19 地鎮祭
地鎮祭忘れてた!
ガテンで監督のFさんからあれほど地鎮祭の大事さを教えられていたのに!
「おう、タロー、地鎮祭ってのはな、土地の神様に『これからここで工事をさせていただきます、よろしくお願いします。工事の無事と、その後建物とここにいる人たちを末永く見守って下さい』ってお願いをする大事な儀式なんだ。地方によって、色々な形で行われるが、大事なのは真心込めて神様にお願いすることだ」
Fさんの言葉が思い起こされる。もう、会うことは出来ないのかなぁ、、
土地の中央にはもう建物が建っちゃっているから、その北側に祭壇を作ることにする。
ええと、まず竹と縄がいるんだっけ? 城外へ行って竹に似た、ヤ草を4本、葉っぱ付きで取ってくる。それを1間四方(約180cm四方)で立て、ラワ草を編んで作った縄を張り、神様を呼ぶための神域を作る。
そしてその中の北側に長テーブルのような形に土を盛って祭壇にし、その手前に50cmほどの高さの円錐型の盛り土をつくる。
祭壇の中央に『玄武の槍』を奉じて、その手前にお水を入れた石のコップと、山なりに積んだ芋を備えて、と、
この土地の氏神様がいらっしゃるかはわからないから、この世界にいらっしゃるとわかった四神に祈ることにする。
「北の玄武様、東の青龍様、南の朱雀様、西の白虎様、遅くなってごめんなさい。ここに城を作らせていただきました。無事に工事が出来ました。ありがとうございます。
末永く、この城とここに住む者をよろしくお願いします。」
腰を折って深々と頭を下げ、大きな声でそう祈ってから、盛り土にスコップを入れる。
「ふう、だいぶ型破りな地鎮祭だろうけど、、これで神様たち、許してくれるかな?」
そう呟いたら不意に後ろから声が聞こえた。
「よいぞ! よいぞ! 良き神事であった。久しく我らに祈るものなどおらんかったからな、ふぉっふぉっふぉ、」
振り返ると、縄を張った神域の中に、黒い着物を着た、白く長い髭のお爺さんがいた。
……誰? もしかして、、
久方ぶりに我が神器にて呼ぶものがおる、
どこかの神職の老人かと思えば、なんと! 少年から抜け出したばかりとも言える様な若者ではないか!
ふむ、腰ミノ一つの粗末な格好じゃが、レベルも十分、この若さで良くぞこれだけ修行を積んだものよ。それにこの神域の澄み渡りよう、供え物に酒が無いのが残念じゃが、心を込めて我らを祭った事がようわかる。うむ、まずは合格じゃ、、
その老人の、楽な様でいながら厳かな佇まい、優しくゆったりとしていながら思わず背筋を正してしまいそうな空気、好々爺の様な話し方でありながら頭の芯まで響いてくる様な声、
「あの、、」
「うむ、若き神職よ、わかっておるかと思うが、ワシは玄武、北を司る神獣じゃ」
「ははあー!」
俺が膝をついて頭を下げようとすると、
「よい、よい、そうかしこまらんでもよい、頭を上げよ、そなたがワシらを敬っとるのはわかっておる」
そう言って頭を上げさせられた。
「ふむ、それにしても良い城じゃ、そなたが作ったのか?」
「は、はい、ありがとうございます!」
「うむ、先程の神事も見事であった、褒美をとらす」
そう言って玄武様は片手を空に高くあげると、
「フンッ!」
手のひらから金色の何かを放たれた!
金色の光は粒子となり、空中に広がって、この城全体を覆ったかと思ったら、
ピィィィィン!!
楽器の弦を一度強く弾いた様な甲高く澄んだ音を出すと、一瞬六角形の模様の半透明な金色の壁が城全体に現れ、すぐに見えなくなった。
「玄武様、これは、、」
「ふぉっふぉっふぉ、これは褒美じゃ。これでそなたとこの城に敵意を持つものはこの城には入れなくなったわい。四神最高の防御力を誇るワシの結界じゃ、期待して良いぞ、ふぉっふぉっふぉ、」
「あ、ありがとうございます! 玄武様!」
「よい、よい、それよりもの? ここにこのまま社を建てぬか?」
「社、ですか?」
「うむ、いい神域じゃ、このまま消すにはもったいのうてな、きっと良い社が建つぞ、この地の守りも硬とうなる」
「は、はい! 建てさせていただきます。『玄武神社』でよろしいでしょうか?」
「いやいや、ワシ一人ではな、 そなたの器であれば、四神を祭るのが良かろう」
「四神を祭る神社ですね! わかりました!」
「うむ、 ゆるゆるとで良いぞ、ゆるゆるとな、焦るで無いぞ」
「はい!」
「では、またの、次は酒があるとよいかの」
「す、すみません!」
そう言って深々と頭を下げる。
しばらくして顔を上げたとき、玄武様は目の前から消えていた。




