EX3-03 - かぞくかいぎ -
EX3-03 - かぞくかいぎ -
こんにちは、エリーゼ・シェルダン12歳です。
怖いと思っていた大伯母様は無口なだけの女の子でした。
あの後、大伯母様・・・いえ、リゼちゃんとお話していたら夕食の時間になったとサリーナさんが呼びに来たので仲良く食堂に向かいました。
もう私の中ではリゼちゃんとは仲良し!、お友達!、大親友です!。
私が先を歩いて、リゼちゃんが杖を使ってトコトコと後ろをついて来ます、その様子を怯えた表情で眺めている使用人の人達・・・。
リゼちゃんって本気で皆から怖がられてるし!。
・・・
・・・
食堂に入るとテーブルの上にはお料理が並べられていて、お父様とお母様、お兄様が席に着いて待っていました。
うちは夜会の時以外は基本的にテーブルに乗っているものを皆で取り分けて食べるのです。
リゼちゃんが居るから今日はいつもよりちょっとだけ豪華ですね、私の大好きな鶏肉のソテーもあるし!。
お父様は食堂に仲良く入って来た私達を見て驚いたような顔をしています。
「エリたん、もう伯母様とお話は終わったのかな?」
「うん、もうリゼちゃんとはお友達っ!、大親友だよ!」
私はリゼちゃんに抱きついて言いました・・・本当にリゼちゃん良い匂いするなぁ、どこで香水を買ったのか後で教えてもらおう!。
私がリゼちゃんの匂いをさりげなく嗅いでいるとお父様は「そうか、良かったね」と言って料理を取り分け始めました、お母様とお兄様は何故か凍りついています。
「伯母様っ!、娘が失礼な事を言って申し訳ありません!」
真っ青な顔をしたお母様が慌ててリゼちゃんに謝ります、お母様も怖がってるんだ・・・。
「別にいい・・・私が(リゼちゃん呼びを)頼んだ」
リゼちゃんが無表情でお母様に向かって言いました、分かっていてもその無表情は怖いなぁ・・・っていうかリゼちゃん言葉足りなさ過ぎ!。
そんな事を考えながら私とリゼちゃんも席に着いてお食事を始めます。
お父様とリゼちゃんは向かい合って座り、お母様はお父様の隣、お兄様はリゼちゃんの隣で私はお兄様の隣だったのでお兄様に頼んで席を交代してもらいました。
お兄様ほっとしてるなぁ、実はリゼちゃんの隣が怖かったのかも・・・。
かちゃかちゃ・・・
・・・
それにしても私の隣でお肉をもきゅもきゅ食べるリゼちゃんは人に懐かない小動物っぽい感じで可愛過ぎます!。
もきゅもきゅ・・・
・・・
もぐもぐ・・・
・・・
もっ・・・もっ・・・もっ・・・
・・・
「今日のお夕食凄くおいしかったぁ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
うちのお食事はいつも美味しいのです!、でも今日はいつもと違って私以外誰も食べている時に喋りません。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「お葬式みたいで嫌な感じだねー」
食後のお茶が運ばれて来た時、私は皆に言いました、こんなに優しくて温かい家族なのにリゼちゃんと距離を置いてるなんてありえないよ!。
「ねぇ、どうしてリゼちゃんを怖がってるの?」
「そ・・・そんなことありませんよ」
私から目を逸らしながらお母様が言いました、声が震えています。
「コワガッテナイヨ・・・」
挙動不審になりつつお兄様が言いました、まだ暑い時期じゃないのに額に汗が浮かんでいます。
「怖がってるよ!、みんな笑顔が不自然だしリゼちゃん避けてるし・・・使用人の人達も今日は朝から緊張してるよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「私も最初リゼちゃんに会った時は怖くて震えてたの、でも話してみると優しくてどこにでも居るような女の子だったよ、問題はリゼちゃんの口数が少な過ぎて会話がちゃんと成立しないの」
「そうなのかい?」
お父様がお茶を飲みながら私に言いました。
「これを読めば分かるよ、さっきお部屋でリゼちゃんが私に渡してくれたんだけどね」
私はリゼちゃんから貰った筆談用の紙をポケットから取り出しました。
「あー!」
リゼちゃんは見られるのが恥ずかしいのか私から紙を奪い取ろうとします、でも手でリゼちゃんの顔面を押さえて家族に紙を見せました。
全員に分かるように私は大きな声で音読します。
「あぅ・・・だめ、やめて・・・恥ずかしい」
リゼちゃんが何か言ってますが声が小さくて聞こえませんっ!。
読み終わって皆の顔を見ると目を見開いて呆然としていました、リゼちゃんは顔を両手で隠し真っ赤になってフルフルと震えています。
「・・・我々は伯母様に嫌われているのかと思っていたんだよ」
気まずそうにお父様が話し始めました。
小さい頃はこのお屋敷で伯母様がよく遊んでくれていたそうです。
思春期を迎えると恥ずかしさが出てきたし見た目が幼い女の子と遊んでいるのをお屋敷に来ていた友人にからかわれ、自然と距離を置くように・・・。
「私は初対面の時に気まずくなってしまったの」
お母様はお父様と結婚した時に「白銀の大魔導士様」であり「国の英雄」と紹介され、お母様は緊張で、リゼちゃんは人見知りで警戒し、お互い殆ど喋らず無言で見つめ合っていたとか。
「僕は会うたびに睨まれてると思って・・・」
お兄様は私と同じでリゼちゃんの無表情で氷のような冷たい目に怯え、幼い頃は泣いたり、怖がって逃げたり、大きくなっても目を合わせられなかったようです。
「リゼちゃんは?」
「・・・」
「あ、筆談用の紙を持って来るね」
私がそう言って立ちあがろうとすると、サリーナさんが代わりに持ってきてくれました。
「さぁリゼちゃん、私達家族に話したい事があれば書いて!」
こくり・・・
頷いて紙に書き始めました、それを私が音読して家族に聞かせます。
かきかき・・・
ぱらり・・・
「えーと、じゃぁ読むね・・・よく懐いてくれていた可愛い甥っ子から急に避けらるようになってとても悲しかった」
それを聞いたお父様が挙動不審になります。
「両親が引退して領地で暮らすようになり王都の屋敷が寂しくなった、弟は執務で忙しく弟の妻とは仲良くなったが一人で過ごす事が多くなった」
「・・・」
お父様が真剣なお顔で聞いていますね。
「寂しさを紛らわせる為に仕事に没頭した、功績を出すたびに周りが自分を神聖視するようになって皆の好奇の視線が怖くなった」
「まぁ・・・」
お母様が思わず言葉を発してお口を押さえます。
「屋敷の使用人が入れ替わり親しい人達が減っていった、新しい使用人からは何故か恐れられ自然と人を避けるようになった」
お父様の後ろに控えている執事長さんが気まずそうに俯いてサリーナさんはメガネを指でクイッと持ち上げました。
「王都の屋敷は両親や弟と過ごした大事な場所で愛着があったし家に居ると幸せだった、でも家が大きくなる度に増改築が繰り返され、想い出が消えていくようで寂しくて泣いた」
「・・・」
お父様が両手でお顔を覆ってしまいました。
「知らない家の中に居る知らない人達と生活するのは居心地が悪かった、血の繋がっている家族の筈なのに避けられるのは自分が不老不死の化け物だからなのではないかと考えるようになり余計に人を遠ざけ屋敷に寄り付かなくなった」
お兄様を見ると・・・無表情で私の朗読を聞いています。
「王都の屋敷に唯一残っていた大切な自分の部屋が留守中に改装されているのを見た時、この家に自分の居場所はもう無いのだと思った」
「なっ・・・」
お父様が驚いています、もちろん「どうだ綺麗になっただろう」と嬉しそうにお屋敷の改装を続けていたお父様にそんな意図は無かったと思いますが・・・。
「弟は既に息子に爵位を譲り領地に移住していたので自分も領地の邸宅に引っ越す事にした、でも領地の使用人も入れ替わっていて同じように怖がられた、弟に気を遣われ弟と使用人達の間の空気が悪くなるのも嫌だった」
「あぁ・・・何という事でしょう」
お母様が泣き出してしまいました!。
「叔父との楽しい思い出が詰まった領地の森の奥に家を建て、誰とも関わらず一人で暮らすことにした、ちなみに叔父は森で今も元気に魔物を狩っている」
そういえば大叔母様の叔父様はまだご存命でしたね、大叔母様やお祖父様と同じで不老不死の、確か・・・シルベスター様?。
「仕事で王都の商会や領地の屋敷に行く事はあるけれど転移魔法陣を使い人との接触を可能な限り避け続けた」
「ぐすっ・・・リゼちゃんが可哀想だよ・・・」
ここまで読んでいた私も涙がこぼれます。
「申し訳ありまぜんでじだぁ!」
号泣していたお父様が叫びました、お母様とお兄様も泣いています。
「大丈夫だよ、慣れたから・・・領地に行けば弟も居るし、お父様やお母様も居るから」
リゼちゃんが小さな声で呟きます。
私はお父様に向かって・・・。
「うん、お父様が全部悪い!、リゼちゃんが頑張って大きくした家なのに居場所が無いなんておかしいよ!」
お父様はまだ言い訳しています。
「屋敷が老朽化して一番汚な・・・いや古いお部屋を伯母様に使わせるのもどうかと思って一番日当たりのいい部屋に移ってもらったんだ、元の部屋は・・・」
「元の部屋は?、何?」
「物置にした」
お父様が信じられない事を言いました!。
「待ってお父様、考えてみてよ、自分のお部屋に転移してそこが物置になってたら普通泣くでしょ」
「・・・うん、お部屋に転移したら頭の上に・・・箒や雑巾が落ちてきたの、ちょっとだけ泣いた」
ぱこーん!
とても良い音がしたと思ったら今まで泣いていた筈のお母様がお父様の後頭部を張り倒していました。
「後でお話があります」
「・・・はい」
お母様怖っ!。
更にリゼちゃんとの話し合いで分かった事は、別にお父様に悪気があったわけじゃなくて、お屋敷の中で一番いい部屋を使って貰おうとしただけのようでした。
リゼちゃんはその頃お屋敷にあまり来なくなっていたので改装していいかどうか聞けなかったみたいです・・・何でこんな汚い部屋にってお父様は思ったらしいの、汚い部屋って随分失礼だよね。
「もともと古いお屋敷だったから改装して他の所が全部綺麗になって、最後に残ったのが私のお部屋だっただけ、別に汚くしてないのです、汚れたら自分でお掃除してたし・・・」
私たち家族との空気に慣れたのか、リゼちゃんが少しだけ大きな声で発言しました。
「リゼちゃん自分でお掃除してたの?、言えばメイドさんがやってくれるのに・・・もしかして人見知りを拗らせ過ぎてそれも言えなかったとか?」
「うん・・・」
この日を境にお屋敷でのリゼちゃんの扱いが変わりました。
あの時食堂にいた使用人達が屋敷中に話を広げ、「全使用人が泣いた!」みたいな感じになりました。
お父様は事の顛末をお祖父様に報告、そんな事になっているとは夢にも思っていなかったお祖父様は急遽領地を出発して王都のお屋敷にやって来ているようです。
お母様やお兄様も怖がっていた事をリゼちゃんに謝罪しました。
特にお母様は「娘がもう一人出来たみたい!」と大はしゃぎでリゼちゃんを可愛がり、お茶に誘ってお話をしたり捕まえて着せ替え人形みたいにしています・・・リゼちゃんの方が年上なのにね。
こうして誤解と意思疎通不足から発展した私達家族とリゼちゃんの間の大きな亀裂は修復されたのです。
それに・・・偶然聞いてしまった元お友達からの悪口で落ち込んでいた私に「ローゼリア王国の英雄、白銀の大魔導士様」という最強のお友達が出来てしまいました!。
読んでいただきありがとうございます!。
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