EX3-01 - おおおばさま -
EX3-01 - おおおばさま -
「お嬢様、次のお茶会は本当に中止でよろしいのですか?」
メガネをかけ長い金髪を後ろできっちり束ねた専属メイド・・・サリーナさんが私に尋ねます。
「うん」
「お友達をお招きするのだと楽しそうに案内状を書かれていたではないですか・・・」
「・・・いいの」
サリーナさんがメガネを指でクイッと持ち上げてため息をつきました。
「・・・では奥様にお茶会の中止を報告して参ります」
「うん、お願い」
バタン・・・
サリーナさんがお部屋を出て行った後、私は一人ソファに座って窓の外に出ている明るい月を眺めます。
「3人に中止のお手紙を書かないと・・・」
ぽろぽろ・・・
「うっく・・・ぐすっ・・・」
はじめまして、私の名前はエリーゼ・シェルダン・・・12歳。
ローゼリア王国の貴族、シェルダン家の長女です。
私の家族は優しいお父様とお母様、次期当主であるお兄様、今は領地で暮らしているお祖父様とお祖母様、私はお会いした事が無いのですが引退して田舎でのんびり暮らしている曽祖父様と曽祖母様。
加えてあとお一人、お祖父様のお姉様・・・大伯母様がいらっしゃいます。
私のお家はローゼリア王国の筆頭貴族家として広大な領地、莫大な資産、多くの商会を持ち王家に並ぶ力を持つと言われています。
そのような家の長女として産まれた私はドジで人見知り、お勉強も得意ではなく陰では無能令嬢、顔がいいだけの馬鹿、筆頭貴族家の失敗作などと呼ばれています・・・。
・・・
・・・
「あんたエリーゼなんかとよく一緒に居られるねー、何言っても反応鈍いし上級貴族なのに卑屈だし」
「リリーシェ・・・あいつバカで単純だけど家柄だけは良いからねー、表向き仲良くしてると色々と良い思いができるんだぁ」
「あはは、アマンダさんはお金や権力目的かぁ、酷いなぁ」
「私とアマンダなんてあいつから頻繁にお茶会の案内が届くのよ、行くの嫌だけど両親からは行けって言われるしホント面倒臭い、ちょっと話してやったくらいで懐くなよって!」
「リザさん一番仲良さそうじゃん!」
「やめてよ、両親の命令だから仕方なく付き合ってるだけ、あんなウジウジした奴大嫌い!、まぁお茶会のお菓子だけは最高なのが出るけどね!」
「・・・ねぇリザさん、今度私をあいつに紹介してよ、あの馬鹿でかい屋敷の中に一度入ってみたいの」
「えー、どうしようかなぁ、お屋敷はすごいけどお茶会はあいつのご機嫌をとらなきゃだし退屈だよ、気疲れするってミルキィさんも言ってたし」
「あははは!、じゃぁやめておく!」
・・・
「・・・」
それは一昨日参加した王家主催の夜会での出来事・・・お手洗いに行った時に偶然聞いてしまったのです。
友人だと思っていた子達が他の令嬢と一緒に私の悪口を言っていました・・・。
フルフル・・・
「あぅ・・・思い出したらまた悲しくなってきましたぁ・・・」
アマンダさんとリザさん、それからあの場所には居なかったけれどミルキィさん・・・こんな私に優しく声をかけてくれて、お友達になろうって・・・。
「今までどんな気持ちで私とお話ししてたのかなぁ・・・」
3人に出会う前は令嬢達から遠巻きにヒソヒソと悪口を言われる程度だったので我慢できました、でもお友達だと信じていた人達からの悪口は息が止まりそうになるくらい悲しかったのです。
ごしごし・・・
つつー・・・
「あぅ・・」
お洋服の袖で涙を拭いたら鼻水も垂れていたようで大変な事になりましたぁ!。
「確かハンカチが机の上に・・・」
私はソファから立ち上がって机に向かいます。
とてとて・・・
こけっ!
「わっ!」
どさぁ!
何も無いところで躓いて転んでしまいました!。
「うっく・・・ひっく・・・」
床に転がったまま起き上がる気力もなくて・・・涙も止まりません。
昔からドジでノロマで無能な私、何をやってもうまくいかないの・・・。
表面上は優しく接してくれているお家の使用人達も陰では私を笑っているのではないかと・・・そんな妄想までしてしまいます。
・・・
・・・
ちゅんちゅん・・・
床で転がっていた筈なのに朝目が覚めるとベッドの上でした!。
「・・・サリーナさんが運んでくれたのかな?」
「そうでございますよお嬢様」
「ぴゃぁ!」
ベッドの脇にはサリーナさんが姿勢よく立っています、気配が全然しなかったから驚いて危うくおしっこを漏らすところでした!。
「昨日発見した時には心臓が止まるほど驚かせて頂きましたが・・・お部屋に入ると床に転がって熟睡しておられましたので私がベッドまでお運びいたしました」
「それは・・・ごめんなさい」
「いえ、お嬢様のお世話が私の仕事でございますので」
サリーナさんがメガネをクイッと持ち上げて私に言いました。
「旦那様がお呼びです、朝食のあとで執務室に来るようにと」
・・・
サリーナさんが持ってきてくれた朝食を自分のお部屋で食べた後、お父様の執務室に向かいます。
コンコン・・・
「入りなさい」
ガチャ・・・
「おはようございますお父様、お話って何でしょう?」
私はソファに座ってお父様に尋ねます。
「エリたん、明日からしばらくの間お屋敷に大伯母様が滞在するから一度お会いしておきなさい」
お父様が私にとんでもない事を言いました!。
「ひぃっ、いきなり明日ですかぁ!・・・まだ私、心の準備が・・・あぁっ!・・・」
ごとっ・・・ばしゃぁ!
「熱っ!・・・わぁぁん!、あついよぉ!」
手が滑ってお膝にお茶をこぼしてしまいました!、それに父様のお部屋の高そうな机を濡らしてしまいましたぁぁっ!。
「ははは、私が子供の頃は大伯母様にとても可愛がってもらったものだ、そんなに緊張しなくても大丈夫だと思うぞ・・・たぶん」
ふきふき・・・
お部屋に居た執事さんが私の濡れたお膝を拭いてくれました、この無表情な執事長さんのお名前はゲイリーさん、ダメな奴って呆れられたかも・・・。
「くれぐれも大伯母様にはお茶をこぼさないようにね・・・」
お父様の執務室を出た私はどうやって自分のお部屋に戻ったのか覚えていません・・・。
・・・
・・・
我がシェルダン家は誰かが結婚したり、子供が生まれたり、社交デビューしたり、何かお祝い事があると大伯母様とお会いしてお言葉を頂く事になっています。
お父様はもちろん、お母様やお兄様も何度かお会いしたと言っているのに私は生まれた時に一度だけ・・・。
「・・・それって私が無能だからシェルダン家の一員として認められていないのかも?」
・・・
遂に当日の朝がやってきました!。
私は自室で一人、大伯母様について調査したメモを読み上げます。
私だって何も知らない状態で大伯母様に会うほどの馬鹿ではないです、家族に聞いたり頑張ってお家にある資料を調べたのです!。
「今のシェルダン家の繁栄は大伯母様のおかげと言っても過言ではない、昔から大きな家だったが大伯母様の手腕によりシェルダン家の資産は20倍に増えた」
「シェルダン家の領地敷地内にある別邸と研究塔は大伯母様が所有している、王都にはシェルダン家王都邸から少し離れた場所に別邸がありその所有者も大伯母様である」
「左足と左目が不自由で杖を持って眼帯をしている、その傷は当時の王女殿下を刺客から守るために負った名誉の負傷である」
「当時の王女殿下と大伯母様はとても仲が良く、現在でも頻繁に交流している」
「魔力量が膨大で建国の大魔導士様を大きく上回っている可能性がある、あまりにも多い為に13歳ほどの姿のまま成長が止まっている」
「国への多大な貢献を認められ爵位を頂いている、これは王族に次ぐ最高位の爵位である」
「魔法陣の構築や魔道具に詳しく、数々の功績から「白銀の大魔導士様」と呼ばれている、異名を持つ大魔導士様は建国から数えても5人しか居ない」
「空間転移魔法陣と時空転移魔法陣の私的な使用を国から許可された2人のうちの1人である、現在この2人以外で転移魔法陣を起動できる人物は居ない」
「王家を守る近衛魔法騎士団の名誉団員である、これに伴い騎士の爵位も持っている」
「極度の人間嫌いで普段は領地の森の奥に住んでおり、近隣の村や街へは商人を通して薬や魔道具を販売している、領民からは「森の魔女様」と呼ばれている」
「「狂乱の大賢者様」と共にかつて王国を襲った呪いの刃事件の被害者救済に尽力し、敵対していた帝国を崩壊させた英雄の一人である」
「エテルナ大陸一と言われる大商会「オーニィ商会」の幹部に加え「エース・オーニィ・エンターテインメント商会」名誉取締役であり、更に人気ファッションブランド「リーゼ」のオーナー、会長兼相談役でもある」
「貴族でありながらギルドに登録しているハンターである、階級は不明、何故かギルドにより隠蔽されている、「幻影」の異名を持つ白金級ハンターではないかという噂がある」
「伝説的な暗殺者「ローゼリアの毒蛇」の弟子であり、薬草や毒草の扱い、調薬をはじめとした暗殺技術の全てを受け継いでいると噂されている」
うん、無理っ!、怖いですっ!。
経歴を調べただけでも大伯母様怖い人ですぅ・・・私、絶対何か粗相をして怒られるの。
それで家から追い出されて路頭に迷って、街を彷徨ってると悪い男に騙されて酷い事をされたり・・・。
「わぁぁん!」
「どうされたのですかお嬢様」
「わぁぁぁ!、サリーナさんいつからそこに?」
「その手に持っている紙を読み上げ始めたところからでしょうか」
最初から居たようです!、気配が全然しなかったし!。
「サリーナさんは大伯母様とお会いした事ある?」
私はサリーナさんに尋ねます。
「はい、私は幼い頃からこのお屋敷でお世話になっておりますので」
「印象は?、どんな人?」
「・・・」
何で黙るの?、何か言ってよ!。
「初対面の時は無言で頭を撫でて頂き・・・お菓子を下さいました」
「え?」
「私が今のお嬢様と同じ年齢の頃の話でございます、あの時はとても恐ろしく、私は不覚にも失禁を・・・」
サリーナさんが整ったお顔を赤くしてプルプル震えています!。
「その後も何度かお会いしましたが・・・とても優しい御方ですよ」
サリーナさんのような大人っぽい美人さんが恐怖でお漏らしを・・・。
フルフル・・・
「わぁぁん!、怖いよぉ!」
読んでいただきありがとうございます!。
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