3-02 - みなとまちにすむのです! -
3-02 - みなとまちにすむのです! -
「やーっと着きましたねー、お嬢さまぁー」
ハンター風の服を着たシャルロットさんが話し掛けてきました、実は私達はコルトの街の入り口近くにある小屋の中でお着替えを済ませています。
入れ替わりに小屋で待機していた騎士様がシャルロットさんに変装、私に似せたお人形を抱え街をいくつか経由して領地のお屋敷へ戻る事になっています。
初対面だった担当の騎士様は面倒な任務なのにノリノリで、私のお人形を腹話術みたいに操りまるで私が生きて動いてるように見せていました・・・。
もちろんこれは敵を欺く偽装で、これからしばらくの間私達は身分を隠してこの街で暮らすのです!。
「・・・遠くから見ても綺麗だったけど本当に素敵な街だね」
半ズボンにシャツ、長い髪を束ねて男の子の服を着た私がシャルロットさんに話しかけます。
髪は一度短くしてもいいかなと思いこの機会にバッサリ切ろうとしたらお母様に泣いて止められたので仕方ないのです・・・。
「ふふっ、今の私は男の子なのです、シャルロットさん、どうかな?」
「ちゃんと男の子に見えますよー」
「男の子になるんだから自分の呼び方も変えよう、「私」だと女の子っぽいから「僕」がいいかなぁ・・・」
「お嬢さまぁー、本当に楽しそうですねー」
シャルロットさんが私の独り言に割り込みます、彼女は例の凶悪なお化粧をしてないと本当に美人さんです、お胸は控え目だけど・・・。
「うん、僕とっても楽しいよ (ニコッ)」
あれ、シャルロットさんが口元を押さえて蹲っています・・・。
「お嬢様・・・それ破壊力すごいんでやめてください可愛すぎて私昇天してしまいますやばい可愛いもう無理大好き!」
一息でセリフを言い切りました・・・シャルロットさんに近付いて耳元で囁きます。
「シャルロットさん、誰が聞いてるか分からないからお嬢様呼びはダメ、僕の名前はリゼルだよ・・・」
「はぅ!」
ぼたぼたー。
何故かシャルロットさんが鼻血を出してしまいましたぁ!。
街の入り口は特に警備もなく、滞在手続きは役場に行って身分証を見せるだけでいいようです。
私達はゆるい坂道をしばらく歩いた所にある役場に到着しました、石畳の雰囲気も王都とは違うし道のあちこちに貝殻が埋め込まれていて今日みたいなお天気がいい日は光が当たると宝石みたいにキラキラしています!。
「こんにちはー」
役場に入り受付でシャルロットさんがお話をしています、しばらくすると奥から中年のおじさんが現れました。
私が領主の令嬢だとバレるとまずいので領主代行であるシルベスター叔父様が手を回してくれていて、滞在手続きは事情を知っている町長さんがしてくれるそうです。
なんでもシルベスター叔父様が騎士団の部隊にいた時の戦友らしくとても信頼できる人なのだとか?、私の滞在先にこの街が選ばれたのもそれが理由らしいのです。
「リーゼロッテ・シェルダン様、コルトの街にようこそ、私、町長を務めさせて頂いている、カルロ・ミテコイと申します、滞在手続きは私が全て行いますのでご安心を」
「はい、よろしくですー」
ぺこり
シャルロットさんが答えた後、私も町長さんに頭を下げておきます、人払いをしてくれたのか案内されたお部屋の中には私達と町長さんしか居ません。
「お嬢様はこの町では「リゼル・フェルド」という名前で過ごされます、ある商会の跡取りお坊ちゃんという設定でー、私はお世話係のただのシャルロット、家名も必要ならシャルロット・カノンとでもしておいてくださーい」
「かしこまりました、この件を知るのは街で私だけですので安心してお過ごしください」
「・・・あ、ありがとうございます」
「街で何か困った事がありましたら私のところへいらして下さい、滞在されるお家にはこれから私がご案内致します」
「はい・・・お願いします」
「あなたの叔父上には昔大変お世話になったのですよ、賊に農具で襲われた時に命を救われた事もありました、なので遠慮なくお申し付けください」
役場の建物を出てカルロ町長さんの案内で借りているお家に向かいます、石畳の曲がりくねった坂道をしばらく歩くと目の前には青い海が広がっていました、どうやら海のすぐ側に建っているお家のようです。
「到着しました、こちらです」
「わぁ・・・海の見えるお家だぁ!」
叔父様が手配してくれたお家は小さくて少し古いけれど手入れのきちんとされている素敵な建物でした!。
「お嬢様ぁー、お家に荷物置いたらお食事に行きましょうよー」
「では、私がお勧めのお店を紹介いたしましょう」
新しい街、新しいお家でこれからとても楽しい事が起きそうな予感がするのです!。
カルロ町長さんは私達をお店に案内してくれた後、お仕事があると言って帰ってしまいました。
「お嬢様ぁ!・・・じゃなくてリゼル君!、これ美味しいですー!」
2人で食べた料理は絶品でした!。
美味しいものが大好きなシャルロットさんのテンションが爆上がりなのです。
海に面した白い壁のレストラン、ちょっと高級そうな感じでしたがお値段は手頃で王都で食べるよりずっと安いのです!。
町長さんによるとコルトの街は田舎だから観光に来る人は殆ど居ないのでお店のお客は大半が地元の人らしいです。
お魚のムニエルやパエリアのような米料理、それから魚介のスープ・・・どれもすごく美味しいです!。
お店の中はお洒落な木のテーブルやカウンター席、海の見えるテラス席があるのに私達の席は壁際の一番奥・・・私は狙われているので安全の為に仕方ないのですがこの街自慢の綺麗な海が見えないのです!。
でもそのうち領内に潜む刺客ををシルベスター叔父様が全員プチッってやってくれると思うし、博士が作ってくれている防御結界の魔道具が完成したらテラスで海を見ながら食べられるのです!。
・・・
・・・
ぱあっ!
しゅたっ!
「あー、眠い・・・」
「博士ぇー戻ったよー、あれ、居眠りしてるし」
「・・・おう、嬢ちゃんか、男みたいな格好してどうしたんだ?」
「向こうで隠れて暮らしてる時は男の子っていう設定なんだぁ、どう?、似合う?」
くるり・・・
「まぁ、モテそうではあるな・・・で、こっちと向こうを転移で行き来できるようになったのか?」
「うん、でも行った事ないところには転移できないって仕様どうにかならないかなぁ、街に向かってる時に2回も襲われたの」
「そりゃ大変だったな・・・」
「これお土産ね、向こうの街で人気らしいの、小魚を煮詰めて干したやつ、頭からボリボリいけるからお酒のおつまみにでもして」
「転移の仕様は変わらんなぁ、新しく魔法陣を構築し直したらいけるかもしれんが・・・なんだこれ美味いじゃねぇか!」
「気に入った?、また今度買って来てあげるね・・・それから博士ぇー、防御結界の魔道具はまだ出来ないの?」
「もうちょっと待て、殆ど完成してるがまだ微調整が残ってる」
「そっかー、それが出来たら襲われても安心だね、護衛の騎士様は居るけどいつ襲われるか分からないから毎日怖いんだぁ・・・」
「・・・これからの嬢ちゃんの予定はどうなってるんだ」
「2〜3日おきにこの研究室に来るつもり、日本にも時々戻ってサンプルの状態を確認してるしオーニィ商会のお仕事もあるの・・・」
「忙しそうだな・・・俺も自分の研究やってるから頻繁に来なくていいぞ、ここも安全とは言えんからな」
「博士は下手な騎士より強いじゃん・・・それじゃぁ向こうのお家の片付けもあるし、とりあえず今日は帰るね」
読んでいただきありがとうございます!。
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