1-09 - りぃんちゃん -(挿絵あり)
1-09 - りぃんちゃん -
「やほー、リィンちゃん!」
「ねぇリゼちゃん、いつも私と会った時に言ってる「やほー」っていうのは何?」
「気にしなくていいのです!」
「・・・まぁいいわ、始めましょうか」
広い王城の中庭に佇む東屋のテーブルの上には美味しそうなお菓子がたくさん用意されています。
そこに高価そうな服を着て座っているのは親友のリィンちゃん!。
私が声をかけるといつもは輝くような笑顔で迎えてくれるのに今日は少しご機嫌斜めのようです。
「ピッカール様がねー」
メイドさんに椅子を引かれて座る私に話を切り出すリィンちゃん。
「あぁ、あの少年まだリィンちゃんを諦めていないの?」
「少年って・・・リゼちゃんより3つも年上だよ、当主がお父様にしつこく迫ってるらしくてね、根負けしたお父様が今朝私に一度会って話だけでも・・・なんて言い出すし」
「でもリィンちゃんはあの少年の事、大嫌いだよね」
私はチーズのたっぷり入ったケーキをフォークで崩しながらリィンちゃんを見ました。
「うん、昔からピッカール様って外面はいいんだけど陰湿で意地悪だから・・・」
本当に嫌そうなのです!、王女様がしていい表情じゃなくなってるし!。
ピッカール様というのは上級貴族ハゲトランワ家の長男で、実家は大臣を多く輩出してる名門でお金持ち、顔も頭も良い超優良物件って言われているのです。
「でも一部の令嬢達の間じゃ人気だよねー」
「私は小っちゃい頃から散々絡まれてるからピッカール様の性格はよく分かってるの、私と結婚したら絶対調子に乗って権力を盾に好き勝手するよー」
「それは困るねー」
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳です。
今日はリィンちゃんのお家でお茶会なのです、でも参加者は私だけ・・・。
リィンちゃんには私以外のお友達が居ないから仕方ないのですが人見知り同士なのでこの関係は意外と快適なのです。
・・・
・・・
ちなみにリィンちゃんはこの国の王女様で私の親友です。
初めて会ったのは7歳の頃。
私のお父様と国王陛下は幼馴染で仲良しなのです、その日は最近仕事で忙しかったから久しぶりに子供達を連れて遊ぼうという話になりました。
私とコナンザは両親に連れられて王城に行き、陛下のプライベートなお部屋で会う事になっていたのです。
陛下の家族は王妃様と王女様が参加で、2人の王子殿下は騎士団と剣の練習をしている方がいい!と主張したようで欠席でした。
陛下と王妃様には会った事があるのですがリィンちゃんとは初対面、私はお部屋に入ってきた黒髪のとても可愛らしい女の子に見惚れてしまったのです!。
「艦⚪︎これくしょんの朝潮ちゃんだぁ!、髪サラサラで綺麗!」
お父様と国王陛下、お母様とコナンザ、それと王妃様はお互い話をしていて、残った私は王妃様の横で佇むリィンちゃんを少し距離を置いて観察していました。
「かわいいなぁ・・・お・・お友達になれるかな?」
そんな事を考えながら・・・。
じわり・・・
じわり・・・
じりっ・・・
観察に夢中になっていた私は無意識のうちに少しずつリィンちゃんとの距離を詰めていて・・・気付いたらリィンちゃんのすぐ目の前に居ました。
「・・・」
「・・・」
リィンちゃんと目が合いました・・・でも私は人見知りだから目を合わせるのが恥ずかしいのです!。
私はリィンちゃんの胸の辺りに視線を移します・・・。
・・・この年齢だとまだつるぺたですね、つるぺたはいいぞ・・・私と一緒につるぺたのまま居るのです、貧乳仲間になるのです・・・。
「・・・あ・・・あのっ!」
私がそんな不穏な事を考えているとリィンちゃんが声をかけてきました。
人見知りなのに距離を詰め過ぎてどう対応したらいいか困ってしまいました、リィンちゃんの方が私より背が高いので上目遣いで見上げて首を傾げます。
「・・・ひっ」
リィンちゃんが固まってしまいました!、もしかして私のお顔が怖かった?、転生してもお友達が出来ないなんて嫌なのです!。
「・・・・こっ、これで許して・・・・許してくだしゃい!」
よく分からない事を言いながらリィンちゃんは自分の胸に付けていたアクセサリーを引きちぎるように外して私の手に握らせました。
私はリィンちゃんとお友達になりたかっただけなのに許しを乞われてしまいました!。
これは友情の印にくれるのかな?、意味が分からなさ過ぎて思わず無表情になりました・・・ダメ!、私はお顔が怖いのだから笑顔で対応しないと!。
「・・・いいの?(ニタァ)」
一応くれるのか確認をしておきます、もちろん笑顔で!。
「ど・・・どうぞっ・・・お納めくだしゃい!」
リィンちゃんは何故か涙目になっています、私はどうしていいか分からず頭を撫でようと手を伸ばしたら・・・・。
「私ぃ!、ちょっと急用を思い出しましたぁ!、お父様!、お母様!少し席を外しますね!、し・・・失礼しましゅ!」
突然リィンちゃんがお部屋を出て行ったのです、その後戻って来る事はありませんでした。
・・・
半年ほど経ち、新年に開かれた国王陛下主催の夜会でリィンちゃんと再開しました。
その時は何故か以前から目を付けられていて、しつこく私を虐めるヴィンス第二王子殿下に絡まれているところを助けてもらったのです!。
ヴィンス・モトリー・ローゼリア、14歳、この国の第二王子で何かと私に絡んでくるクソ野郎です。
前世で私のお母さんがよく聴いていた某ヘヴィメタルバンドで歌っている人によく似た金髪で、元は黒髪なのにかっこいいからという理由で金色に染めている馬鹿野郎です。
しかもヴィンス殿下はまだ幼いのに身体が大きく、私の大嫌いな人種「陽キャ」でした、その日は壁際に居た私を見つけて何かと大声で威圧するのです、私は若い男の人が怖いのにいい加減にして欲しいのです!。
「なぁ、今度俺と一緒に出かけようぜ!」
ふるふる・・・
「・・・あぅあぅ」
「無視するなよ・・・」
がしっ!
ちょうどお手洗いに行きたかったのに話が終わらず、もう限界っていう時に彼が私の両肩を強く掴んだのです!。
「ひぃっ」
ふるふる・・・
しょわわわぁぁ・・・
ほかほかぁ・・・
「あぅ・・・」
このクソ野郎の行動で私は前世でのトラウマが蘇りお漏らしをしてしまったのです!。
太ももを暖かいおしっこが伝う感覚・・・筆頭貴族の令嬢が王家主催の夜会でお漏らしなんて大失態なのです!。
私は涙が溢れそうになるのを我慢して俯いていました。
その時、誰よりも早く異変に気付いて助けてくれたのはリィンちゃんでした、私が恥をかかないようにと躓いたフリをして近くにあったシャンパンタワーを倒し、お漏らしを誤魔化してくれたのです!。
それから・・・我慢できずに泣き出した私をお部屋に連れて行き丸洗いしてお着替えまで用意してくれました!。
リィンちゃんはお着替えを手伝ってくれたメイドさんや護衛の女騎士様が見守る中、私に深く頭を下げます。
「私の不注意でシャンパンをあなたにかけてしまい申し訳ありませんでしたぁ!」
「え?・・・」
周りの皆さんは生暖かい目で私達を見ています。
なるほど!、あくまでもあれはリィンちゃんの不注意で、断じて私がお漏らしをしたのではない・・・っていう事にしてくれたのですね!。
こうして私のお漏らし事件は闇に葬られたのです。
王女様でとても偉い立場なのに私に気を遣ってくれる優しい性格、私のお友達第一号はこの人以外考えられません!、人見知りなどとは言ってられないのです!、なんとしてもこの人にお友達になってもらうのです!。
そう思った私は護衛の女騎士様だけを部屋に残してリィンちゃんと2人にしてもらい、自分でも驚くほどの勢いで私の事を話しました!。
顔が怖いから皆から怖がられている事、人見知りで他人と話をする時うまく言葉が出ない事、訳あって若い男性が怖い事、まだ一人もお友達が居ない事、リィンちゃんとお友達になりたい事・・・私なりに一生懸命話しました。
「いいよ、私からもお願いします、是非私とお友達になってください!、私のことはリィンって呼んでね、リゼちゃん!」
私に初めてのお友達が出来た瞬間です!。
「わぁ・・・わぁぁん!」
私は嬉しくて泣いてしまいました、そんな私をリィンちゃんは優しく抱きしめてくれたのです。
・・・
・・・
ここまではとても良い話なのですが・・・。
確かにリィンちゃんとは親友と言ってもいいくらい仲良くなりました、家族以外でここまで親しくなった人はリィンちゃんしか居ません。
でも、そうしているうちに・・・表面上は優秀で完璧に見えるお姫様、リィンちゃんがとんでもなくポンコツである事に気付いてしまったのです。
リィンちゃんは王族として国の為に何か出来る事をしようと一生懸命頑張ってお勉強しています。
礼儀作法も、ダンスも、毎日頑張っている良い子なのです、でもリィンちゃんはとても不器用で・・・あまり運動神経も、頭も良くないのです。
お話が全然理解出来てないにも関わらず、立派な王女様に見えるよう分かったフリをするのです!。
・・・
「リィンちゃん、この前オースター帝国の皇帝陛下に褒められたって聞いたけど・・・」
「うん、皇帝陛下って知らずにお話ししてたんだけど、「リィンフェルド殿下はとても博識でいらっしゃる」って言われたの」
「皇帝陛下にそこまで言ってもらえるって・・・どんなお話をしたの?」
「えと・・・税率が・・・どうとか?、よく分かんないや」
「え・・・」
「私はにっこり笑ってそうですか、とても素晴らしいと思います、くらいしか言ってないし・・・」
「ダメじゃん!」
「えー、でも結構長い時間お話しできたよ」
「何その才能、怖いよリィンちゃん・・・」
その恐ろしい事実を知った私はリィンちゃんに注意した事がありました、そんな事してたらいつかバレて大変な事になるよって・・・。
「あはは、分かってなくてもそれっぽい顔して頷いてたらなんとかなるし大丈夫だよー」
「ダメだこいつ早く何とかしないと(ぼそっ)」
「え、リゼちゃん何か言った?」
「何でもないよー」
そういえば陛下も「リィンたんは分かっていない事を分かってるように振舞う天才」って言ってたのです・・・。
・・・
・・・
・・・
「・・・ん」
「・・・」
「リ・・・ちゃん!」
「・・・」
「リゼちゃん!」
「え・・・何?、リィンちゃん」
「どうしたの、ぼんやりして、お菓子美味しくなかった?」
「そんな事ないよ・・・リィンちゃんと出会った頃の事を思い出してたんだぁ・・・」
「初めて会ったのは家族で集まった時だよね」
「うん、ずっと気になってる事があって・・・あの時リィンちゃん慌ててお部屋出て行ったでしょ、もしかしてお手洗い我慢してたの?」
「なぁっ!」
リィンフェルドさん
読んでいただきありがとうございます!。
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