに突っ込みそうだ。
「何で見ず知らずのあなた方のために命を賭けないといけないんですか?」
「どうして無理矢理喚んだあなた方へ従わなければならないんですか?」
「帰す方法がないのに喚ぶなんて、無責任だとは思わないのですか?」
「あぁ、俺達は捨て駒だから使用後はどうでも良かったと思っていいでしょうか?」
先ほどよりさらに静まり返る周囲。
刺すような視線が、教室でいない者扱いだった俺へ集中する。
ヤバいな。冷静なつもりだったが、俺も少し……いや、かなり混乱してるらしい。
心の声が駄々漏れ過ぎだろ。言うにしても、タイミングを完全に間違えた。
「うわぁ、本当に空気読めない君過ぎ」
そう悪意に満ちた嘲笑をくれたのは、頑張って陽キャぶっている痛々しいグループの原田太郎だ。
「今は一丸となって、この国のために力を貸して、全て終わってから地球へ帰る方法を探してもらうべきだろう?」
「困ってる人に力を貸してって頼まれてるのに、冷た過ぎない?」
前園、白崎と影響力のある二人の言葉が続き、俺を説得……ではないな、非難してくれたおかげで、周囲の視線はさらにキツくなる。
わかりやすい構図だ。捻くれた俺(少数派)対正義のクラスメイト達(多数派)。
思わずため息を吐きそうになる。さすがに自重して、ため息代わりにさらに反論しようかと思ったが、気付くと俺の両脇には兵士がいて、不穏な気配を感じて言葉を飲み込む。
「彼は不安で混乱しているようだ。少し休ませてあげなさい」
穏やかに笑った王の命令に、俺は両脇を兵士に固められ、クラスメイトから引き離される。
あの穏やかな笑顔が、どう見ても仮面にしか見えない俺は、相変わらずのひねくれ者なんだろう。
だから、クラスメイトの間で目配せが交わされても、滲むのは明らかな安堵だ。
正義感に突き動かされてる空気の中じゃ、俺は邪魔な異物だろう。
しかし、王は隠す気はないんだろうか?
神殿っぽい建物から出て、兵士に挟まれたまま馬車に乗せられて着いた先は、そびえ立つご立派な西洋風の城──の裏門。
馬車の小窓から眺めていると、裏門を通り抜け、連行される先はどう見ても医務室や病院っぽさは無く、ましてや客室でも無さそうだ。
「ゆっくりしてくれたまえ」
ガチャリと金属の扉が閉まる。
言葉だけは丁寧な兵士により、俺が押し込められたのは、とても立派な地下牢だった。
●
石造りの牢のひんやりした空気を味わいながら、俺は鉄格子越しに外を眺めていた。
見えるのは石造りの通路と壁、通路を挟んだ向かいの地下牢ぐらいだ。
あれから、たぶん一週間は経ったが、俺は相変わらず地下牢の住人だった。
変わった事と言えば……。
「チュ」
意外と可愛らしい鳴き声と共に、地下牢の壁の穴から出てくる真っ白いネズミ……のような生き物。
マウスのようなスラッと系ではなく、ハムスター系のちょっとボテッとした体型の白いネズミ。目はルビーのような赤で、なかなか可愛いと思う。
続いてもう一匹、
「ヂュ」
ちょっと気だるげな鳴き声で現れるのは、最初のネズミ(?)と色違いの黒ネズミ(?)で、目は真っ青。
異世界なせいか、地球で見ていたネズミとはだいぶ違う。
俺の前で後ろ足で立ち、二匹揃って見上げてくるが、その瞳には知性があるし……これは俺の欲目かもしれないが。
他にあるいくつかの明らかに違う点は、
まずは大きさ。明らかに大きい。二匹とも三十センチメートル近い。
尻尾はハムスターのように短く、体色と同じ色の毛で覆われ、ピコピコよく動いている。
あとは……そこまで考えて、二匹のネズミ(?)が甘えるように、俺のズボンへすり寄って来ている事に気付く。
俺が手を差し出すと、二匹ともすぐにしがみついてよじ登って来る。
そこには、野生らしい警戒心はなく飼い慣らされたペットそのものだ。とても可愛らしい。
ただ、時々当たる額の角が痛い。
そう角だ。これが一番見た目の違いとして目立つと思う。
「人懐こいですね、君達は」
肩に落ち着いた二匹のネズミ(?)を撫でていると、通路を挟んだ斜め向かいの牢の中から話しかけられる。
「……いや、普通懐かないからな、そいつらは」
呆れた様子で話しかけてきたのは、無駄に美形な二十代後半の男だ。この一週間ですっかり仲良くなった。
唯一の地下牢仲間だから、当然かもな。
ネズミ(?)の角をカリカリ撫でてやりながら、俺は地下牢初日を思い出していた。
「どうしたものでしょうか」
元から俺の話など聞いてもらえなかったのに、これで俺は完全な異物だろう。
孤高の不良をやってる──狩野銀士には、少し期待してたんだが、戦闘狂なのか力に酔ったのか、隅っこでフッフッとか笑ってるだけだったな。
意外とあの姫様にやられた口かもしれない。
確認のしようもないが。
まぁ、あそこには彼らがいるから大丈夫だと思えるのが大きい。
彼らがいるなら、クラスメイトも最悪な事態にはならないだろう。
彼らは良くも悪くも口が上手い。
あの混乱の最中も、冷静に成り行きを見守っているようだった。
「まずは自分の心配ですか……」
一人暮らしが長いせいで、つい独り言を呟いてしまう。
誰も聞いて……「おい、新入りさん。異世界から来たんだってな」なくはなかった。
声の方へ視線を向けて、通路を挟んだ向かい側の牢の中に人影がある事に気付いた俺は、鉄格子へ近寄る。
鉄格子へ顔をくっつけるようにして外を窺うと、さっきはわからなかったが、通路を挟んで右斜め前の地下牢の中に人影がある事に気づく。
「……そうだと言ったら?」
「そちらの世界の話を聞かせてくれ!」
俺が反応すると、相手からはさらに顕著な反応が返ってきて、鉄格子の隙間に顔を挟むようにしてこちらを見ていたのは、金髪の青年だ。
無駄に美形の。
彼らの中の一人である友人の話では、こういう場合は確か美少女がテンプレだと聞いていたが、残念ながら完全に性別は男だ。
まっ平らで筋肉質な胸元が見えるから、男装の麗人なんて可能性もない。
しかし──、
「無駄に美形ですね」
友人もなかなかのイケメンだったが、好奇心いっぱいな表情で見てくる青年は見た目は正統派なイケメンだ。
思わず、無駄に美形と繰り返す程度には。
「まぁ、地下牢じゃ無駄かもな。それより、話を聞かせて欲しい。異世界には魔法がないんだろ?」
性格もイケメンらしく、俺の暴言を気にせず笑って軽く流し、キラキラとした目で俺を見つめて無邪気に問いかけてくる。美形なのは否定しない辺り、言われ慣れてるのか。
俺がここへ入る事になったのは相手にも予想外だろうし、まさかスパイを用意したりもしないだろう。
何より、俺から得られる情報なんて、クラスメイトの誰からでも得られるようなものだ。
つまり、目の前の相手への警戒は、最低限で構わないという事で、俺も相手を利用させてもらう事に決めた。
「えぇ、そうです。俺も話すんですから、こちらの世界の話を代わりに聞かせてもらえませんか?」
潤滑な交渉のため、俺はニコリと愛想笑いをして相手を窺う。
「おう、いいぜ。俺はアレクセイ。アレクと呼んでくれ。そっちは?」
「ありがとうございます、アレクさん。俺は間宮灯と申します。間宮が名字で、灯が名前です。呼び方はお好きにどうぞ」
こうして友好的に、地下牢仲間との交流は始まったのだった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
よくあるネタなので、ネタ被りなどしているようでしたら教えていただけると幸いです。
ササッと削除しちゃいますので。




