第4話 Name
「やっと着いたぁ〜」
森の中でこまめに地図を確認しながら安全性を第一に考え行動してきた俺は安堵のため息と言葉を発した。
「ここが入口か…」
緊張が混ざりながら小声で呟く俺は自分の懐を探る。取り出したのはあの時死んだ山賊達から必要だと思い回収したお金だった。入り口にある出入りする時の適正の価格が分からずに心臓がバクバクする俺はいかにも「大丈夫ですが、何か?」的な顔を自分でしてるつもりで門兵が見える窓の開き口の目の前に立つ。
(いくらだ…)
「旅のものか?」
「っ!は、はい…」
「そうか…」
ジロジロと俺を見る門兵は少しの質問をしてくる。幾らかしか考えてなかったから焦ってしまい俺は心の中で「くっやっちまった…」と嘆いた。
「…15ルーダだ」
「は、はい」
いきなり言われた値段を聞き即座に金の入ってる袋に手を突っ込む。
「は、はい15ルーダです…」
「よし確認した、通っていい」
そう言われると俺は初めての見知らぬ街に入ることができた。今回の入街で気づいたことがあった。俺の金銭感覚というか、山賊達のいた所でも多分だが不法な入街取引を行っていた。あいつらが提示してた額はブラーブの3〜4倍の額だった。もしかしたら物の物価とかも安いのかもしれない、そして山賊達から回収した金があんまり無かった。足りたのは良かったがここから生活するのは難しいだろう。今までは野宿だったがこんな街で堂々と寝るのは流石に不味い。
ということでダンジョンに行こう。だが俺は弱い。けど…ダンジョンはどんどん下へ降りていくほど強いダンジョンモンスターが現れるらしい。1回ではまずやられることはないらしい。しかもここは初心者が使うダンジョンなので二重の安全安心があった。
では…いざ入場!
〜
「ペイッ」と少し入ったら外に放り出されてしまう俺は「あれ?」と思いながら「ペイッ」したこれまたダンジョンの門兵に聞いた。
〜
門兵の話によれば身分証という物が必要だったみたいで、それはその名の通り己の身分を証す証明書だ。
「それどこで手に入れれますか?」
「あそこのデカい建物が見えるだろ。そこの1回の受付で作ることができる。」
「ありがとう」
そう感謝を伝えると…
「しかし今どきこんな事も知らんとは…どこの田舎もんだ?」
「えっ…まぁ結構な田舎もんですかも…」
「ダンジョンに入るには身分証が必要なのは一般常識なのか」とまた当たり前な事が分かり、最後に少し質問をする。
「門兵さん…街の門の出入口ではなぜ身分証は必要ないんですか?」
「さぁな…だが何となくだが価値的な事じゃないか?」
門兵が言うには街に出入りするのは金さえ払えば基本的に自由らしい。それは経済的なことでそうすることで色んな所にある金が回るらしい。逆にダンジョンは強さの証明でもあり、その証明が様々な依頼へと繋がったりするらしい。
俺は自分の中で言葉を噛み砕いてデカい建物に入る。デカい建物の中はデカい広間だった。その奥に左右の壁をつなぐように長い仕切りのテーブルが付いていてその奥側に受付の人達がいた。
「すみません、ダンジョンに入りたくて証明書を作りたいんですが…」
「はい、証明書作りですね。少々お待ちください。」
紫がかる髪で肩らへんの長さの女性がほんわかと対応してくれる。
「〜〜〜です。証明書をお作りになられますと様々な所に情報が送られます。以上で説明が終わりです。」
と真剣に受付の女性の話を聞き入れると最後に…
「ではここにお名前を〜」
俺はここで気付く、自分自身の名前が分からなくなってしまったのだ。昔は山賊達の所に行く前によく自分の名前を言われたと思うが2度目からの人生では山賊達からは「クソガキ」呼ばわりで死んだ後の暗闇の中ではまず自分自身で自分の名前を言うことは無かったから、そうやって過ごしていく内に名前を忘れたのだ。
(俺の名前は…)
当然のごとく迷っていた。新しい名前にしようと考えるが間に自分の名前を思い出そうと無意識に思考がズレてしまう。
(何も思いつかない…)
新しい名前…。もしするなら何にするか。人は名前に願いを込める人が沢山いる。こうなってほしい、ああなってほしい…など。
「お姉さん、名前なんて言いますか?」
ふと聞いてしまうが俺的にはやましいことなど一切なかった。それを感じ取ってくれたのか快く答えてくれた。
「ラベンといいます」
その名前を聞くと何故かピッタシだなと思ってしまう。感覚的な感じだがどこかで聞いたことがあるように気がきた。
受付の女性の話を聞き自分の心に問う。俺の名前は何にするかを…。
(俺は…自由に生きたい、何にも縛られずに生きたい。神すらも敵に回しても7度目のこの人生は俺の為だけに使いたい。)
「デザイア…それが俺の新しい名だ」
そう決めて「デザイア」と書き記す。
「デザイアさんですね…これで登録手続きは以上となります。あっもしかして魔法を使うことはできますか?」
「いえ、使えません」
「分かりました、もし扱えるようになったら知らせてください。」
「はい、分かりました」
「ホッホホ!随分軽く流すの〜」
真後ろから聞こえる笑い声にビクつき話しかけてきた老人から距離を取る。
(なんだこの爺さん…)
「若い者よ…魔法とはどう見ておる?」
「?」
「まさか見たことも無いのか?」
そう言うと爺さんは指先に小さな風の渦を発生させる。
「これが魔法じゃ、お主が軽く聞き流した力じゃ。」
「何かあるんですか?」
「いや何…魔法とは魔力という力の源となるエネルギーを糧に発生させるのじゃ…。魔力は誰の身体にも満ち足りており、そこら辺にも存在している。だがそれを利用できるかは別だ。お主の軽い返事を聞いての…ちょっと心配になったので教えてあげようかなと」
「あ…ありがとう…ございます?」
そう感謝を一応伝える俺はダンジョンへと向かう。
「これしか教えれんのを許しておくれ…。」
なぜ老人はこんな事を教えたのか?最近各地のダンジョンにて異変が起きている。この街ではまだその報告が確認されていない為、入ろうとした彼に声をかけてアドバイスを送ったのだ。魔法は誰にでも扱えるが扱えるものが限られる力である。どう扱えるようになるか…それは本人にしか分からないのだ。
老人がそのダンジョンに入り異変を解決できればいいがそれは不可能だった。ダンジョンは生きている。ダンジョン自身に意思が存在し自身の存在を滅ぼすことができる脅威を認識し除外しているのだから。故にダンジョンは自分が喰えると認識した者を招き入れる。そしてそのダンジョンに異変が生じたのならば大変な事態になる事は容易に想像できるだろう。
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