3-01 - みなとまちにかくれるのです! -
3-01 - みなとまちにかくれるのです! -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です。
私は今、愛車のアイヴォウMarkⅡでシェルダン領北部にある田舎街に向かっています。
アイヴォウというのはオーニィ商会から発売されている馬形四足歩行魔道具で、モデルチェンジを繰り返しながら最近は馬や馬車から置き換わっている人気の乗り物です!。
私が9歳の時に設計して特許を取った魔素による音声伝達技術とオーニィ商会の技術力で共同開発、発売されて若者を中心に大人気となっている「魔導ラディーオ」の売り上げが予想以上に好調で、発売5周年を記念して商会長のジェイムスおじさんが最新型アイヴォウをくれたのです!。
ちなみにジェイムスおじさんはオーニィ商会の商会長だけど設計や開発もできる優秀な魔道具師で、魔導ラディーオの共同開発の時に意気投合してとても仲良くなりました。
その最新型・・・第5世代アイヴォウを私がかっこよく魔改造したのがアイヴォウMarkⅡです!。
魔導回路の徹底見直しによる効率化で大幅な出力向上と装備の無駄を排除した軽量化、足を切り詰めて体高を低くした私だけのシャコタン仕様!。
欲しかった自分用のアイヴォウを入手できたのが嬉しくて、お屋敷にある研究室に持ち込み時間をかけて調整した自信作なのです。
・・・でも私のMarkⅡに試乗したジェイムスおじさんはこの魔改造仕様に手を加えて是非市販化したい!と目をキラキラさせて私に迫ってきました。
ひゅぃぃぃん・・・
どぅるるるる・・・・
・・・
「ジェイムスおじさん、オリジナルから大胆に設定を変えてしまったのですが乗り心地はどうです?」
フルフル・・・
「リゼちゃん!、これは素晴らしいっ!、出力が増えているし加速も滑らかで自然だ、動力部の魔法陣はどうなっているのか・・・すぐに工房で分解したいっ!」
がしっ!
「こっ・・・これをしばらく貸してもらえないだろうかぁっ!」
「え、でも私これから慣らし運転を・・・」
キラキラ・・・
「あ、はい、分かったのです・・・」
あの時の商会長は目がガンギマリで怖かったから断れなかったのです、アイヴォウMarkⅡは荷台に積み込まれ私と一緒に商会の研究工房に連れて行かれました・・・。
そして第5世代の発表から僅か半年という異例の短期間で後に最高傑作と絶賛される事になる第6世代アイヴォウがオーニィ商会から華々しく発表されたのです!。
「リゼちゃん、これにサインして」
第6世代アイヴォウ発表会の後、呼び出された商会の会議室でジェイムスおじさんから契約書を渡されました。
「おじさん、これは何なのです?」
「リゼちゃんが改造したアイヴォウMarkⅡの魔導回路で特許を取ったからその特許料と独占使用料だよ」
「え・・・別にいらないのです」
「動力制御や姿勢制御の魔法陣を含む画期的な技術が全部で8項目あって結構な金額になってる、お金は別にあっても問題ないだろう?」
「本当にいらない・・・」
ゴゴゴゴ・・・
「あ、はい、ここにサインすればいいのです?」
こくこく!
かきかき・・・
「年間契約料、大金貨10枚って・・・本当に私が貰っていいのです?」
日本円換算で・・・4億くらいかなぁ・・・。
「もちろんだよ、オーニィ商会もこの特許で儲けさせてもらうからね」
「あの時は大変だったのです・・・私の口座に大金が振り込まれてお父様が飛んで来たのです」
それはさておき、私はアイヴォウMarkⅡに跨り風を切って天気のいい田舎道を走っています。
海が近いのか風に乗って潮の香り、サイドの荷物入れにはポータブルの魔導ラディーオ、そこからは最近開局した放送局から流れる爽やかな音楽、曲間でDJさんの軽快なおしゃべりを聞きながら・・・。
(♪〜♪♪〜)
(今日の俺様のお勧め曲はどうだった?、まだまだ続くから魔導ラディーオは切るんじゃねぇぞ!)
今ラディーオで喋っている人は放送局で働いているDJゲラッパことゲラッパ・オーニィさん、オーニィ商会所属でジェイムスおじさん・・・商会長の息子さんです。
(♪〜♪♪〜)
そうなのです!、これが私の目指した音楽のある優雅な生活、魔導ラディーオを開発した理由なのです!。
まだ音楽は放送局のスタジオで吟遊楽団さん達に頼んで演奏してもらってる生放送ですが将来は魔素を使った記録媒体で録音出来ないか試行錯誤中なのです!。
ちなみにこの時間の番組スポンサーは私個人!、お昼ちょうどに流してもらってます、「お昼休みはうきうきリスニング!」なのです!。
「お嬢様ぁー、この辺で休憩しましょうよー」
後ろから馬に乗った私の専属護衛、シャルロットさんが声をかけてきました。
そうでした、私のアイヴォウMarkⅡは魔力が動力源なので疲れ知らずなのですが生きているお馬さんは定期的に休まないといけないのです。
「・・・うん」
私は答えます、シャルロットさんは女性騎士さんで騎士の名門のブルナカノン家のお嬢様です。
男性を怖がる私のためにお父様が雇ってくれました、でもこの人見た目が男性より怖いのです!、普通にしてたらすっごい美人さんなのに周囲を威嚇する為だと言って髪を逆立て怖そうなメイクをしています。
最初は怖くて挙動不審に・・・でもお話ししているうちに少しずつ仲良くなりました、なんでも可愛いものが大好きなのだとか。
「ふー、疲れたぁー、ところでお嬢様ぁー、もうすぐドック先生の作ってる常時発動する防御結界の魔道具が完成するんですよねー、そしたら私はお役御免になっちゃうんでしょうか?」
「いえ・・・一人でどこかに行くの私まだ怖くて無理なので、魔導具が出来てもお世話になると思います」
「そうっすかー、よかったぁー、実はここお給料すっごい良いんで!、それにお嬢様が遊びに行く所ってどこも食事が美味しいんっすよ!、できれば末長くよろしくお願いしますねー」
「・・・はい、よろしくです」
「お嬢様ってばほんとに人見知りですよねー、ご家族の前だと普通なのに・・・まぁ挙動不審なお嬢様も可愛いんですけどねー」
どうやら私は挙動不審になっていたようです!。
「声が大きかったり乱暴な男の人が怖いの・・・シャルロットさんは優しいから好きだよ」
「かー、嬉しいこと言ってくれちゃってー、もうずっとお嬢様についていきますんでよろしくー」
街道の横に作られた休憩所でお茶を飲みながらシャルロットさんと話していると、今まで通ってきた道を馬車が走ってこちらに向かってきます、休んでいる私達の前に停まると馬車の扉が開いて・・・。
「ヒャッハー!」
「オラオラァー!」
しゅたたっ!
「ひぃ!」
また私を狙った刺客なのです!、見るからに野盗という風貌の男達が襲いかかってきました!。
「やかましい!」
シャルロットさんが大剣の一太刀で3人の刺客を葬ります、って言っても峰打ち・・・あれはアバラの骨が全部逝ったかもしれませんね。
何故私が刺客に狙われているのかというと・・・。
呪いの刃の論文が私に無断で発表された頃から散々な目に遭っていました・・・でも転移魔法陣が完成して開発者の名前が発表されてからは更に酷くなったのです!、毎日がとても怖いのです!。
呪の刃事件でリィンちゃんを守ったのが知れ渡ってからはそれを逆恨みした帝国の刺客に襲われ始めます。
それに加えて転移魔法陣の技術を盗む為に私を拉致しようとしたり、いらないって辞退したのに無理やり押し付けられた褒賞や名声のせいで貴族達が自分の派閥に取り込もうとしたり・・・。
最近は毎日のように狙われ始めたのです!。
今日も刺客から身を隠す為に領地の田舎にある小さな街にお家を確保してそこに向かっているところだったのです。
王都から領地のお屋敷までは私の空間転移魔法陣を使ってシャルロットさんと一緒に来ました、でも避難場所のお家がある街には行った事がなかったのでこうしてアイヴォウMarkⅡに乗って移動していたのです。
どうやら王都や領地のお屋敷にも内通者が居るようで・・・どこから私の行動情報が漏れたのか分からないのでしばらく身を隠す事になりました。
「リゼたん大丈夫?、こいつらちょっと叔父さんのところでごうも・・・いや、お仕置きして来るから気にせず旅を続けてね」
どこから現れたのか、シルベスター叔父様が気絶した刺客の身体を馬車に放り込みながら言いました。
「どこから湧いてくるんだろうね、鬱陶しいなぁ・・・手足の1本か2本くらい貰わないと怒りが収まらないよ」
ナイフを舌で舐めながら物騒な言葉をシルベスター叔父様が呟いていますが聞かなかった事にしましょう!。
・・・
・・・
叔父様と別れ、更に街道を進むと先程から漂う潮の香りが強くなり上り坂だった道の先が開けて目の前に見えるのはゆったりとした下り坂、どうやら山を超えたようです。
その先には青い海と空、灰色の壁と赤茶色の可愛い屋根のお家がいくつも海に向かって続いています。
なだらかな斜面を背にして2つの港がある小さな港町の全景が視界に入りました。
「わぁ、可愛くて綺麗な街!」
初めて見る絶景に見惚れているとシャルロットさんが話しかけてきました。
「シェルダン領北端の港街コルト・・・私も初めて来ました、ここはお魚が美味しいらしいですよー、お嬢様食べ過ぎて太らないようにしなきゃですね!」
「それ、シャルロットさんが食べたいだけですよね・・・」
今日から私はこの町でしばらく身を隠すのです!。
読んでいただきありがとうございます!。
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