12-09 婚前〇〇(改稿中)
ベアトリーチェがピンク色に料理されております。想像力を駆使してお読みいただければ幸いです。
運営より指摘を受けたことにより、現在改稿中です。
「アンリくん、今日のわたし、変だったよね?」
部屋のロングソファを勧めたのを「怖いから」と解釈に苦しむ返答で断ってテーブルのそばの椅子に腰掛けたベアトは、こころもちうつむいたままでぼくを見て、ボソリとそう言った。
「うん、いつもより少しすべてに集中がなかった気がする」
ぼくは微妙にベアトから視線を外してそう答えた。なぜって、平静を保つ自信がないからだ。ベアトが身につけているネグリジェは胸元が大きくあいていて、浮き出している綺麗な鎖骨がまる見えである上に、躰にいい感じで絡みつき、おおまかな体形どころか胸部装甲の形を先端の宝石に至るまでくっきりと浮かび上がらせている。そして半透明の生地は、前人未踏のお腹からすらりとした太腿に至るシルエットを絶妙な感じでイメージさせる。まともに見ると正気でいられる気がしない。というか、自分が正気を保っているかがすでにわからない。
「お母さまにも叱られちゃった。だめだな、わたし……」
「何か、訳があるの? 話せることなら聞くよ? 何か、ぼくに話したかったんでしょ?」
「うん……そうなんだけど……軽蔑しないで聞いてくれる?」
「約束する」
聞きもしないうちから無責任だと言われても、ぼくはベアトのすべてを受け止めるつもりでいまここにいるのだ。何を聞かされても軽蔑なんかするはずがない。
「しばらく前にローラさんに会ったとき、お綺麗になられたな、と思ったの。もちろん、元から綺麗な方なのだけど、最近は特に、仕草のはしばしにハッとするくらいの女らしさが感じられるの」
それはぼくも感じている。ローラはほんとうに女性らしい色気のようなものを増した。何の気なしの流し目がゾクッとするくらい色っぽいときがあるのだ。
「そのときね、それがローラさんとアンリくんが……その……そういうことをしている想像と結びついちゃったの。それから、ローラさんを見るたびに、そして、リュミエラ様を見るたびに、その想像が頭から離れなくなっちゃって……」
ぼくの理性はベアトを立ち上がらせて部屋から出し、自室に戻らせるべきだと警告している。そして、感情はいろいろな角度からその理性を黙らせようとしている。
結局ぼくは……ただうなずいただけだった。
「アンリくんがお二人とそういうことをしてほしくない、とか、そういうことじゃ全然ないの。ただ女としてどんどん素敵に変わっていかれるお二人がうらやましかったんだと思う。お二人を見るたびに想像がかきたてられて、なんだか躰が熱くなってきて……懸命にそれを冷まして、の繰り返し。そうしているうちに、アンリくんを見て、自分がアンリくんと……そういうことをしている場面が頭に浮かぶようになっちゃって……。いつもじゃないのよ? ちょっとしたきっかけで時々、なんだけど、いったん想像しはじめると、自分ではなかなか止められなくて、それどころかどんどん大胆な方向にいっちゃって……」
「今日、王宮から帰ってからおかしかったのも?」
「アンリくんが泊まっていくって思っていなかったから……泊まっていくの久しぶりでしょ?」
ここに泊めていただくのは、かれこれひと月半ぶりくらいだ。そのときはそうなる前だった、ということなのだろう。
「今夜同じ屋根の下にアンリくんがいる、と思ったら、頭の中が切り替わっちゃったの。躰も火照ってきちゃって頭もボーッとしてきて。夕食までになんとか火照りを冷まそうと思ったのだけど、どんどん熱くなるだけだった。お母さまに叱られたときも、正直言ってあまり覚えていないの」
なんだろう……この……よくできた成人小説を読むような展開は……。このままいけば、間違いなくぼくの理性はどこかに消し飛ぶ。
「なぜ……それをいま、ぼくに? 結婚まで黙って待っていれば、軽蔑されるかも、なんて心配もする必要なかったのに……」
理性はベアトにクギを刺そうとしたが、出てきたのは実に中途半端なセリフだった。そして、ベアトは潤んだ瞳をぼくに向けて顔を横に振った。
「わたし、アンリくんと結婚して新しい生活をはじめるの、ほんとうに楽しみにしてる。それまでのどんな小さなことも覚えていたい。でも、こんな状態じゃいろんなことに気づかないまま通り過ぎちゃう。そのことに気づいたら、もうわたしは一つしか解決の方法を思いつかなかったの」
このさきどうなっていくのは、ほぼわかっている気がする。でも、ぼくの理性の声はもうほとんど聞こえない。
「それは?」
「今夜、この部屋でアンリくんと一緒にいてもいい?」
《この部分改稿中》
夜明け前、しっかりと自分を取り戻したベアトは、部屋を訪れたときの刺激的な恰好の上にぼくの上着を羽織り、軽くキスを交わしてから自分の部屋に戻っていった。ぼくの上着は、別に寒いとかではなく、ぼくの匂いのするものを身にまとって部屋に戻りたかったからだそうだ。この子は、どこまでぼくの脊髄中枢を刺激すれば気がすむのだろうか。
朝食は再びフルメンバーだった。昨夜と同じ風景の食卓だが、色合いが違う。昨夜がくすんだ色だとすれば、今朝の食卓は華やぎに満ちた色だ。
ベアトはすっかりいつもの彼女に戻り、前日厳しく彼女を叱ったパウラ様も満足そうだ。溌剌としたいつもの彼女というか、昨日以前よりもさらに輝いている気がする。やっぱり綺麗な女の子が元気だと違うね!
「アンリくん、ベアトになにかあったのかな? 昨日とはずいぶん違うが……」
ニスケス侯爵がぼくの耳もとで尋ねてくる。心当たりはありすぎるがもちろん言えない。
「わかりませんけど、イロイロあるんじゃないですか? 結婚前で多少不安定でしょうし」
「そういうものかね。シルヴィアの時は特に感じなかったんだがな」
まあ、シルヴィア様の場合は、侯爵のすぐ目と鼻の先で少女から女になったりはしなかっただろうからな。知らぬが花というものだ。
ニスケス侯爵邸を辞してうちの王都屋敷に戻り、寝不足だったこともあって自分の部屋でうつらうつらと舟をこいでいると、いきなりテルマが目の前にあらわれた。
「ナターリャが呼んでる」
げ、しばらく接触がなかったから忘れてた。
遠征の後、ひと月半くらいは三日に二日は拠点にやってきたナターリャだったが、教会から離脱する手続きやら引っ越しの用意やらでしばらく顔を見せていなかったのだ。ちなみに、シュルツクの屋敷との間の魔方陣のことはまだ伝えていない。その存在を知っていたら話はまったく違っただろう。
そのまま転移すると家のものたちとの間でややこしいことになるかも知れないため、あらためて正面から外出した上で拠点に移動した。ラウンジに入ると、そこではナターリャがまるで主のごとくくつろいでいる。
「ん?」
ぼくをスポットしたナターリャが顔をしかめ、そばにやってきてぼくの周りを一巡する。
「知らない女の匂いがしますね~。これが件の侯爵令嬢の匂いですかぁ~?」
バケモノか、あんたは? 今朝、軽くだけど風呂は入ったぞ? まわりに誰もいなくてよかったよ。
お読みいただいた方へ。心からの感謝を!




