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86、実家の食事は食べ切れない程出てくる。

 御神木の足元に腰を下ろし空を見上げ、此処を留守にしていた間の出来事を全てではないが、報告する。

 森の香りを運んでくれるそよ風を身体に浴びながら、旅の思い出を整理する。時間にして、太陽の角度が一度傾く位の間たったと思う。


 さっきヤクモが面白い事を言っていた。

「・・・なんだか不思議な感じがします。この場所が、確かに皆と過ごした場所だということは分かるのですが・・・。本当に合っているのか、間違っているのではないかと、まるで夢でも見ているような感覚がします。」と。

 なんとなく分かるような気がする。俺も初めて規制した時は同じ様な感覚を味わったのを覚えている。自宅に着いても、全て知っているのに、覚えているのに、知らない家に来てしまったような感覚。実家ってこんな匂いがするんだと驚いたことも覚えている。自分の部屋に荷物を置き、寝床に寝転がり室内を見渡すと少し思い出す。そうしている間にうたた寝してしまう。母の「ご飯よ。」の声に目を覚まし、居間へ向かう。そこの机に所狭しと並べられた俺の好物。それを一つ口に放り込むと、絶品とは言えないが、美味しいと思える。これがお袋の味ってやつなんだなと思う。一緒に食卓を囲む父と母。その父と母と「最近どうなんだ。」「元気にしてるのか。」「ご飯はちゃんと食べているのか。」なんていう、枕詞から始まるありきたりの会話で、ようやく「帰ってきたんだな。」と思えた。・・・実家なんてきっとそんなものだと想う。

 まぁそれも、何回か帰省し、恒例行事のようになるとすぐにその感覚に慣れてしまったが。帰省の為に乗った電車が県境を越えた辺りで今年も帰って来たなと思える様になっていた。

「ははは。旅をするってのは、そういうもんさ。」

 それこそヤクモ達にとってみれば初めての経験だろう。そう感じてもなんら不思議じゃない。

「なるほど・・・。そういうものですか・・・。」

 不満があるというのではないだろうが、消化しきれない様な表情をしている。

「・・・じゃあ、そんな時は、だ。ちょっと来い。」

 こういう時は、この場所が間違いなく自宅だと認識出来れば良いわけだ。俺も自宅に帰る度に父と一緒にそれを見たものだ。

 ヤクモを引き連れて御神木の根の間を潜り、久し振りの我が家の中へと入る。中に入ると急に気が緩み、軽い眠気に襲われた様な気がした。少し進み立ち止まる。

「ほら、ヤクモ。あったぞ。」

 そう言いながら天井を指差す。その指差す先に視線を飛ばす。

「・・・はい。ありますね。」

 ヤクモは俺の意図に気が付いたのか、静かに微笑む。俺も帰省する度に柱の傷を一緒に見せられたものだ。

「間違いなく俺達の家だろ。」

「はい。間違いなく。」

 天井に空いた穴を見つめながら一緒に大笑いした。・・・あの穴は何時見ても笑えるな。でもこれでヤクモもちゃんと帰ってきたんだなと思えたんじゃなかろうか。


 座ったまま庭を見下ろすと、ジュウザ達が走り回りながらサツキを案内している。あれを案内と呼んで良いのなら、だが。俺の視線に気が付いたジュウザ達は立ち止まって、各々に手やら尻尾やらを振った。それに軽く手を振って応えると、嬉しそうに跳び上がったりした後、再び走り出した。・・・楽しそうで何より。しかし帰って来たばかりなのに元気なものだ。羨ましい限りだ。俺なんて何事もなく・・・何事もなかったとは言い難いが、それでも無事に帰宅出来た事で安心して力が抜けて睡魔の侵入を許してしまったのに。

 御神木の幹を軽く叩く。

「ま、なんだかんだあったけど、無事に戻ってこられた。ただいまって事だ。」

 御神木の葉が風に揺れ細やかに音をさせた。

 その音を聞いて、その場から飛び降りた。

「ご挨拶は出来ましたか。」

 俺が大地に帰還すると、近寄ってきたモモカが尋ねた。

「あぁ・・・。」

「それはようございました。・・・今日はこの後どうされますか。」

「今日はゆっくりしよう。外に出ても良いけど、なるべく早めに帰って来てくれよ。みんなでちゃんと食事をしよう。」

「分かりました。皆にもそう伝えておきます。・・・ですが、本日は皆庭からは出ないのではないかと思いますよ。」

 俺もそう思う。旅行から帰宅して、その日のうちにもう一度出掛けるのは、余程の用事でもない限り御免被りたい。たとえ昼過ぎ近くに到着出来たとしても、自宅の寝床で一眠りしたい。決して宿泊先の寝床が粗悪なものでなかったとしても、そう思ってしまうのだから不思議なものだ。

「そうだな。・・・実は俺もだ。」

 そう返事をしてから、庭の中央へと向かった。庭の中央付近に立ち精神を統一する。久し振りの森の大気を思い切り吸い込む。

 旅の最中は移動に支障が出ても良くないので、ちゃんとした稽古は殆ど出来なかった。あまり本格的にやってしまうと、歩みを進めるにも、他の魔物に対応するにも、影響が出てしまうかもしれないからな。

 緊張から解き放たれた所為か今までより神経が研ぎ澄まされ、目を閉じたままでかなり広い範囲の気配が、森の様子が感じ取れる。自分でも驚く程の広さにも関わらず、動揺もない。まるでそれが当り前の事のように出来ると初めから知っているかのように感じる。これはこの森だから可能な事なのか、それとも俺がこの旅で成長したのは定かではないが。

 そこからしばらくゆっくり身体を動かす。実に基礎的な動きを確かめる様に。今一度始めからやり直すつもりで・・・。

 集中していて気が付かなかったが、自分の中で「まぁ、これくらいやれば今日は充分だろう。」と思えたところ満足し、稽古を終えると子供達が周りを一定の距離を保ったまま見ていた。・・・確かに急に静かになった様な気はしていたが、俺がそれだけ深く集中していたからだと思っていたが、実はそうではなかったらしい。お恥ずかしい。

「・・・見てたのか。面白かったか。」

 俺としては別に面白い事をしていたつもりもない。それこそ基礎の基を攫い直しただけ。見た目だけならはっきり言ってつまらない地味なものだったはずだし。

「・・・はい、とても。良い稽古になりました。」

 そう答えたのはミナ。普段なら頷くだけに留まるであろうミナが誰よりも先にそう答えた事に驚く。・・・これは少し稽古の内容を見直さないと駄目かもな。

「・・・そうか。それなら、良かった。・・・じゃ、今日は久し振りに皆で遊ぶか。」

 そう言うと、子供達が歓喜の声を上げ跳び上がった。喜んでもらえて何よりだ。

「但し今日は、庭の中でって事で。」

 その後、日が沈む少し前まで俺も子供達と一緒に走り周った。


 庭で皆で食事をした。久し振りに何も気にせず、何者も警戒せずにゆっくりと食事をする事が出来た。慣れない旅を無事にやり遂げた事に対する労いを込めての大盤振る舞い。ま、体の良い理由をくっつけた打ち上げだ。そしていかにも実家の食事といった感じで、とても楽しかった。

 食事が終わると、子供達も流石に疲れが溢れたらしく、一気に眠気に襲われ早々に自分の寝床へなんとか辿り着き、到着と同時に夢の世界へと旅立っていた。モモカもスーアンもその子供達の姿を見て遂に最後の緊張の糸が切れたらしく、今にも閉じてしまいそうな瞼を辛うじて保ちながら俺に一礼をして、寝床へ向かった。ちなみにサツキはロックの腹の上に顎を乗せて撃沈している。

「ノインとトウオウもお疲れ様。」

 ノインとトウオウもそれぞれ「お疲れ様。」と言って自分の定位置に向かった。

「ヤクモ、助かった。ありがとうな。・・・そして、お疲れ様。」

「・・・いえ。此方こそありがとうございました。・・・そして、主殿もお疲れ様でした。」

 そう言葉を交わして、それぞれの、出会った頃から変わらない己の寝床へ向かう。膝から崩れる様に寝床に倒れ込む。なんとか仰向けに寝転がる。背中に伝わる感触に懐かしさを覚えると同時に安心感に包まれた。気を抜いたらすぐにでも身体が溶け出して地面に吸収され一体化してしまいそうだ。

 最後に天井の穴が目に入り、軽く笑ったところまでは覚えているが、気が付いたら朝陽が根の隙間から差し込んでいた。やはり相当緊張していたのだろう。強く意識をしていたつもりはないが、それでも旅の間中ずっと緊張し続けていたのだろう。こんな風に油断出来るのはこの世界にこの場所だけだろう。これは意識を失ったに等しいが、それが出来ると身体と心が知っているからなのだろう。

 目を覚まし、上半身をゆっくりと持ち上げ、家の中を見渡すと、その時ようやくちゃんと帰って来たと実感出来た気がした。

「・・・ただいま。」


 日課の朝の稽古をし、朝食を皆で摂った。

 その後、ヤクモとモモカが連れ立って外出した。実家に帰り兄妹水入らずで過ごす為に。ゆっくりして来ると良い。きっとこの後この先こんな機会はしばらく無いだろうからな。たぶん二三日は帰らないだろう。ヤクモとモモカが帰ってきたら、本格的に北の森攻略を開始しよう。勿論、しっかりと準備をしてから。

「本日はどうされますか。」

 普段なら大体ヤクモのお役目だが、本日はそのヤクモが不在の為スーアンが聞いた。

「そうだなぁ・・・。取り敢えず、サツキにこの森を案内しないとな。」

「そうですね。」

「それを任せても良いか。」

「勿論構いませんが・・・。主様はどうされるおつもりですか。」

「俺は、偵察かな。一度ちゃんと北の森の様子を見てこようかと思ってる。」

 偵察や情報収集は忍者たる俺の本来のお役目だからな。・・・しかし、ここまで忍者らしいお仕事を殆どしていなかったなぁ。これで職業・忍者とはいかがなものか、と自分でも思わんでもない。

「左様ですか・・・。かしこまりました。お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」

「おう、ありがとうな。」

 という訳で、忍者の本領を発揮するとしましょうか。忍者になって得た技能も、いわゆる火遁や水遁の術というような忍者らしいものもなく。水上歩行と潜水・・・。その技能自体も以前から取得してあるものが、転職時に自動的に上限に達してしまったという具合だ。だがそれでも分身なる実に忍者らしい技能も取得できた。使用しての実験の様な事はしたが、未だその活躍の場を得ていない。唯一その機会があったとすれば、クロトとの組手だった。だがあの時はせっかくなのでクロトの方の戦い方に合わせるという選択をした為、その機会を逸してしまった。だからと言ってその選択に後悔など微塵もない。

「イッスンの。単独で行くつもりかい。」

 トウオウが頭の上から話し掛けてきた。

「そのつもりだけど・・・。」

 本来偵察任務は単独行動が基本だろう。万が一の事を考えれば、二名ぐらいが妥当だと考える。それこそ子供達を危険地帯に同伴させる訳にはいかない。

「ボクも一緒に行こう。・・・駄目かな。」

 意外な申し出に少し驚く。・・・いや、そうではないか。トウオウとノインもこれからは積極的に協力してくれると言っていた。その第一歩だ。トウオウに一歩という表現が適切なのかという気がしないでもないが。

「いや、心強いよ。頼めるか。」

「勿論だよ、イッスンの。」

 これからは俺も出来るだけ彼等を頼る事にしよう。上手く出来るかは分からないが、それも共に過ごす中で覚えていけば良い事だ。

「それじゃ、行こうか。トウオウ。」

「心得たよ、イッスンの。」

 俺とトウオウは子供達の事を任せて庭を出る。

 ノインはフタバと共に出掛けて行った。何やら魔法の実験をするのだと言っていた。フタバには限度を考えるように言っておいたが、ノインが一緒にいるのだから特に大きな問題はないだろう。・・・と、思う。


 庭の入口を出て、ゆっくりと北へと歩みを進める。本日の俺の任務は偵察のみ。急ぐ必要もない。それに久し振りの地元の森の様子を確かめながら歩きたい。

 木々の葉の緑と幹の茶色。その葉の隙間から差し込む陽光とその葉が作り出す影。その光と影を映す大地とそこから伸びる草花や岩や石。その間を流れる水の音。その全てが心地よい。やっぱりここが・・・この森が一番落ち着く。やっぱりここが・・・この世界での、俺の故郷なのだと思える。

「・・・なぁ、魔界に帰りたいって思うことはないのか。」

 道中の沈黙に耐えられなかった訳でもないが、他愛もない会話でもと振ってみた。振ってみた後に話題があまり良くなかったなと後悔する。トウオウにとっては思い出したくない内容の質問だったな。気を抜いていたとはいえ適当が過ぎた、無神経な事を。

「うぅん・・・。どうだろうねぇ。少なくとも今の所は一度も戻りたいと思ったことはないねぇ。」

 俺の質問に思いの外普段通りの調子で答えが返ってきた。ここで俺が謝罪するのも変な気を使わせてしまうような気がして、努めて平静を装って次の言葉を選ぶ。

「一応生まれ故郷ではあるんだろ。懐かしく思ったりしないものなのか。」

「そうだねぇ・・・。何時かそんな風に思う時が来るかもしれないけど、それはきっとイッスンのやヤクモの達が皆いなくなった時にじゃないかな。」

「そういうもんかぁ・・・。」

「なぜそんなに残念そうなんだい、イッスンの。」

「いや・・・一度くらい行ってみたい気はしてるんだ。実は結構楽しみにしてたんだよ。」

 勿論今すぐにという訳でもないが、それでも何時かは行ってみたいと思っている。前世では、少なくとも俺は魔界という世界に行ったことはないからな。もし魔界に行く方法があるのなら行って、見てみたい。帰れる保証のない大冒険になるかもしれないのなら、それなりに覚悟を決めて臨まなければならないが。

「そういえば、そんな約束をしたような気もするねぇ。そんなに楽しみにしてたのかい、イッスンの。」

「そりゃそうさ。知らない世界を見るのは楽しいだろ。」

「確かに。それはボクも理解できる。」

「それに、トウオウが生まれた世界がどんな所か知りたいさ。」

 トウオウにとっては良い思い出の無い世界だからな。トウオウが望まないのなら仕方ないが。

「なるほどねぇ。ま、イッスンの達が一緒なら悪くないかもしれないな。」

「本当に嫌なら無理しなくて良いんだぞ。俺としては無理強いはしたくないし。」

「いやぁ、そんな事はないさ。ボクもなんだか楽しみになってきたよ。」

 声の調子から察するに嘘をついていたり、無理をしていたりはしていない様に感じる。

「まぁ、かなり先の話にはなると思うけどな。」

「確かにそうだねぇ。でもこれでボクにしては珍しく先の楽しみが出来たよ。」

 そう言ってトウオウは少し横に揺れた。

「・・・イッスンの。そろそろのようだね。」


 当然自然界には「ここからが強者の森ですよ。」などと書いてある訳でもなく、はっきりと境界線が引かれている訳でもない。己で判断して見極めるしかない。強者の森に住む魔物だって同じだ。その付近に生息しているだけで、そこから一歩もはみ出さずに生活しているなんて不自然な話は絶対に無い。確実に安全を確保できるであろう距離で一度立ち止まる。それでもここからは気が抜けない。絶対はないし、不測の事態というのは何時でも起こり得る。

 近くの木の枝に跳び乗る。四階建ての建物の窓位の高さだろうか。そこから北側の森を一望する。一望する事が出来ているのかどうかは分からんが。

「全体を見たいなら、もっと上の方が良いんじゃないのかい。」

「そんなの鳥に見つけて下さいって言ってるようなもんだろ。」

「そんなに気にするような相手でもないだろうに。」

「あのなぁ、トウオウ。そんな場所で落ち着いて偵察なんか出来るか。」

「イッスンのなら出来そうだけど。」

「偵察は誰にも見つからずに遂行するのが基本だ。」

 トウオウが楽しそうに笑っている。ご機嫌でなによりだ。忍者は忍ぶ事こそ本分だ。全く魔王様はその辺の基本がお分かりになっていないようだ。困ったものだぜ。

 木の幹に右手を添えたまま、ゆっくりと深く呼吸をし意識を集中する。探索範囲を極力前方の北側に集中して半円状に広げる。

「・・・いるな。強そうなのが。」

 探索範囲はおそらく北の森の四割程だろうか。その中に大小二百前後の気配を感じる。そのどれもが翡翠馴鹿級の猛者揃いだ。

「・・・そうみたいだねぇ。数も思いの外多いね。」

 トウオウの言う通りだな。これだけの猛者揃いにも関わらず、数が多いな。どうやってこの生態系を保っているのか不思議でならない。強者の殆どはその強さに比例する様に、その身体も全体的に大き目に設定されている様に思える。それなのにこの数が犇めき合っているとは。これは予想外だったな。そしてここを通り抜けるのはかなり大変そうだな。

「どう見る、トウオウ。」

「サツキは今のままだとかなり危険だね。」

「そうだな。俺も同意見だ。それに、サイとハクも単独だとかなりきつそうだな。」

 ま、ジュウザやミナ、ロックにしても一対一なら大きな問題はなさそうだが、複数を同時に相手をするとなるとかなり危険な感じがするな。

「ボクもそう思う。これは結構大変そうだねぇ。」

「ま、焦らず確実に行くとしよう。」

 時間的に制限があるとはいえ、焦って事を急げば家族の命を不必要に危険に晒すことになる。それは最後の最後までは避けるべきだと思っている。

 幾つかの気配を細かく探ってみる。姿形こそ正確に捉えることは出来ないが、その個体が四足歩行なのか鳥なのか蛇や鰐の様な爬虫類系なのかぐらいの区別は付く。・・・あれは翡翠馴鹿の類か。あれは巨大な鰐系の魔物か。あっちのは・・・飛ばない鳥、巨大な鶏だろうか。って事は石化させるような技能を有していたりしないだろうな。それ以外にもヤクモ達程の体長の魔物の気配もある。複数が固まって一群を成している様子だ。きっとブルートゥース達、旅団狼の様な種類の魔物だろうか。

 そんな魔物たちが一処に集まっているのはやはり不可解ではある。お互いの領域が所狭しと隣り合っていて一触即発の様相を呈している様に思えるが。これではお互いに行動範囲がかなり制限されてしまうのではないのだろうか。これでどうやってこの生態系を保っているのか甚だ疑問だ。肉食同志の争いはないのかもしれないが、この中で草食の魔物達がどうやって生き延びているのか理解が及ばない。・・・ま、この世界はファンタジー。あまり深く考えるのはやめておこう。それよりも対策の方を考えた方が良さそうだ。

「これはボクも子供達に何か教えた方が良いかもしれないねぇ。ボクの知識で役に立つかどうかは分からないけど。」

 これは思ってもみない申し出だ。ありがたい限りだ。

「それは助かる。是非頼むよ。」

「ボクのは魔界式だけど、それでも構わないかい。」

「面白いじゃないか。それは俺も是非ご享受願いたいね。」

「ははは。イッスンのには特に教える事もないと思うけど。イッスンのはボクの知らない戦い方をするからねぇ。」

 そりゃそうだ。なにせ別の世界の知識で戦ってはいるからな。それ以外はこの世界の技能なる不思議な力を使用しているだけなんだけどな。ちゃんと誰かにこの世界の戦い方をきちんと教わってみたいものだ。

「出来るかどうかは分からないが、理屈ぐらい知っていればいざって時に役に立つかもしれないだろ。」

「なるほど。でもボクに出来るのは複数の相手をする時の心得ぐらいだけどね。それ以外はボクにしか出来ない事だから、あまり役には立てないと思うよ。」

「それなら、子供達にとってはトウオウが稽古の相手をしてくれるだけでも充分に意味があると思う。」

「そうかね。」

「頼めるか。」

「分かったよ。それでは、頼まれたよ。」

「ありがとうな。・・・あまり厳しくしてくれるなよ。」

「それはどうかなぁ。やったことがないから分からないなぁ。」

「そりゃそうだ。じゃ、トウオウもこれからそれを覚えないとな。」

「おお。それは良いね。ボクもこれからまだ成長出来るって事だね。それはとても嬉しい事だねぇ。」

「ははは。そうだな。子供達に聞かせてやりたいね。」

「それは・・・問題ないんじゃないかな。子供達はそれをちゃんと知っていると思うよ。」

「・・・全く仰る通りだね。」

 そうでなければあんなに熱心に稽古にも臨まないし、様々な事を知ろうとしないだろうからな。

「ヤクモ達にも戦術を教えてくれると更に助かるんだけど。」

「・・・確かに。特にヤクモとスーアンには合うかもしれないねぇ。良いんじゃないかな。」

「重ね重ね、助かる。」

「役に立てるならなによりだよ。」

 トウオウは何時もと同じ様に笑う。なぜだか良く分からないが、とても安心する。

「さてと・・・。取り敢えず、大凡の見当は付いた。今日はこれくらいで良いかな。あいつ等に気付かれる前に退散しようか。」

「そうだね、そうしよう。」

 南瓜の魔王様の賛成も得られた事だし、今日は木の実でも収穫しながら帰るとしよう。

 俺は忍者らしく音も立てずに枝から飛び降りた。忍者が上限に達したら次は何にしようかななんてことを考えながら帰路についた。

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