3-06 - とし -
3-06 - とし -
俺の名前はトシロー、13歳、皆からはトシって呼ばれてる。
このコルトの街で宿屋を経営している親父と妹の3人暮らしだ。
お袋は居ない、俺が10歳の時に死んじまった・・・宿屋の向かいにはタダーノ伯父さんのやってるレストランがあって普段はこの周辺で遊んでる。
俺には最近気になってるガキが居る、まぁ俺も悪ガキだが奴は俺より年下だ。
美人のお姉さんと一緒にそいつが町長に連れられてやって来たのは今から10日ほど前になる、伯父貴の店・・・「レストラン・タダーノ」で料理を美味そうに食って帰ったが俺は少し気になる事があった。
2人が初めて店に入ってきた時、俺は店のテラス席で海を眺めてた・・・言っておくが俺はあの場所で海を眺めるのが好きなんだよ、友達居ないからじゃねぇぞ!。
あの2人は店内でとにかく目立ってた、お姉さんが美人なのに加えてガキの方も普通じゃなかった。
奴はオドオドと周りの様子を気にしながらひどく怯えてる、周りの客も街の外から来た客が珍いのかチラチラ見てたな。
足が悪くて眼帯をしている姿が痛々しく見えるからか、周りの客は「可哀想に・・・」ってほざいてやがる、その声にもガキは反応してた。
俺のお袋は没落しちまったがそこそこ歴史のある貴族の令嬢だった人だ、親同士の仲が良かった縁で親父と結婚した。
妹が生まれてしばらく経ったある日、街外れに薬草を採りに行き、運悪く魔物に襲われて片腕を失い顔や両足にも酷い傷を負った。
事件の後は杖と親父に補助して貰いながら生活してた、だが美しくあれと大切に育てられた令嬢にとって自分の身体に傷が付いた事や周りの好奇の目が耐えられなくなったんだろう、家に引き篭もるようになり精神を病んだ。
次第に家族とも意思疎通が出来なくなり「可哀想な人っていう目で見られるのが辛い」「人の視線が怖い」「同情されるのはもう嫌」と言って毎日泣いてたのを覚えてる・・・最後には街外れの崖から飛び降りて死んじまった。
お袋の事が頭にあったからだろう・・・そいつの事が気になった、自分の傷を気にして次第におかしくなっていったお袋の姿と重なったのかもしれねぇな。
あの2人は時々昼飯を食いにレストラン・タダーノへやって来るようになった、俺が意識してるのを伯父貴は知ってたのか2人に紹介してくれた。
「こいつは俺の甥っ子だ、向かいで宿屋をやってる弟の息子でトシローってんだ、悪い奴じゃぁねぇんだが生意気で性格・・・いや口が悪くて友達が居ねぇ、よかったら友達になってやってくれ、おいトシ!、挨拶しろ!」
いつも伯父貴は一言多い、友達がいねぇ事までバラすなよ!。
「おっちゃん!、余計なこと言うなよ畜生!・・・よっ!、俺はトシロー、トシって呼んでくれ!、13歳な!、見た感じ俺より小っさいから年下だな・・・じゃぁ今日からお前は俺の弟分だ!、遊んでやるよ!」
俺は普通こんな事を言う性格じゃない、どちらかといえば周りの人間を拒絶するタイプだ、たぶん俺も周りの奴らと同じでこいつの事を哀れだと思ったのかもしれないが・・・どうしても放っておけなかった。
だって隣にいるお姉さんは見るからに性格が大雑把そうだ、繊細そうなアイツの心のケアが出来そうにないじゃないか・・・俺が話しかけると奴はいっそう怯えた。
何でだよ!・・・横に居たお姉さんが言うには極度の人見知りだそうだ。
「ぼっ・・・僕・・・リゼル・・・ですっ、よろしく・・・ふひっ」
ふひってなんだよ・・・面白い奴だな、男だけど小動物みたいで可愛いぜ。
「あははー、変な奴だな!、お前足悪いのかよ!、傷もあるしその眼帯もダセェな!、もしかしてお前の左目って見えないのか?、まぁ男だったら傷ある方がかっこいいかもな!」
俺はお袋が苦しんでるのを横で見てきたから奴の傷について触れないでいる事は一番の悪手だと思った、だからそれを笑いに変えてやろうって思い外見をからかってやった。
・・・待て!、やべぇ、泣きそうになってやがる!、くそっ、対応間違えたか!、傷つけちまったかな・・・。
パコーン!
後ろから伯父貴が張り倒して来やがった、何すんだよコラ!。
「お前、さっきシャルちゃんに控えめにって言われただろうが!、見ろ!、坊主が泣きそうになってるじゃねぇか!、そんなだから友達できねぇんだよ!」
ほぅ、美人のお姉さんはシャルちゃんっていうのか・・・ってそんな事はどうでもいい、早くなんとかしねぇとこいつ泣いちまう!。
「痛ぇー!、だってこいつまともに喋らないしオドオドしてっから・・・ちょっとからかってやろうと思っただけだし!、男なんだからこれくらいで泣かないよな!」
ならスキンシップだ!、男同士の美しい友情ってやつ!。
俺にはよく分かんねぇが年上の奴らがこうやって肩を組んで道を楽しそうに歩いてるの見た事あるから大丈夫だろう!。
「やだ・・・離して、怖い」
嘘だろおい!、俺のどこが怖いんだよ!、妹にはかっこいいお兄ちゃんって言われてるんだぞ!。
「だーかーらー、トシくんは距離感近いんだよー、リゼルくんは人見知りだからこんなに近付かれると怖くてお漏らししちゃうの!」
美人のお姉さんが奴から俺を引き剥がし、鼻くそほじりながらとんでもないことを言いやがった、こいつこんな歳でまだお漏らしすんのかよ!、それにお姉さんそんな事したら美人が台無しじゃねぇか!。
・・・だが、俺はもうちょっとこいつの扱いを考えた方がいいな、この後俺が何言っても泣くだろうから今日は退散するとしようか。
次は俺が冗談を言って沢山笑わせてやろう、傷の事を忘れるくらい面白い事をして遊んでやろう、そう心に誓った。
「お漏らしすんの?、こんなにデカくなってまだお漏らしかよ!、あはははは!」
俺は奴が泣かないようできるだけ明るく振る舞い店を出た。
・・・その日の夜、うちの宿屋に来た伯父貴に「坊主をからかって泣かすんじゃねぇ!」って思いっきり殴られた、何でだよ!。
それからまた何日か経った、あの2人は伯父貴の料理が気に入ったのか殆ど毎日昼の時間になると店に顔を出すようになった、そのたびに俺は奴と話をしたが何を言っても乗って来ねぇ!。
何故だ!、俺は友達が居ないから自分の話が面白いのか基準が分からねぇ、涙目になって睨まれるだけだ。
こいつの心の闇は相当深そうだ、それに美人のお姉さんはこいつの何なんだろうな、姉弟にしちゃぁ似てねぇし・・・。
俺以外の見知らぬ客が近寄ると身体の向きを変えて警戒してるから護衛って可能性もあるな・・・めっちゃ食うし明るくてノリがいい、胸は小せぇけどな・・・。
お姉さんだけは俺の話を大笑いして聞いてくれるから多分俺の話術はかなりいい線行ってると思う、だが奴は無表情だ!。
今日も帰ってからネタを練り直すかな・・・こうなったら意地でも笑わしてやるから覚悟しとけよ!。
次の日になって奴は両腕にゴツい腕輪をつけて店に現れた、何だそれ?、俺にいいネタ提供してくれるじゃねぇか、お前がその気なら遠慮なくいじらせてもらおうか!。
「はははー、お前なんだよその腕輪、超だっせぇ!、それ本当にカッコいいって思ってんの?、まるで手枷嵌められた奴隷じゃん」
「ち・・・違うもん、これは結界の腕輪・・・斬られても、魔法を撃たれても無傷な凄いやつなの!」
遂にやったぜ!、ようやく俺の話に乗って来てくれたぞ、いやぁ長かったな!、夜遅くまで考えたネタも沢山あるが今日の話題はこの腕輪だ!。
「・・・いや分かるぜー!、俺らの年齢だとそういう設定妄想して俺スゲー!、俺カッケー!、俺無敵!、ってやっちゃうよな!、はいはい分かりましたぁー、それはリゼルきゅんのーすっごーい魔法の腕輪なんでちゅねー、あはははー」
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
・・・待ってくれ!、何で泣くんだよ!。
そこは「バレちゃったかぁ、僕かっこいい魔法使いに憧れてんだよね!」「それなら今度丘の方へ遊びに行くか!、魔法は使えねぇけど冒険しようぜ、俺が案内してやるよ!」なんて話が弾んで一緒に遊びに行こう!、ってなるとこだろ!。
もう何日にもなるのに何でまだ遊びに行くきっかけも作れてねぇんだよ!、俺の話術はそんなにクソなのか!、ってか男なのにそんな泣き虫じゃ他の奴らに虐められるぞ。
俺が説教すると余計に泣くだろうから、ここは明るく・・・。
「あれ?、また泣いちゃう?、男なのに情けねーな、やーい泣き虫リゼルー」
ぱしっ!
・・・え、何で俺殴られるの?、いやそんなに痛くはねぇけど・・・って、ちょっと待て!、今こいつの腕輪の中から泥が出てきたぞ!、泥遊びでもしてやがったのかよ!。
畜生!、目に泥が入りやがった!、痛てぇ!。
ごしっ・・・
ダメだ!、目を擦ったら余計に痛くなりやがった!。
「あぅ・・・ごめんなさい、つい・・・」
うわぁぁ!、凄ぇ悲しそうな顔してるし!、腕輪をからかったの本気にしたんじゃねぇだろうな!、もしかしてこいつ本当にそれをかっこいいって思ってたんじゃ・・・。
やばい!、目に入った泥で涙が出てきた!、早く洗わねぇと!。
それにこいつ今「つい」って言ったよな!、まさか腕輪に泥仕込んでわざとやりやがったのか?、気弱そうなふりしていい性格してんじゃねぇか!。
面白くなってきたぜ・・・いっぺん泣かしてどっちが上か分からせてやった方がいいかもしれねぇな!・・・ここは大袈裟に痛がって。
「痛ってー、お前なんかもう知らねー、明日から絶対遊んでやらないからなぁー」
だっ!
俺は走って店を出た、思わず顔がニヤけちまうぜ、
これだけ言っておけば明日には泣きながら「遊んでくださいトシ様お願いします!」って言ってくるだろ!。
読んでいただきありがとうございます!。
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