12-15 新居の夜 三景
ストイックな展開はほんの数回でした……ピンク有り升 m(._.)m
運営からの指摘を受け、改稿中です。一部削除した部分等ありますが、ご容赦ください。
ニスケス侯爵邸でベアトをピックして我らが新しい住居に到着すると、ぼくらはエントランスロビーでほぼフルメンバーに出迎えを受けた。リュミエラと警護班、それとアナベラを最初から外してあるあたり、ロジェの仕切りはさすがだ。
すでに全員の人となりを把握しているロジェがひとりひとりを紹介し、それに挨拶を返していくと、最後に何故かナターリャがいた。
「とりあえずわたしの部屋に寄ってくれますか~?」
それだけいうと、フラフラと去って行った。とりあえず行ってみるしかあるまい。ロジェと食事を含むこのあとの段取りについて打ち合わせたあと、最後にみなに激励の言葉をかけて、ぼくとベアトは二階のナターリャの部屋に向かった。
「アナベラちゃんがさっそく成果を出してくれました~。冗談半分に屋敷内の保安について考えるよう宿題を出してみたのですが~、面白い方法を考えてくれたんです~」
なんでも、二階から三階にあがる階段にベルメイリアが結界を張り、その結界を通過するための認証システムをアナベラが考案したらしい。
「使い勝手がよければすごいじゃないですか!」
「悪くないですよ~。アンリさんの拠点のような強力なヤツは維持するのも大変ですし~、微調整にいちいちテルマさんを呼ばないといけませんからね~。わたしとベルさんとアナベラちゃんだけで管理できるというのがポイントです~」
ナターリャはそう言って、一同を階段の前に移動するよううながした。
「二階から三階はいまは結界が張ってありますが~、登録した人がこの手すりに取り付けた板に刻んだ魔方陣に手のひらを乗せるとほんの五秒ほど結界が無効化されます~。その間なら登録していない人も通れますので~、わりと対応も柔軟に出来ます~」
それはすごい! 三階に上がる人間をそれなりにコントロールできるということじゃないか。たしかに、厳格すぎるシステムは使い勝手も悪くなる。いいバランスだと思う。
お礼を言おうとアナベラさんを見ると、特に感情を表に出すことなくうつむいている。精神的にはまだまだみたいだな。
「アナベラさん、ありがとう。とても便利な方法を考えてくれたね!」
「アンリさまのお役に立つことが使命ですので……」
そ、そうかい……。ベアトが怪訝そうな顔をしているが、どう説明しよう?
三階東棟の突き当たりがぼくの部屋になっている。ラウンジと寝室、そして小さいが書斎がある。もともと主人用の部屋として設計されたもののようで、ぼくには充分なスペースだ。
とりあえず部屋をひととおりチェックしてから、ベアトの部屋のドアをノックした。彼女の部屋は反対側の西棟の突き当たりだ。真下がナターリャの部屋というのが少し不安だが、やむを得ないだろう。主人用の部屋と同じコンセプトで正妻用として設計された部屋なのだ。
「どんな感じ?」
「うん、ちょっとこじんまりしてるけど、使いやすくて素敵」
ちなみに、ベアトの部屋は書斎がないだけであとはぼくの部屋と同じ構造だ。スペースを十分すぎるくらいに感じたぼくとの差は、すなわち育ちの差なのだろう。負けないぞ!
「落ち着いたら小食堂に行こうか。料理長が待ってるって」
「了解。もう行けるわ」
ニスケス侯爵ご推薦の料理長は、腕も人柄も最高だった。二人だけで食べるのがちょっと寂しかったが、これは慣れるしかない。家の主人格はあくまでぼくとベアトだけなのだから。普通の貴族を装うなら、その辺で常識を破らない方がいい。
昼食のあと、ぼくとベアトは買い物に出てこまごまとしたものを揃えた。そしてまたまた二人きりの夕食のときに、ぼくはショッキングな通告を受けた。明日から当日まで、ベアトは侯爵邸に戻るとのこと。
「じゃあ、明日からぼく、一人でここに?」
「ごめんね。でも、ドレスや装飾品の調整、実家じゃないとできないの。お母様が頑張ってくれちゃっているから……」
うん、これは仕方がない。ぼくが手を出せない世界だから、わがままをいう局面じゃない。
「あとで部屋に行くね」
ベアトは顔を赤らめつつニッコリ笑った。
「うん……待ってる。早く来てね」
ほんとうは、初日ということでリュミエラやローラとマジメな打ち合わせもしようと思ったのだが、ベアトが明日からいないとなれば話は別だ。リュミエラにひとこと言ったら、逆に「ローラさんには言っておきますから早く行って差し上げて」と言われた。
夜が更けて、小さくベアトの部屋のドアをノックすると、開かれたドアの先にバスローブ姿のベアトがいた。入浴をすませてそう時間がたっていないのだろうか、顔が少し紅潮している。
「遅いよ、アンリくん」
ベアトが頬をちょっとだけふくらませて言った。シャープな美貌がちょっと崩れてかわいい。軽くキスして抱きしめると、花の香油の香りが鼻をくすぐる。ふと、ガウンの下の感触がみょうに生々しいことに気づく
「あれ、ベアト、その下、もしかして……?」
「恥ずかしいから言葉にしないで!」
了解、の意を込めて、さっきより長くて深いキスをする。唇を離すと、ベアトが蕩けた目でぼくを見つめている。
「時間が惜しかったの……」
なんの時間かはもちろん訊かなかった。部屋に人を迎え入れる時には必ず閉じられているはずの寝室の扉は、大きく開け放たれている。ジャコウのような香りが漏れてきていた。
《この部分改稿中》
この世界の夫婦関係は日本の平安時代の通い婚と似ている。夫が夫人のもとを訪れるのだ。法的に正式な妻が複数いる場合、そのうちのひとりと生活の場を共有することは、法的には同格の妻のあいだに格差をもうけることになり、タブーとされる。
うちの実家のように第二夫人が別棟に、という場合はあるが、シャルロット様もロベールとは別の部屋で生活しているし、その……夜の営みはシャルロットさまの部屋で行われているはずだ。矛盾に聞こえるかもしれないが、「万が一」夫の部屋で情事がおこなわれる場合、それは、妻とではなく愛人とのものと相場が決まっているのだ。
「だからローラのところにもぼくが通ってきた」
「なんでそれだけを言うのに、長い説明が必要になるのさ?」
「いや、いままではぼくの部屋でしてたけど、これからはローラの部屋、ということで大きな変化だと思わない?」
「ぼくはどっちでもいいよ。その……きみと過ごす時間があれば……」
くうっ! 萌える!
《この部分改稿中》
「アンリは乱暴にするのが好きなの?」
背中からのしかかられたような体勢のまま、ローラが首だけひねってこちらを見た。
「いや、そんなことは……。いまのはたまたま。イヤだった?」
「イヤっていうわけじゃないけど……アンリの顔が見えてるほうが安心するし……」
だんだん声が小さくなっていった。顔も真っ赤だ。そんな思いで伝えてきた言葉なのだから、覚えておかなくちゃいけないな。
翌日は、夕食後けっこう遅い時間までロジェ、リュミエラ、ぼくの三人で細かい打ち合わせを続けた。どういうケースでどう形を整えるのか、いろんな場合を想定して話し合うのだ。なにせ、家の中に対してもあるていど偽りを維持しなくてはならない。これがけっこうつらい。走り出してからもあれこれ考えなければならないことが山積みだった。
「ガブリエラはどう?」
二階の小ラウンジから部屋に戻りながら、ぼくはリュミエラに尋ねた。ぼくの専属、ということになっている彼女の部屋は、ぼくの部屋に接したところにある。護衛班長のローラの部屋も同じだ。ちなみに、ロザリーの部屋はベアトの部屋の隣。それでも東棟に四部屋、西棟に二部屋、中央棟に二部屋の空きがある。もてあます広さだ。
「いまのところは真面目にやっているみたいです」
「リュミエラのところに押しかけたりは?」
「一度だけ……」
少しリュミエラが顔を赤らめた。どうやら相手をしてあげたらしい。
「リュミエラ、久しぶりに……ダメかな?」
彼女は小さく頷き、ぼくの手を取って自分の部屋に招き入れる。ローラと違ってきっちり整理されている。後ろ手にドアを閉めると、彼女はぼくの前にひざまずいた。
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