4-03 - せいじょさまはおかねがだいすき -(挿絵あり)
4-03 - せいじょさまはおかねがだいすき -
「どうだ、何とかなりそうか?」
タダーノさんが心配そうに尋ねます。
「少し神経の状態を見るの・・・痛かったら声を出して、ただ右手は動かさないで我慢して」
「・・・っ!、いててて!・・・今のは痛かった!」
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です。
今私は怪我をしている大柄でムキムキマッチョな男性の腕を診察しています。
正直なところ目の前のマッチョさんは身体が大きいから怖いのです!、私が小声で呟き聞き取れないところはタダーノさんが補足説明をしてくれています。
「怪我の状態は分かったの、神経は完全に傷んではないと思う・・・たぶん大丈夫、筋肉・・・筋が切れてるかも?」
「手の感覚が無くて剣を握る力が出ない」
私の言葉を聞いてマッチョさんが答えます。
「街のお医者さんは何て言ってるのです?」
「残念だが治らない、もう剣は握れないだろう・・・って」
私は13歳の時に頑張って医師の資格を取得しているのでお医者さんと同意見です、でも・・・。
「時間がかかってもよければ剣を振る事くらいはできるかもしれないの、僕のお家に知り合いのお医者さんを呼んで手術・・・治療するの、それから僕の指示に従って薬を使いながら指や腕の運動をやれば回復する可能性があるよ」
「あぁ、剣がまた握れる可能性があるならお願いしたい、俺はこれ以外金を稼ぐ方法を知らないからなぁ」
「最低でも1年以上はかかると思うの・・・大丈夫?」
「大丈夫だ、ただ・・・お金の事なんだが」
マッチョさんが申し訳なさそうに僕を見ます、でも事情はタダーノさんから詳しく聞いているのです。
「いいの、娘さんが産まれて大変でしょ、タダーノさんにはお世話になってるし、そのお友達から大金は取れないの、僕が休憩時間の時の暇つぶしにやるって事で、お金は手術費用と薬代だけ・・・それも無理なら払えるだけでいいの」
「すまない、今は礼を言う事くらいしかできないが・・・必ず恩は返す」
「僕への恩返しは早く腕を治す事、それと・・・これから開業する薬屋の宣伝を知り合いにお願いできるかな?」
かっこいい事を言ってますが内心は本当に怖いのです!、身体の大きな男の人!、躍動する筋肉っ!・・・怖過ぎて漏れそうなのです!、でも困ってるみたいだし仲良くなったタダーノさんのお願いだから・・・。
「お前は腕が治るまで弟の宿屋で受付や簡単な雑用を頼みたい、左手でも文字は書けるだろ、衛兵の時みたいな高給は出せないが夫婦が食っていくのに困らないくらいは出せる」
「ありがとう、タダーノ、それとリゼルくん、感謝するよ」
あのクソガキどもに腕を斬られて怪我をしたマッチョな衛兵さんのお名前はクック・グリンベーレさん、メールセデス共和国出身のお父様がこの国に移住してコルトの街で衛兵さんになった人です。
あの3人も小さい時から知っていて外面に騙されたのか留置場に居る時は完全に油断していたのだそうです。
そしてここはトシのお家・・・「トゥーリックの宿屋」の一室。
クックさんがこの宿屋で雇って貰おうと相談に来ていた所、私が医療免許を持っている事を知ったタダーノさんに相談され今ここでクックさんの腕を診ているのです。
少し離れた所ではリックさんとシャルロットさんが頬を染めて見つめ合っています、二人ともお仕事しようよ・・・。
とてとて・・・
宿屋を出てお家に戻っている道中、これからの事を考えます。
「手術は博士にやって貰うとして、お金は私が前払いで出せばいいかな、お願いして安くしてもらうのです!、治療は1日おきに宿屋の休憩部屋で・・・」
「・・・」
「・・・シャルロットさん?」
私は無言でついてきているシャルロットさんに話しかけます、宿屋でリックさんと見つめ合ってたところを引き摺るようにして出てきたから声をかけても反応がありません。
「シャルロットさん!」
もう一度声をかけます。
「・・・え、あ・・・はいなんでしょうリゼルくん!」
「シャルロットさん昨日からポンコツになってるよ、僕の前ではいいけどお父様に会う時はちゃんとしてないと怒られると思うの」
「何言ってるんっすか、私はポンコツになんてなってないっすよ!、ほら今日だって朝から腹筋100回しちゃいましたし!」
「・・・」
・・・
・・・
「・・・で、痛みはあるから神経は大丈夫そうなの、尺側の腱も大丈夫だと思う、親指を動かす腱が切れてるのかも?」
「嬢ちゃんの居た前世ではこの場合どうやってた?」
「手術なの、切れた腱をくっつける、向こうのネットで調べて来たから多分これでいけると思う」
クックさんの事を頼まれた翌日、私は博士の研究室に来ています。
変人だけど王国最高峰の技術を持つ医師でもある博士にクックさんの手術を依頼するのです。
「嬢ちゃん、何か失礼な事を考えてねぇか?」
博士、鋭いな・・・。
「考えてないのです!」
「やり方は分かった、この、「たぶれっと?」ってやつは便利だな・・・」
博士が私の持ってきたタブレット端末を持って珍しそうに眺めています。
中には日本で集めた医療関係の書籍や画像、動画が入っていて必要に応じて私が翻訳して博士に伝えました。
「博士ぇ!、見ただけで分かるの?、凄いのです!」
「まぁな、骨が砕けて折れたやつは腕の肉を開いて骨を修復した事がある・・・だが腱の縫合はやった事ねぇな」
「そうなのです?」
「実績は無いが医者として興味がある、成功したらこの世界で初だ、医学が進むのは俺としても歓迎だな」
「お金は私が払うのです」
近く大賢者の称号を与えられる事になっている博士が直接施術・・・普通なら報酬として金貨を何十枚も要求されるのです。
「いや、この施術で論文を出せば金が入るだろうからタダでやってやる、嬢ちゃんも腕の手術観るのは初めてだろ、やり方教えてやるから補助しろ・・・但し確実に治る保証はせんぞ」
「大丈夫、腱がくっ付いたらリハビリでいけると思うの」
「じゃぁ準備ができ次第コルトへ行くか、向こうの美味い物食わしてくれるんだろ・・・そうだ、嬢ちゃんの言ってるリハビリってやつも論文にして出すといい、また陛下から何か貰えるかもしれんぞ」
「これ以上ご褒美はいらないのです!」
それから更に3日後、私と博士はコルトの街でクックさんの手術を行いました。
私の作った・・・じぃじに教えてもらった秘伝の麻酔を使って博士が施術、朝から始めて夕方に終わりました。
消毒は博士の使い走り状態になっている知り合いの聖女様、今日もお休みのところを押しかけてコルトの街に連れて来られてます。
泣きながら博士の隣で浄化の重ね掛けしてたけど・・・博士とはどういう知り合いなのでしょう?。
クックさんはというと今は腕を固定して絶対に動かさないように言ってあるのです、傷が治ったら時間をかけてリハビリかな、この世界で初の腱の修復手術は大成功なのです!。
「お疲れっす!・・・私は何もしてないっすけどね!」
レストラン・タダーノのテラス席でシャルロットさんが皆に声を掛けました。
ここに居るのは手術を終えた博士と私、シャルロットさん、それから聖女様です。
「おう!、今日は俺の奢りだ、漁港で新鮮な魚を直接仕入れたから味には自信がある、遠慮なく食ってくれ!」
マスター・・・タダーノおじさんが厨房から美味しそうな料理を沢山抱えて出てきました。
「博士も今日はありがとう、この人はいつも僕が話してるレストランのマスターでタダーノさん、ここは魚介料理がすごく美味しいの」
「確かに美味そうだ!、こりゃ楽しみだな」
目の前に置かれた料理を見て博士が叫びます。
「・・・私もご一緒していいの?」
博士の隣に座っている聖女様が私に尋ねました。
「インデクスさん、あなたも浄化を頑張ってくれたから遠慮しないで沢山食べて」
聖女様のお名前はトアール・インデクスさん、私と同じくらいの身長だから13歳くらい?・・・と思っていたら魔力量が多い17歳でした!。
多いと言っても平均よりはって感じらしいので普通の人の1.5倍から長くて2倍くらいの寿命があるだろうって博士は言ってます。
・・・っていうかこの人、いつも博士に連れて来られて泣いてるけど大丈夫なのでしょうか?。
「インデクスちゃん!、ここは夕日も綺麗っすからね!、眺めも最高だしテラス席にして正解だったっす!」
「そう・・・ですね、とても綺麗?」
あれ、なんだか聖女様がとても悲しそうな顔をしています、夕日に何か嫌な思い出でもあるのでしょうか?。
「ほら、魚のムニエルに貝のパスタ、ミートパスタもあるぞ、それに魚介リゾットだろ、焼き魚にソース掛けたやつ、鳥も良いのが入ったから香辛料と塩で焼いたの両方作ったぞ」
「わぁ!、美味しそうっす!」
人のお金で食べるのが大好きなシャルロットさんの笑顔が輝いています!。
「シャルちゃんと博士?は酒大丈夫か、ワインの良いのがある、魚料理によく合うぞ」
「美味そうだな!、酒は大好きだぞ」
では!、食べましょうか!。
・・・
・・・
楽しい夕食が終わり、博士達は私のお家にやってきました、これから2人を王都に送るのです。
「博士とインデクスさん今日はありがとう、私の寝室片付いてなくてごめんね、ここに小さいけど魔法陣置いてあるんだぁ・・・これから転移魔法陣で王都に送るね」
仮設の魔法陣でも良かったのですが距離が離れ過ぎると転移先の精度が悪くなるし、精度を優先すると膨大な魔力が必要なので王都邸にある私のお部屋や博士の研究室の座標を正確に登録した魔法陣を床に置いてあるのです。
「あぁ頼む、俺は手術で疲れたから魔力は温存したい、トアール嬢ちゃんも俺の研究室でいいぞ、あとで教会に送って行く」
「・・・よろしくです」
「じゃぁ送るからまず博士ね、そこの丸い輪の中に入って・・・ほい!、転移!」
しゅっ・・・
「次は、トアールさん・・・同じようにそこの丸い輪の中に入ってもらえますか」
「あの・・・」
「・・・はい?」
「この事は内緒にして欲しいのですが・・・」
「・・・」
「私は目が全く見えません、だから輪がどこにあるか分からないの」
「え?・・・でもそんな感じは全然・・・」
「気付かないですよね・・・ドックさんのくれたこの指輪があるから人や物の輪郭だけは線みたいな感じで分かるのだけど・・・でも色や光、模様や人の表情は見えないの」
「こっち・・・です」
私はトアールさんの背中を軽く押して輪の中に案内します。
「ありがとう」
「じゃぁいきますね・・・転移!」
しゅっ・・・
「全然そんな感じには見えなかったのです・・・普通に歩いて、ご飯も食べてたし」
・・・
・・・
ぱあっ!
「おう、おかえり、コルトはいい雰囲気の街だったな」
「私には景色も見えないし・・・あ、でも海の香りはしたかな、お料理も美味しかったぁ・・・」
「あぁ、確かに料理は美味かったな、また転移して食いに行く価値はある、次に行く時も一緒に行くか?」
「ドックさんの奢りでしたら喜んで」
「相変わらず金に汚ねぇ奴だな」
「お金は裏切らないし、私に痛くしたり酷い事をしませんから大好きですよ・・・ふふっ」
「それにしても、あの嬢ちゃんは毎日あんな美味いもん食ってるのか、羨ましいな」
「実はリゼちゃんに私の目が見えない事バレてしまいました・・・ドックさん先に帰っちゃうから魔法陣の目印に立てなんて言われても私には見えないから分からないよぅ・・・」
「あぁ・・・うっかりしてたな、だがあの嬢ちゃんは大丈夫だ、信頼できる」
「そうですか・・・じゃぁ私は教会に帰りますね、浄化の報酬はちゃんと払ってくださいよ」
「分かってる、出張料金も上乗せしてやるよ、送って行くから待て・・・そうだ転移させてやればすぐだな、あの懺悔室でいいか?」
「・・・うん、夜の時間なら教会に誰も居ませんので」
トアール・インデクスさん
読んでいただきありがとうございます!。
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