EX3-02 - ぷるぷるぷるぷる -
EX3-02 - ぷるぷるぷるぷる -
フルフル・・・
「サリーナさん、お・・・おかしなところは無い?」
私は鏡の前に立ち震える声でサリーナさんに尋ねました。
「はい、お綺麗ですよお嬢様」
メガネを指でクイッと持ち上げてサリーナさんが答えます。
遂に大伯母様にお会いする時間が来てしまったのです!。
お父様とお母様が一緒に行ってくれると思っていたのに一人で行けと言われたのです!、何故でしょう?、私何か悪い事したかなぁ・・・。
「あぅ、怖くて涙と鼻水が・・・ぐすっ・・・」
とてとて・・・
「・・・」
とても威圧感のある装飾付きの扉を目の前にして私は深呼吸をします。
大伯母様はここ王都シェルダン邸にもお部屋を持っていて、普段は留守にしていて誰も居ないのですが今日はいらっしゃる筈なのです。
プルプル・・・
震える手で部屋の扉をノックします。
コンコン・・・
「・・・」
返事がありません、入っていいのかな?。
もう一度ノック。
トントントン・・・。
「・・・どうぞ」
微かに返事が聞こえました、声が小さいから聞こえなかったよ・・・。
がちゃ・・・
「しっ・・・失礼します」
お部屋に入りました・・・。
「・・・お、お初にお目にかかかかかります大伯母様、エリーゼ・シェルダンともうしましゅ!」
噛んだのです・・・もうダメです、そういえば私赤ちゃんの時に会ってるし、お初じゃないし!。
お母様に教わった淑女の礼をします・・・足が震えてきました、私これが終わったらお母様に頭をよしよしして貰うんだ・・・。
「・・・座って」
ソファを勧められてしまいました、怒っているのでしょうか?、声が怖いです。
私はソファに座り恐る恐る顔を上げました、大伯母様は窓際にある執務机の前に立っています。
「え?」
そこには私が居たのです・・・いえ、私はとても大伯母様に似ていました、本当に鏡を見ているみたいにそっくりです。
違うのは左目にしている眼帯と顔にある大きな斬り傷、それから氷のような冷たい目・・・。
大伯母様がゆっくりと私の座っているソファに近付いてきます、お顔は感情が抜け落ちたみたいに無表情。
怖いですっ!。
プルプルプルプル・・・
・・・
・・・
今私と大伯母様は机を挟んでソファに向かい合って座っています。
「あれ?」
いい香り・・・香水かな?、大伯母様からは柑橘系の爽やかで少し甘い香りがします。
「・・・」
大伯母様の斜め後ろには初老のメイドさんが立っています、着ているメイド服はシェルダン家のものですが見覚えがありません、こんな人うちに居たでしょうか?。
もしかして大伯母様の専属メイドかも?、とても優しそうなお顔をされています。
・・・
・・・
「どうぞ」
かちゃ・・・
「あ、ありがとうございましゅ・・・」
優しそうなメイドさんは私と大伯母様にお茶とお菓子を用意して部屋の隅に下がり、用意されていた椅子に腰掛けます、ご高齢のようだから立ったままだと辛いのでしょう。
にこっ・・・
少し白髪混じりの黒髪メイドさんは私と目が合うと微笑んでくれました。
ちらっ・・・
このお部屋には初めて入りました・・・白い壁紙、古いけれど温かみのある家具、沢山の本が詰まった本棚、落ち着いた執務机、柔らかな光が差し込む窓には清潔感のある白のカーテン・・・。
このお部屋に居ると不思議と時間がゆっくり過ぎていくような・・・ってそんな事を考えている場合じゃないのです!。
「・・・」
「・・・」
会話が何もありません、気まずいです!、私から喋れという事でしょうか?。
「お・・・おとうしゃまは大伯母様と私、よく似てるって言ってたんでちゅが・・・本当によく似てましゅね」
あぅ、緊張で舌が上手く回りません、これじゃあ赤ちゃんだよ。
「・・・」
大伯母様のお顔が険しくなりました!・・・私、何か失礼な事をしてしまったのかも?。
はっ!・・・こっ・・・こんな不出来でゴミ以下の小娘と似てるなんて言われたら怒るよね、私終わったかも?。
「あの、大伯母様?」
「・・・なに?」
もうダメです!、何を言っても機嫌を損ねます、めちゃくちゃ怒ってるよこの人!。
「・・・」
「・・・」
いや何か言ってよ・・・もちろん口には出さず心の中でそう思っていた時、大伯母様が呟きました。
「・・・お茶」
「え?」
お茶がどうしたのでしょう?・・・分からないです!。
「・・・飲まないの?」
分かったのです!、大伯母様は「貴様!、ワシの茶が飲めねぇってのかゴラァ!」と言っているのです!、早く飲まないと!。
あ、ダメだ手が震えて・・・。
「うわ熱っつい!」
ごとっ・・・ばしゃぁ!
ぽたぽたぁ・・・
「わぁぁぁん!」
お茶をこぼしてしまいましたぁ!。
ひぃぃぃぃ!、こぼれたお茶がテーブルを伝って大伯母様の足にかかってますぅ!。
「ご、ごめんなさいっ!」
「・・・」
謝ったのに大伯母様は無言です!。
「・・・うっく・・・ぐすっ」
優しそうなメイドさんがテーブルを拭いてくれています、大伯母様は泣いている私にハンカチを差し出して・・・でも無表情なのが凄く怖いです!。
「ありがとうごじゃいましゅ・・・ぐす・・・」
ハンカチで涙と鼻水でぐずぐずになったお顔を拭いていると大伯母様が立ち上がり、執務机の所で紙に何かを書き始めました・・・。
「・・・」
さらさら・・・
「・・・」
かきかき・・・
「・・・」
もしかしてそれは私の・・・この家からの除名?、籍を抜いて追放だ!、的な恐ろしい書類?。
「お母様助けて・・・わぁぁん!」
ぱらり・・・
書き終わった紙を無言で私に差し出します、私を見下ろす表情が怖いよぅ・・・。
「・・・(ニタァ)」
「ひぃ」
大伯母様がとても邪悪な表情で笑いましたぁ!。
間違いありません!、これは「お前をこの家から除名するのじゃ!、とっとと出て行くがいいわ!、くけけけけ!」という内容が書かれた書類ですっ!。
フルフル・・・
私は震える手で紙を受け取り覚悟を決めて読みました・・・さようなら私の貴族生活。
エリーゼちゃんへ!
大きくなったね!、私とは赤ちゃんの時に一度会ってるけど覚えてないよね!。
じゃぁ「初めまして」だね!、あなたの大伯母リーゼロッテだよ。
私って人見知りで無口で、見た目もこんなで怖いから嫌われるんじゃないかって昨日は緊張してあまり眠れなかったの!。
淑女の礼とても上手だったよ、きっと一生懸命練習したんだよね、えらいえらい!。
あなたに会えると聞いて本当に私楽しみにしてたんだぁ!、エリーゼちゃん、あ、エリちゃんって呼んでいいかな?、いいよね?、じゃぁこれからあなたの事はエリちゃんって呼んじゃうぞっ!。
私と違って優しそうで綺麗な目をしてるから将来が楽しみだね、美人さんになりそう!、あ、そうだ!今は私と同じ体格だからお揃いの服を作ろうよ!、きっと可愛いと思うな、私が持ってる人気ブランド、「リーゼ」の特注品だよ。
そのお洋服を着て一緒にお出かけしよう!、美味しくて甘いケーキが食べられるお店があったら紹介して欲しいな、実はこう見えて私甘いもの大好きなんだぁ。
そういえば今日はなんだか気分が悪そうだけど大丈夫?、お腹痛いの?、ほんとに具合が悪いのなら無理しないで!、しばらくここに滞在するから身体の調子が良くなったらまたお話ししよう。
それから・・・あなたには私の事、リゼって呼んで欲しいな。
今日は会えて嬉しかったよ、ありがとう。
これからも、あなたが今よりもっと大きくなっても、私と仲良くしてくれると嬉しいな!。
「・・・え?」
大伯母様、文章だと凄い饒舌だよ・・・しかもちょっと可愛いな。
「あの・・・大伯母様?」
「・・・ちゃん」
また声が小さくて聞こえないのです!。
「大伯母様?」
「・・・リゼちゃんって呼んで」
どうやら呼び方を変えて欲しいようです。
「・・・リゼちゃん様」
「・・・」
私また何か間違えたかな?、大伯母様がほっぺをぷくーって膨らませてるし。
「・・・」
「様は無しで・・・」
何それ、大伯母様かわいいな。
「・・・リゼちゃん」
「何?、エリちゃん」
怖い人だと思っていた私の大伯母様はとてもかわいい女の子でした・・・。
読んでいただきありがとうございます!。
面白いと思った人は下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。




