65 宣戦布告
「……馬の真似をして馬車を引くなど、お戯れが過ぎますぞ、陛下」
「いや、グリューン、この人達歩くこともできなくなっていたから、、」
「ガハハハ、さすが殿じゃのぉ、ワシならこのような不敬をさせられたら切腹するがのぉ」
「ディンガンド、負傷や病気で動けなくなったら必ず背負ってやるからな、覚悟してろよおじいちゃん」
「全くタロー様らしい事ですじゃ、しかし運ばれた者達の事も考えてやってくだされ」
確かに、、見ると俺の馬車に乗っていた人達は地面に這いつくばり、ブルブルと震えている。
「シュタイナー、後は任せていいか?」
「陛下、そこは『任せる』と」
「わかった、シュタイナー、グリューン、ディンガンド、この人達の受け入れはお前達に任せる! 暖かい食事と、十分な休養をとれる場所を与えよ!」
「「「御意!!」」」
ふう、、こういうのは苦手なんだけどなぁ
◇◆◇◆◇
それから2日後、俺はサウザーラの使者という、いけ好かない貴族を迎え入れていた。黒のブーツに白のズボンと赤のジャケット、羽のついた赤い帽子。
ラフェリア城の謁見の間で朗々と口上を読み上げ、玉座に座る俺の前でも帽子を取ろうとしない。
極め付けは左右に伸びてほっぺの上でクルクルと巻いた口髭だ。むしり取ってやりたくなる、、
「…であるからして、サウザーラ北方にあるこの城は、由緒あり高貴なるサウザーラ議会において、ノイエーラ城と名付けられ、、」
ふわぁ〜あ、長いな、、
「…不当に占拠をしている蛮族の長、通称『腰ミノの悪魔』とその一味は直ちにこの城より退去し、、」
…こいつ、もうかれこれ30分は話しているぞ、疲れねーのか?
おいおい、長老のじいちゃん達、なんか頭に血管浮いてるぞ? 大丈夫か?
衛兵のガルドワンやシベハスなんかは、牙が折れそうなぐらい歯ぎしりしてるし。
あ、俺のことを蛮族の長、って言ったところで、隣に立っているメイド服姿の雫が笑顔のままメキャっと音を立てて扇子を握りつぶしたよ、くわばらくわばら、、
「また、先日のサウエスト近郊における奴隷略奪事件は、、」
ふう、後何分続くんだろう? 休憩いらんのかな? 使者どのは、、
「…直ちに、400体の奴隷全員の引き渡し、ならびに襲撃犯20数名全員を処刑しての首の引き渡しを要求する」
ふうん、こいつ、無理矢理奴隷にした人達を『体』とか言ったぞ。数も割増してるし。で幹宏やシベハス達を処刑しろって? ふうん、、
「…以上、サウザーラ7世が外務官、クールク・ルノ・ゲーヒが申し渡す!」
「ふわぁ〜あ、、」
「くっ! とっととその高いところから降りろ! 腰ミノの蛮族め!!」
「くふ、、ん、どうした使者どの? 急に声を荒げて?」
あくびを噛み殺した感じで答える。
「キサマッ! 先程からなんだその態度は! 我が言葉はサウザーラ7世が言葉! それを先程から!」
「あー、わかったわかった、ところで使者どの、俺も欲しいものがあるんだが。それがあれば真面目にお話し聞けるかなー、なんてね」
「なんだというのだ!」
「シュルマイアーとかいうゲス野郎の首を持って来い」
これまでのヘラヘラした感じから一転、思いっきり威圧をかけてドスの効いた声で言ってやる。
「な、あ、ひっ」
急に震えだす使者、
「どうした? 使者どの? 急に静かになって。あんたのよく回る口に俺は感心していたんだぞ? 俺は口下手だからね」
「あ、か、ふざけるな! 王子殿下の首を持ってこいなどと!」
「王子殿下? 知らねーよ、無抵抗の少女を背中から刺し殺した殺人鬼の首持って来いって言ってんだよ。どうなんだ?」
「出来るか! 蛮人め!! 反抗する奴隷を殺したところで何の罪だと言うのだ!」
あ、俺の周りの連中がブチキレ寸前だ、、それを手で制して続ける。
「シュルマイアーがアドリアとその家族を殺したのは奴隷として囚われる前だ。アドリアはラフェリアの『1の騎士』だ。それに手を出したんだ、喧嘩売ってんのはそっちだろ?」
間違っちゃいないさ、ホラン村の人達が移住したらアドリアは俺の騎士になる約束をしてたんだ。ホラン村の人達がラフェリアに着いた以上、あいつは俺の騎士だ。
「ふ、ふざけるな! 高貴なる王族と、獣人を、、」
「その考え方から相入れないんだよ。交渉は決裂だな。この場合どうなるんだ? 使者どの?」
「…出したくはなかったが、、」
そう言って懐から封筒を取り出す使者。中身は大体わかってるよ。
「……」
「どうした? 読まないのか? 安心しろ、何が書いてあってもウチの連中にはあんたに手出しさせねーよ」
「くっ、、ばかめ、、」
使者は小声でそう言った後、大きく息を吸い、
「掃討宣言! 北方のノイエーラ城およびその付近を根城とする通称『腰ミノの悪魔』とその一味は度重なる不法行為により国家に重大な損害を与えた。よってサウザーラ王国はこれを掃討するものとする! サウザーラ7世!」
「…太郎さん、、」
雫が小声で声をかけてくる。
「ん?」
「顔が、、笑ってるわよ、、」
どうやら笑っていたらしい。これが笑わずにいられるか。アドリア、メイリ、ルイーセ、ドロシーの仇が討てるんだ。ミーシャの家族を殺したのもサウザーラの体制だ。完膚なきまでに叩き潰してやる!
「グリューン」
「はっ!」
「今から言う返事を書け」
「ははっ!」
「宣戦布告! タロウタナカはこの地にラフェリア国を建国した。この地域に住まう人々を不当に奴隷とし、また、虐殺行為を繰り返す非人道国家サウザーラ王国は許しがたい。この地域の人々の安寧を守る為にも、非難されるべきサウザーラの王政はこれを打倒すべきでありラフェリアはサウザーラに宣戦を布告する!」
ありゃ、グリューンの筆が止まってら、、涙を拭ってる。シュタイナーやディンガンドが横から助けてるから大丈夫だろ。
「グリューン、最後に俺が署名をする。それでいいな?」
「はい、はい、陛下、、、」
グリューンが俺の言葉を書いた後、毛筆ででかでかと『田中太郎』と署名した。
「使者どの、これを持ってサウザーラへ帰られよ」
そう言ってラフェリアからの宣戦布告書を渡す。
「後悔しても、、知りませぬぞ、サウザーラ軍は強大ですぞ、」
「むしろ望むところだ。サウザーラ王家は叩き潰す」
こうしてラフェリアとサウザーラは戦うことになった。
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